その後、
僕たちが元の世界へ戻る日が決まり、
残った日々を忙しく過ごしていた。

そんなある日の夕食後、
僕たちはティアナさんに
呼び出されたのだった。

何か話があるみたい。
 
 

ティアナ

みんなに話が
あるんだけど。

カレン

どうしたんですか?
あらたまって?

ティアナ

私、決めたことがあるの。

ルシード

なんだよ、らしくないな。
ハッキリ言えよ。

 
 
 
 
 

 
 
 
 
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ティアナ

私、元の世界には戻らず
この世界に残ろうと
思ってるの。

 
 
 
 
 

トーヤ

えぇっ!?

 
 
その場にいた全員が驚愕の声を上げた。

まさかそんな事態になろうとは
誰も想定していなかっただろうから
それも当然だけど。

だって僕たちと一緒に
元の世界に戻らないということは、
もしかしたら永遠にこの世界で
暮らすことになるかもしれないわけで。

そんな僕たちの反応を見て
ティアナさん本人だけが苦笑している。
 
 

ティアナ

私ね、
フィッチたちのところで
ドラゴンマスターの力を
磨きたいの。

エルム

ということは、
ハイマスターを
目指すんですね?

ティアナ

えぇ。私がトーヤに
教えられる調薬技術は
教えたし、
心残りはないかな。

トーヤ

それで石化回復薬の
製法を僕に……。

ティアナ

そういうこと。
それ以外の薬は
もう習得しているでしょ。

 
 
そういうことだったのか……。

思い返してみれば、
そういう意思を感じる言動が
各所でいくつかあったかもしれない。
 
 

ルシード

つまりもう前から
決めていたこと
なんだな?

ティアナ

まぁね。

ソニア

いいんじゃない。
二度と会えなくなる
わけじゃないんだし。

ソニア

世界の変数としても
ティアナひとりなら
影響は軽微だし。

トーヤ

そうなんですか?

 
 
変数が大きいと
各世界のバランスが崩れる原因になる。

でも地の欠片のような
大きな力でなければ大丈夫みたいだね。



ま、何かの偶然で人間や魔族などが
世界間を行き来してしまう例も
あるみたいだし、
つまりは自然に起こりうる現象だから
問題ないことなのかもなぁ。
 
 

ソニア

ただ、世界間の移動は
今後は容易に
出来なくなる。

トーヤ

どういうことですか?

ソニア

今までは地の欠片が
この世界にあって、
歪みを生じていたから
移動しやすかったの。

エルム

不安定だからこそ
移動も難しくなかった
というわけですね。

ソニア

そういうこと。
でも今後、
それがなくなる
わけだからね。

 
 
そっか、安定しているということは
ほかの世界との接触が減って、
往来がしにくくなるわけか。

世界全体のことを考えたら
それが好ましいことなんだろうけど。
 
 

カレン

そういえば
地の欠片は
どうしたんです?

ソニア

ここにあるわよ。
そうそう、その扱いを
トーヤに決めてもらおうと
思ってたのを忘れてた。

トーヤ

地の欠片の扱い?

ソニア

この欠片には
強大な力がある。
それはトーヤも
目の当たりにしたわよね?

トーヤ

えぇ、まぁ。

 
 
そのせいで僕は痛い目に遭って、
危うく死ぬところだったからね。

でもフィッチさんとの契約で
骨を折るということを
事前にしていたから
あの痛みに耐えられたのかも。



完全に結果論だけど……。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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