僕はテムートの攻撃を食らい、
瀕死の状態になってしまっていた。
もはや声を上げることすら出来ない。


耳にはこちらへ近付いてくる
テムートの足音だけが響いている。

そしてその足音は僕のすぐそばで止まり
気配だけが感じられている。
 
 

テムート

これは……
全身の骨が折れたな……。

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 

トーヤ

ごはっ!

 
 
再び全身に激痛が走り、
口の中に血の味が広がった。
呼吸も苦しい。



おそらく吐血したんだろうな。
このままだと肺が血で満たされて
窒息死する可能性がある。

だけどテムートはそんな瀕死の僕に
追い打ちをかけてくる。
 
 

トーヤ

あぐっ……。
あぁああああぁーっ!

 
 
テムートは僕の頭を踏みつけてくる。
ミシミシと音がして
頭蓋骨が悲鳴を上げているようだ。

このまま脳が圧迫を受け続ければ
脳に障害が起きて
治療によって一命を取り留めたとしても
二度とマトモに
動けなくなるかもしれない。






くそ……
こういう時はあまり医学の知識が
ない方が幸せかも……。
 
 

テムート

いい声だ。
もっと泣き叫べ。

 
 
 
 
 

トーヤ

あがっ……が……
がふっ……ぁ……。

 
 
…………。

……………………。

………………………………。
 
 
 
 
 

テムート

おっとやり過ぎたか。
急激に生命力が
低下しおったわ。

トーヤ

……っ……。

テムート

放っておいても
死ぬだろう。
トドメは刺してやらん。
苦しみながら死ね。

テムート

そのあとで首をはねて
晒してやろう。
ククク、あーっはっは!

 
 
…………。

……………………。

………………………………。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

……悪趣味ね。

テムート

っ!?

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 

テムート

ぐぁあああぁっ!

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
…………。




……な……んだろう……。



全身が温かくなっていく。
……心地良い。



痛みが昇華するように
どんどん消えていく。
体力が回復していくのがハッキリ分かる。
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
気が付くと僕は意識を取り戻し、
自力で体を起き上がらせられるくらいに
回復していた。


何が起きたのだろうと見回してみると、
僕の傍らには
ティアナさんとソニアさんの姿があって、
遠くでは腕を切り落とされたテムートが
激しく出血しながら
床を転がってのたうち回っていた。




もしかして僕を治療してくれたのは
ティアナさんかな?
さすが薬草師の大先輩。
すごくよく効く回復薬だ。

そしてソニアさんの手には
切り落としたテムートの腕があって、
彼女はそこから地の欠片を奪い取る。
 
 

ソニア

はい、地の欠片の
回収完了。

ソニア

石化攻撃のおかげで
大きなダメージを負ったのが
トーヤだけで良かったわ。
ほかのみんなは
石化状態を解除すれば
いいだけだからね。

 
 
 

 
 
 
 
 
ソニアさんは切り落とした
テムートの腕を床に投げ捨てると、
そこへ向かって炎の魔法を放って
焼失させた。


一方、
テムートは怒りと憎悪に満ちた瞳で
ソニアさんを睨み付けながら
ゆっくりと立ちあがる。
 
 

テムート

ま、まだ仲間が
いたのか……。

 
 
でもソニアさんは
そんなテムートを一切無視して
ニコニコしながら僕のところへ
歩み寄ってくる。

相変わらずマイペースだなぁ……。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

第328幕 薄れゆく意識の中で……

facebook twitter
pagetop