なんとテムートに近付いただけで
カレンとルシードは石になってしまった。
こんな奥の手があったなんて。


形勢は一気に逆転。
今度は僕たちが不利になってしまった。
早くなんとかしないと。

このままふたりが攻撃を受けたら
修復できずに命が失われてしまう。



石化の回復薬は持っているけど、
前衛のふたりが無力化されたこの状態で
すんなり使わせてもらえるかどうか……。
 
 

テムート

ははははは。
石化してしまっては
何も出来まい。
これこそ
地の欠片の能力。

トーヤ

どうしよう、
あの状態で攻撃を受けたら
即死だよ……。

テムート

安心しろ。
地の欠片の石化能力は
強すぎてな、
石化した者は
どんな物理攻撃や魔法も
受け付けぬのだ。

テムート

破壊したくとも
どうにもならん。

 
 
それを聞いて少しは安心した。

ずっとこのままというのはマズいけど、
攻撃されて一発死という事態は
避けられそうだから。



不利な状態には変わりないけど、
なんとか回復薬で石化状態を解ければ
逆転の目はある。

でもそんな僕の希望を
打ち砕くかのように
テムートは言葉を続ける。
 
 

テムート

付け加えておくが、
石化回復の薬や魔法も
効かぬ。彼らは
静かに死を待つのみだ。

テムート

力を行使した私が
地の欠片の能力を
解除しない限り
元には戻らんのだよ。

トーヤ

くそ……。

 
 
なんて厄介な力なのだろう。

そんな状態じゃ、
テムートを不意打ちして
一気に無力化するという方法も
とれないじゃないか。
つまり正攻法で倒すしかない。

だからといってテムートに接近すれば
石化させられてしまう。



僕には状態異常無効化の能力があるから
大丈夫だとは思うけど、
世界の理に通じる力を持った地の欠片に
対応できているのかは分からないし、
エルムは確実に石化される。

そうなると戦う方法は――
 
 

トーヤ

エルム、遠隔攻撃だ!
近付けないように
攻撃を続けよう!

エルム

はいっ!

テムート

無駄だな……。

 
 
冷たく言い放ったテムート。
そして掲げた地の欠片をこちらへ向ける。

すると再び地の欠片は眩く光って
辺りを照らした。
 
 
 
 
 

トーヤ

うわっ、眩しい……。

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 

僕は目を瞑り、腕で顔を覆った。

程なく光が収まり、
ゆっくりと目を開けると
隣にいたエルムは
なんと石になってしまっていたのだった。
 
 

トーヤ

エルム!

エルム

…………。

 
 
エルムはうんともすんとも言わない。
まさか離れていても
力を行使することが出来たなんて。


ただ、やはり僕は石化していない。
状態異常無効化の能力は
地の欠片の力に対しても有効みたいだ。



……この状態が
幸か不幸かは分からないけど。
 
 

テムート

お前は石化防止の
アイテムを
持っていたようだな。

トーヤ

まぁね……。

 
 
僕の特殊能力について
話すわけにはいかないので
適当に誤魔化しておくことにした。

そしてテムートが
それに納得したということは、
事前に一般的な石化防止のアイテムを
装備していれば
石化しないということでもある。


……今さらそれを知っても
どうにもならないかもだけど。
 
 

テムート

だが、それは
運がいいのか悪いのか。
私が直々に
いたぶり殺してやろう。

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
テムートは大ダメージを負っているとは
思えないほどの機敏な動きで
僕に襲いかかってきた。

一気に距離を詰められ、
気が付けば目の前に
テムートが迫っている。
 
 

トーヤ

っ!?

トーヤ

がふっ!

 
 
次の瞬間、僕の意識が一瞬だけど飛んだ。

全身に激痛が走り、
気が付けば僕の体は壁まで吹き飛ばされ
叩きつけられていたのだった。


あまりのダメージに
僕は床にうつ伏せになって
倒れ込んだまま。
うめき声を上げることすら出来ない。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

第327幕 史上最大のピンチ

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