降参という言葉を聞き、美咲は持っていた光の羽を下した。

そのまま2歩分ほど後ずさる。

ああいう技もできるのね。

後ずさった美咲の方を向いて、そう言った。

不意打ちは嫌だけど、ここで終わるわけにはいかなっかたから。

そう。
そういえば、戦う前に何か言いかけてたわね。

雪は、美咲自身が不本意な技を使ったことを、その言い回しから理解した。

大宮君のことです。
恋愛的な感情はないから、安心してください。

そう……、なの?

大切な仲間だとは思ってます。
一緒にシャドーとも戦ってきたから。

胸に手をあて、当時を思い出すように目をつむる。

じゃあ、私の早とちりだったのね。

分かってもらえて良かったです。

誤解が解けたものの、ここはシャドーが潜む森。

ゆっくりと話していられる状況ではなかった。

シャドーに囲まれてます!

木の陰から近づいてきた倉間は、二人にそう言った。

光力を使いすぎた美咲と雪には、すぐに感知できていなかった。

氷扇!

出ない。
力を使い過ぎたみたいね。

私もダメみたい。

私がなんとかします。
目を瞑ってください。

泡閃(ほうせん)。

さすがね。

放たれた光のシャボン玉が一斉に割れると、閃光が走り、取り囲んでいたシャドーたちは全て消滅した。

はぁ、疲れましたね。
今ので、10体以上は倒してますし、森を出ます。

え?
私とはもう戦わなくていいの?

吹石さんとの戦いも見て、あなたが中途半端に光術士になったのではないと分かりました。
だから、もう十分です。

そう言い残し、倉間は去って行った。

やっぱり、あなたを狙うように命令が出ていたのね。

そんな。

でも、もう大丈夫じゃないかしら。
あなたは私を倒してるし、時間がくればこの試練もクリアとなるはずよ。

吹石さん……。

まさか、雪からこんな言葉をかけられるとは思ってもいなかったので、少々驚いた。

雪でいいわ。

じゃあ、雪先輩って呼ばせてください。

お好きになさい。

二人は微笑みあうと、一緒に森の入り口を目指し歩き始めた。

雪と美咲の戦いからしばらくして。

やっぱり、お前は強いな。

くっ……。

俺程ではないが。

お前、なぜあんなことができる?

そりゃ、修行したからなぁ。

影術を。

第3章--認証試練編--(89話)-第三試練⑩-

facebook twitter
pagetop