皇帝の間の奥には
地下へと続く階段があって
僕たちはそこを下っていった。

自然の岩をくりぬいて
作られたその階段は
まるで地の底まで続いているかのような
雰囲気がある。



やがてその階段が終わると、
その先にある洞窟のような通路を進み、
僕たちはホールのような
広い場所へと到達した。

地面には巨大な魔方陣が描かれ、
正面には祭壇のようなものがある。



その祭壇の前では
敵の親玉らしき存在が
不敵な笑みを浮かべて
僕たちの到着を
待ち受けていたかのようだった。

逃げる素振りを全く見せていないとは、
かえって不気味だな……。
 
 

カレン

っ!? 
まさかあなたは……。

テムート

お嬢、
ご無沙汰しております。
それにこれは……
クックック、
面白い顔ぶれですな。

トーヤ

…………。

ルシード

…………。

エルム

…………。

 
 
どうやら相手はカレンの顔見知りらしい。

グランの息がかかったヤツが
各世界へ派遣されているわけだから、
中にはそういう相手がいるのも
当然といえば当然かもだけど。
 
 

カレン

そういえば
お父様の最側近だった
あなたを
見ていなかったわね。

カレン

まさかこんな場所に
いたとはね。

テムート

フフフ、魔界の支配は
あくまでも計画の一片。
全世界の混沌こそ
旦那様の本懐ですからな。

トーヤ

カレン、あの人は?

カレン

テムート。
お父様に幼少の頃から
仕えている懐刀よ。

 
 
つまり単にグランの
直属の部下というだけではなくて
グランと幼馴染みみたいな
関係でもあるワケか。


それなら忠誠心が高くて、
魔族であっても僕らの側へ
裏切ることは少ないだろうな。

グランとしては安心して各世界へ
送り込める存在ということだね。
 
 

テムート

お嬢たちがここへ
やってきたということは
副都側の敗北という
ことなのでしょうな。

トーヤ

グランは死にました。

テムート

そうか、旦那様は
散ったか。
不老不死を手に入れたはず
だったのにな。

テムート

やはり何らかの
対抗手段があったのだな。
一筋縄にはいかんものだな。

トーヤ

…………。

 
 
テムートはやや寂しげな顔を
しているように感じた。

仕えている主人とその部下という
関係ではあるけど、
幼馴染でもあるわけだもんね。


そしてグランの野望を打ち砕いた
対抗手段というか、
切り札になったのが
目の前にいる僕だなんて
想像もしていないだろうな。
 
 

カレン

お父様がいなくなっても
計画をやめる気は
ないのでしょう?

テムート

副都の敗北は
計画の実行に関係
ありませんからな。

テムート

従わせたくば
力で私を
ねじ伏せることです。

カレン

私の頼みでも?

テムート

私は旦那様の部下であり
お嬢の部下ではない。

テムート

もちろん、私とて
多少の情はあります。
お嬢が赤子の頃から
見守ってきた身としては
戦いたくはありません。

テムート

ですが、旦那様の計画を
遂行することこそ
何よりも優先します。
立ち塞がるというのなら
戦うしかありません。

カレン

相変わらず頑固者ね。

 
 
カレンが薄笑いを浮かべると
テムートは口元を緩めて頷いた。

お互いに胸のうちを理解しているような
そんな感じ。
だからこそふたりとも本音では
戦いたくないのかもしれないな……。
 
 

テムート

私に勝てば
どんな命令でも
聴きましょう。
力こそ全て。それが
魔族というものです。

テムート

もっとも、この場において
私に勝てる者は
おらんでしょうが。

カレン

すごい自信ね。
その鼻を今すぐ
へし折ってあげるわ。

テムート

その言葉、
そっくりそのまま
お返ししましょう。

 
 
どうやらふたりとも
完全に吹っ切れたみたいだった。

お互いに戦う意思を鮮明に露わにして
魔力を高めていく。
どうあっても戦って
計画を阻止するしかないみたいだ。

カレンが交渉してうまくいかないなら、
僕たちに彼を説得できるとは
思えないからね。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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