フィッチさんとティアナさんのおかげで
僕たちは無傷のまま
なんとか帝都の城まで辿り着いた。

ただ、乗り物酔いで
そのふたり以外はグッタリしているけど。


うっぷ……吐きそう……。
 
 

トーヤ

体がスッキリする薬を
すぐに出すね……。

ルシード

頼む……。うぷっ!

ティアナ

あぁ、キシリミン?

トーヤ

はい、そうです。

ティアナ

準備が良いのね。

 
 
この薬、
幻覚系の毒の治癒にも効果があるから
少しだけど常備してるんだよね。


僕自身は状態異常無効化の
特殊能力があるから、
普段はその薬を使わないんだけど。
だからみんなのための薬。

でもまさかこんな形で
僕も服用することになるなんて。
状態異常無効化もこういう場合は
無意味なんだね……。



その後、僕たちは薬の効果で
体調が少し回復した。

もっと時間が経てば全快すると思う。
 
 

ソニア

じゃ、私たちは行くわね。

族長フィッチ

私たちは兵士を
蹴散らしながら
町の出入口を
目指すつもりだ。

ルシード

生きて戻れよ。
作戦の成功を
祈っている。

カレン

おふたりもご無事で。

トーヤ

ティアナさん、
この世界を平和にして
元の世界へ
戻りましょうね。

ティアナ

…………。

ティアナ

取らぬ狸の皮算用は
やめなさい。
まずは目の前にある
自分の役割を
果たしていきましょう。

トーヤ

ですね。

 
 
こうしてティアナさんたち城の前で別れ、
僕たちは皇帝のいるフロアを
目指すことにした。


城の見取り図は盗賊ギルドが
諜報活動で得た情報を元に作ってくれて、
それをミドルさんから受け取っている。

しかも隠し通路や警備の薄い経路まで
記してくれているから
これを頼りに進めば迷わないし
兵士との戦いも最低限で済むはず。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
多くの兵士や戦力は
出入口で暴れているドラゴンたちの方に
向けられているのか、
城内は意外に手薄だった。


しかも城に入った直後に遭遇して倒した
兵士たちの服や鎧などを奪って
それに着替えているから、
この混乱した状況下では
かなり目立ちにくいと思う。

その証拠にもうすぐ皇帝の間なのに
戦闘は数えるほどしか起きていない。



いいぞ、風は僕たちの方に
吹いてきているかもしれない。
 
 

ルシード

エルムは
さすがに不格好だな。

エルム

仕方ないですよ。
体型はどうにも
なりませんから。

ソニア

あと何年かすれば
ルシードみたいな
ガッチリの体になるわよ。
顔立ちも良いから
女子にモテモテよ。

エルム

はぁ、そうですか。

ソニア

でも私は今の体型の
エルムの方が
好きだけどね。

ルシード

ショタコン……。

ソニア

ショタで
何が悪いのよっ?

カレン

ふたりとも
静かにしてください。

兵士

お前たち、
ここに何の用だ?
何者だ?

 
 
ルシードとソニアさんが
ふざけているから
兵士に怪しまれて声をかけられちゃった。

仕方ないので
僕はいつでも戦闘に入れるように
密かに身構える。
 
 

兵士

お前たちのその格好、
雑兵だろう。
持ち場が違うぞ。
なぜここにいる?

ソニア

私たちはここへ
派遣されまして。

兵士

そんな話は
聞いていないぞ?

ソニア

言ってないもん。

兵士

なんだその言い草は?
む、怪しいな……。

 
 
胸のあたりに槍の切っ先を
突きつけられてしまうソニアさん。
でもそれに全く動じていないのが
彼女らしいけど。

強者の余裕なんだろうなぁ。
 
 

兵士B

なんだ、どうした?

兵士C

騒がしいぞ?

 
 
あーあ、
兵士が集まって来ちゃったよ……。
まだまだ増え続けている感じ。

通路はもちろん
すっかり囲まれて逃げ道はない。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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