ドラゴンたちがゴーレムや兵士たちを
釘付けにしてくれている間に、
僕たちはその隙間をすり抜けて
帝都へ突撃した。


帝都って言うぐらいだから
例え天然の地形を利用しているとしても
もっと人工的な建築物が主体の町を
イメージしていたんだけど、
どちらかというとこれは要塞だね。

政治の中心には違いないのかもだけど
軍事拠点とか基地とかそういう感じ。



今はフィッチさんの飛行速度が速いから
的が絞れなくて遠隔攻撃は
当たり難いだろうけど
手慣れた射手ならそれも計算に入れて
当ててくるかもしれない。
 
 

トーヤ

フィッチさん、
もう少し不規則に
飛べませんか?

族長フィッチ

っ?

トーヤ

左右とか上下とか
緩急とか、
それらを組み合わせて
みてください。

族長フィッチ

矢や砲弾、魔法などの
遠隔攻撃が
気になるのだな?

トーヤ

やはりそれは理解して
意識はしていたんですね。

族長フィッチ

無論だ。
だが、お前たちが落下する
リスクが高まるぞ?

族長フィッチ

現時点での飛行が
スピードと攻撃回避の
バランスがとれた
ベストな飛び方なのだ。

トーヤ

もし僕が敵の射手なら
その動きを把握した上で
いずれ
当ててくるはずです。

族長フィッチ

…………。

ティアナ

トーヤは遠隔攻撃の
エキスパートよ。
そして敵にも少なからず
そういうヤツが
いるでしょう。

ティアナ

一考の余地は
あると思うけど?

族長フィッチ

ふむ……。

ルシード

迎撃するにしても
足場が不安定なこの環境に
慣れていない俺たちじゃ
限界があるもんな。

ルシード

決断は早い方が
良いと思うぜ?
俺はトーヤの意見に
賛成だ。

族長フィッチ

分かった。
ほかの者も
覚悟は良いのだな?

カレン

はいっ!

ソニア

モチのロンよ。

エルム

やりましょう。

族長フィッチ

ティアナよ、
竜気を私の翼に。

ティアナ

はいっ。

ティアナ

…………。

 
 
ティアナさんは竜気を高め、
それをフィッチさんの翼へ送り始めた。

竜気は黄金色の光へと変化し、
微細な粒子の塊となって
フィッチさんの翼へと吸収されていく。
 
 

トーヤ

まるで黄金の翼……。

 
 
翼がはためくたびに
切り裂いた空気に乗って
光の粒子が後方へと流れていく。

なんて幻想的な光景なんだろう。
 
  
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

トーヤ

っ!? っと!

 
 
急にスピードが上がった。
同時に前後左右上下の動きも
複雑になって、
振り落とされないように
気をつけないといけない。

それに呼吸をするのにもコツがいる。
酸欠で気を失わないようにも
注意しないと。



空間はどっちが上でどっちが下かとか
もうワケが分からない状態。
さらに重力と慣性で気持ち悪くなって
嘔吐の可能性も。
 
 

トーヤ

思った以上に
悪条件が重なって
ツライ……。

トーヤ

でも言い出しっぺの
僕が根をあげるわけには
いかないよな……。

 
 
みんなは大丈夫かなと思って
視線を向けてみる。
するとティアナさん以外のみんなも
青い顔をしていて苦しそう。



でもこれだけ奥まで来れば
あと少しで帝都の城に着くはず。

それまでの辛抱だ……。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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