ティアナさんは帝都侵入後、
僕たちとではなくフィッチさんや
ほかのドラゴンたちと行動を
共にしたいと申し出た。

その真意を確かめるべく
僕たちは固唾を呑んで様子を見守る。
 
 

ティアナ

それにフィッチは言った。
心を通わせ共に道を
切り開いていく時、
無限の力が
引き出されると。

族長フィッチ

…………。

ティアナ

それなら心を
通わせられれば、
竜気を使わなくても
雀の涙くらいは
戦力をアップさせられる。
決して無意味じゃないわ。

ティアナ

フィッチ、
共に歩ませてください。

ティアナ

ドラコンマスターとしての
私のレベルアップに
繋がること全てを
どうか教えてください。

族長フィッチ

…………。

トーヤ

ティアナさん……。

 
 
ティアナさんはフィッチさんに
深々と頭を下げた。
ドラゴンマスターである彼女が
ドラゴンに対して。



ドラゴンマスターが主で
ドラゴンは従。


そういう考えだった
今までのティアナさんなら、
絶対にやらないはずのことだ。

だって彼女のプライドが
それを許さないはずだから。
 
 

族長フィッチ

一皮むけたようだな。
その心があれば
今よりも高みへと
辿り着けるやもしれん。

族長フィッチ

よかろう。
その意思に応えよう。
ただし、私の修行は
厳しいぞ?

ティアナ

臨むところです。

族長フィッチ

では、トーヤよ。
ティアナは私と
行動を共にする。
それで良いか?

トーヤ

分かりました。
みんなもいいよね?

ルシード

愚問だな。

カレン

ティアナさんの分まで
私がサポートするわ。

ソニア

いーんじゃない?

エルム

問題ないです。

ミドル

俺は部外者だから
良いも悪いもねぇさ。

ティアナ

みんなありがとう。

 
 
こうして作戦が決まり、
決行の日までの3日間は自由行動となった。



ティアナさんはフィッチさんと修行、
ミドルさんは一度ギルドに戻って
メンバーと作戦に関する調整を
するらしい。

ルシードは武具の手入れ、
エルムはドラゴンたちと作戦の最終確認、
カレンと僕は回復薬の調薬をしている。

そしてソニアさんはハンモックで
昼寝ばかりしている。
眠ることが好きなのかな?
平和的でいいけどね。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
そして作戦決行当日、
僕たちは準備を整えて
出撃の時を待っていた。

先陣を切るのはドラゴン軍団。
そこに混じってフィッチさんと
その背中に乗る僕たちが
帝都の奥地を目指す。
 
 

族長フィッチ

では、参ろう。
トーヤとその仲間たちよ、
私の背に乗るがよい。

トーヤ

行こう!

 
 
僕たちはフィッチさんの背中に乗った。

彼のウロコはなんだか不思議な感触。
硬いような柔らかいような。

でもこのウロコが炎や吹雪を弾き、
それでいて軽くて丈夫なんだよね。
本当にドラゴンは面白い体質をしている。



それにこんなことを言ったら
怒られるかもだけど、
薬の材料にもなるしね。
 
 

族長フィッチ

しっかり捉まっておれよ。

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
フィッチさんがそう言うと、
大きな翼をはためかせ、
大空へと舞い上がった。



あはは、フワフワとしていて面白い。



それにあっという間に地面が
眼下に遠ざかって
空の中へ溶け込んだような気分になる。
空気も涼しくて気持ちいい。
 
 

トーヤ

うわわっ!?

 
 
不意にフィッチさんは前へと進み出した。
そのスピードは
初めて体験するほど速くて、
まるで嵐のような風が吹き付けてくる。

確かにこれはしっかり捉まってないと
振り落とされてしまいそうだ。



そして僕たちのすぐ後ろから
ほかのドラゴンたちも付いてきて
飛びながら周りを囲む。

空を飛ぶドラゴンの群れ。
その中に僕たちがいる。
この景色は圧巻だなぁ。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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