翌日の朝、
目が覚めた僕は準備を終えて
フィッチさんたちのところへ向かった。

すでにほかのみんなも集まっている。


いよいよ本格的に帝都攻略が始まるんだ。
 
 

族長フィッチ

では、作戦について
説明していこう。

族長フィッチ

町を守備するゴーレムは
私たち地竜が受け持とう。
その隙にトーヤたちが
帝都の奥へ侵入する。

トーヤ

分かりました。

族長フィッチ

ただし、
長期戦になればなるほど
私たちが不利だ。

ルシード

いくらドラゴンでも
体力には限界が
あるだろうからな。

カレン

ゴーレムを倒すには
エネルギーを供給している
敵の親玉を倒さないと
いけないのよね?

 
 
カレンが言っている『倒す』というのは
ゴーレム軍団を無力化するという意味だ。

それぞれのゴーレムは
体に記された紋章が弱点で、
それを物理攻撃や魔法攻撃などで消せば
元の素体に戻すことが出来る。




――って、ゴーレムに詳しい
ユリアさんが以前に言ってた。

ただ、ここのゴーレムは町の地下から
魔法力が供給され続けていて
いくらでも複製が可能らしい。

そしてソニアさんの話だと、
世界のバランスを崩している
『地の欠片』がそのエネルギーの供給源。

つまりそれを持っている
敵の親玉を倒さない限り、
ゴーレム軍団を根絶することは
出来ないということだ。
 
 

族長フィッチ

ゆえに私はトーヤたちと
行動を共にする。

トーヤ

えっ?

族長フィッチ

私の背中に乗せ、
城まで一気に運ぶ。
その後、私は単独で
ゴーレムと戦う同志たちと
交流する。

トーヤ

なるほど……。

族長フィッチ

トーヤたちは速やかに
皇帝と
異世界から来た災いの元を
倒してくれ。

トーヤ

承知です。

族長フィッチ

盗賊ギルドのメンバーは
別の場所から
帝都に侵入して
魔法を封じている結界を
解除してほしい。

ミドル

あいよ。
そっちは任せてくれ。

族長フィッチ

目的達成後は
遊撃部隊とする。
また、城にある金品は
好きにするといい。

ミドル

ククク、それなら
さっさと結界を潰して
暴れさせて
もらうとするか。

 
 
嬉しそうな顔をするミドルさん。
さすが盗賊ギルドのメンバーだなぁ。

もしかしたらこれは
成功報酬ということなのかもなぁ。
それなら命を賭けても作戦を
決行してくれるだろうし。
 
 

族長フィッチ

ま、本当は
私としてはこの作戦には
乗り気ではないのだがな。

トーヤ

どういうことです?

ルシード

兵糧攻めにしようと
考えてたらしいんだよ。
このドラゴン。

トーヤ

こ、このドラゴンって……。
地竜の族長さんに対して
失礼だなぁ……。

族長フィッチ

帝都は堅固な要塞ゆえ
補給路は限られる。
食料も水も帝都内で
生産するのは難しい。

族長フィッチ

ゆえに私たちドラゴンが
街道を封鎖し、
物資の往来をさせぬように
するのだ。

トーヤ

それで弱ったところを
叩くわけですか。

エルム

その作戦は有効ですが、
時間がかかりすぎます。
地震だって続いてますし、
一刻を争うかもです。
当然、却下しました。

 
 
エルムはバッサリと切り捨てる。
こういう時は容赦ないよなぁ。

でもそれくらいの決断力が
僕たちには必要だもんね。
それにエルムの意見は頷けるし。
 
 

ティアナ

みんな、ちょっといい?

トーヤ

ん?

 
 
今まで黙って話を聴いていた
ティアナさんが口を開いた。

神妙な面持ちで、
何かを決意したかのような瞳。
どうしたんだろう?
 
 

ティアナ

私はフィッチと行動を
共にさせてもらいたいの。
トーヤたちとは
別行動をさせて。

トーヤ

えっ?

ティアナ

その方が全体の戦力の
底上げに繋がるはず。
ドラゴンマスターは
ドラゴンの力を100%以上
引き出すことが
出来るから。

族長フィッチ

確かにな。
私以外のドラゴンの
力を増幅させることは
可能だろう。
だが、ドラゴンロードたる
私の力への影響は軽微。

族長フィッチ

それなら最初から
ほかのドラゴンと共に
ゴーレム討伐部隊に
加わってはどうか?

ティアナ

作戦開始まで多少は
時間があるでしょ?
それまでに私の
ドラゴンマスターとしての
レベルを上げるわ。

族長フィッチ

この短時間では無理だ。

ティアナ

無理でも何でも
やらなきゃいけないの!

ティアナ

だって……
このままだと……
悔しいじゃん……。

トーヤ

ティアナさん……。

 
 
ティアナさんはわずかに俯き、
唇をかすかに震わせている。

彼女自身から強い意志のオーラを感じる。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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