僕にとっての地獄のような時間は
その後も続いた。



数十年くらい
経過したのではないかというくらい
果てしなさを感じる時間。

激痛が全身と精神を襲い続ける。

心が狂ってしまうのではないか
という瞬間もあったけど、
そばにカレンがいてくれて、
その気配や匂い、温もり、想いが
確かに感じられたから僕はがんばれた。



でも僕の姿を見せることで
彼女にもツライ想いを
させちゃっただろうし
泣いているみたいだったから
それは悪かったなと思う。

そしてついに僕は攻撃を耐え抜き、
フィッチさんとの約束を果たした。
 
 

トーヤ

はぁ……はぁ……。

族長フィッチ

見事だ、トーヤよ。

族長フィッチ

今こそお前の意思に応え
力を貸すことを
神に誓おう。

トーヤ

ありがとうございます。

族長フィッチ

今はゆっくりと休め。
体力が回復次第、
帝都攻略に出発だ。

トーヤ

ソニアさんたちが
考えてくれている作戦を
検証してからですけどね。

 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 

トーヤ

って……あれ……?

 
 
おかしいな……
急に全身から力が抜けていく。

やっぱり無理が続いたからかな?



目の前が暗くなっていく。
カレンの声が遠い。

てはは、体は正直だ。
少し休ませてもらうしかないね。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

トーヤ

……あれ?

 
 
目が覚めると
僕はどこかの部屋のベッドに
寝かされているようだった。

上半身を起き上がらせ、
窓の外を見ると太陽が高く照っていて
真っ昼間だということが分かる。
 
 

トーヤ

あ……。

カレン

…………。



傍らではカレンが
静かな寝息を立てている。
もしかしてずっと
看病してくれていたのかな?

だとしたら嬉しいな。
 
 

カレン

あれ……?

トーヤ

目が覚めた?

カレン

トーヤっ!?
トーヤこそ
目が覚めたのっ?

トーヤ

うん、たった今ね。
休ませてもらったおかげで
体調も万全だよ。

カレン

良かったぁ……。

トーヤ

ここはどこ?

カレン

フィッチさんが
手配してくれた家。
集落の中にあるのよ。

トーヤ

そうなんだ。
ほかのみんなは?

カレン

それぞれに過ごしてる。
トーヤの目が覚め次第、
集まって作戦会議を
することになってる。

トーヤ

じゃ、急いで
フィッチさんのところへ
いかないとね。

カレン

あまり無理しないで……。

トーヤ

あ……。

 
 
カレンをよく見ると、
顔に疲れの色が浮かんでいる。
目の下にはクマもあるし、
肌のつやも良くない。

せっかくの美人な彼女が台無しだ。


長旅と僕の看病で
疲労が蓄積しているんだろうなぁ。
 
 

トーヤ

やっぱりもう少しだけ
休ませてもらおうかな。
カレンも僕の隣で
横になって休みなよ。

カレン

えっ? えぇっ!?

トーヤ

あ、変な意味じゃないよ?
疲れてるだろうなって
思ったから。

トーヤ

カレンもゆっくり休もう。

カレン

あ……うん……。

 
 
カレンは頬を真っ赤にして
もっと狼狽するのかと思ったんだけど
思いのほか素直に僕の勧めに従う。



すぐ横にいるカレン。
息遣いも聞こえてくるくらい。
いい匂いもする。

その横顔は以前と比べて
ちょっと大人びたかもしれない。
本当に可愛い。
 
 

トーヤ

いつもありがとう。
カレンがいてくれるから
僕はがんばれる。

カレン

そんな……。

トーヤ

守りたい存在がいるから
命も張れるんだと思う。
でもそれは命を
投げ出すんじゃなくて
生きることへの意思かな。

トーヤ

アレスくんの気持ちが
今ならよく分かる。

カレン

トーヤはきっと
あの勇者様に
近付けているわよ。

トーヤ

だと嬉しいな。
目標にしている人
だからね。

カレン

でもね、私だって
守られるだけの
存在じゃ嫌よ。

カレン

私もトーヤを守る。

トーヤ

うん。ありがとう。

 
 
その後、僕はいつの間にか
また眠ってしまっていた。
やっぱり疲れが残っていたみたい。

カレンも休めたのかな?



これからも厳しい戦いが続くと思うけど
なんとしてでも乗り越えてみせる。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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