ティアナさんに代わり、
僕が地竜の族長さんと戦うことになった。

僕にはティアナさんのような特殊能力や
ソニアさんのような強大な戦闘力は
ないけれど、
僕には僕の戦い方がある。
 
 

族長フィッチ

さぁ、いつでも
かかってくるがよい。

トーヤ

はい、お願いします。

 
 
僕は族長さんの前へ出た。

そして持っていたナイフや
フォーチュンなどの武器を床に置き
土下座をする。


その行動にカレンたちは目を丸くして
当惑していたけど、
族長さんは顔色ひとつ変えずに
こちらを見下ろしている。
 
 

トーヤ

族長さん、お願いです。
僕たちに力を
貸してください。
このままでは
世界は終わりです。

トーヤ

この世界だけじゃない。
僕らの世界や
ほかの世界も。

族長フィッチ

…………。

トーヤ

罪のない人たちも
虫も動物も植物も
ドラゴンを含めた
全ての種族も
終わってしまう。

トーヤ

先ほどの非礼は
お詫びします。
どうかお力を。

 
 
僕は再び深く頭を下げた。
地面に額を擦りつけてお願いをする。

そのままの姿勢で返事を待つ。
 
 

族長フィッチ

頭を上げよ、トーヤ。

トーヤ

っ?

族長フィッチ

お前の願いは理解した。
非礼も許そう。
だが、協力をするかどうか
それは別だ。

族長フィッチ

仲間たちの命を預かる
族長として、
簡単に受け入れるわけには
いかない。

族長フィッチ

そもそも頭を下げる程度、
誰にでも出来る。
それに腹の中では舌を
出しているやもしれん。

トーヤ

分かっています。
でもドラゴンである
あなたには、
僕の心に嘘偽りが
ないことは
分かっているはずです。

ルシード

そうなのか?

エルム

はい。
ドラゴンには心を読む力が
あるそうです。

族長フィッチ

ふむ……。

トーヤ

そして僕の覚悟も
分かっていますよね?

族長フィッチ

お前の恐怖心もな。

トーヤ

…………。

カレン

恐怖心?

ソニア

…………。

 
 
確かに恐怖心がないといったら
ウソになる。むしろ怖い。

でも覚悟を示すためには、
力のない僕が族長さんの心を動かすには
それくらいのことをしないとダメなんだ。
 
 

トーヤ

協力いただく対価、
その覚悟を示すために
僕の腕の骨を100本
折ることを受け入れます。

カレン

はぁっ!?
な、何を言ってるのっ!?

族長フィッチ

…………。

トーヤ

あなたの力で骨を
1本折られるごとに
僕は自分の作った
回復薬で治療します。

トーヤ

その繰り返される激痛、
涙、悲鳴を
あなたへの贄として
捧げます。

カレン

トーヤ、バカなことを
言わないでっ!

カレン

短時間で大怪我と回復を
繰り返したら
命は失われないとしても
肉体がボロボロになっちゃう!
後遺症だって
残りかねないのよ?

トーヤ

かもね……。

カレン

ううんっ、それどころか
精神が持たないわよっ!
心が壊れちゃう!

トーヤ

てはは、僕は負けないよ。
でも万が一の時は
カレンに治療を
お願いするよ。

カレン

トーヤ……。

トーヤ

カレンは超一流の
お医者さんだからね。

カレン

バカ……。

 
 
悲しさと嬉しさが混じり合ったような
複雑な表情のカレン。

でもそれ以降は何も言わなかった。
 
 

族長フィッチ

……トーヤ、良いのだな?
いや、その問いかけは
無用だったか。

族長フィッチ

良かろう。
やり遂げた時には
私の負けを認め、
お前たちへの協力を
約束しよう。

トーヤ

ありがとうございます。

 
 
僕はまた深く頭を下げると、
持っていた回復薬を
目の前に用意していった。



即効性があって鎮痛効果の強い
治療薬を主体にしよう。
体力回復薬はあくまで補助的に。

骨が繋がらなかったら
まさに骨折り損――ってね。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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