族長さんはドラゴンマスターの命令を
拒否できるドラゴンロードという
存在らしかった。

だからティアナさんの力が
通用しなかったみたい。


ただ、ドラゴンロードすらも
従わせることが出来る例外というのが
あるとのこと。
 
 

トーヤ

ハイマスター?

族長フィッチ

ほぅ?
それは知っていたか。

ティアナ

詳しいことは知らないわ。
知ってるのは
ドラゴンマスターの上位に
それがあるってことだけ。

族長フィッチ

なるほど。
うむ、その通りだ。
ハイマスターであれば
ドラゴンロードですら
強制的に従えることが
出来る。

族長フィッチ

ただし、それが出来る
というだけで
実際にやる者は
おらんだろうがな。
なぜなら――

ティアナ

バッカみたい。

 
 
族長さんの話を遮り、
ティアナさんは薄笑いを浮かべて叫んだ。

でもそれに対して族長さんは
表情ひとつ変えずにいる。
 
 

ティアナ

そりゃそうでしょ。
私の知る限り、
ハイマスターなんて
ドラゴンマスターの
長い歴史上でも
ひとりかふたりしか
いないんだから。

ティアナ

あはは、無理無理。
そんな裏技を使わないと
いけないなんて、
私の方が勝ち目ないわ。
まんまと嵌められたわ。

ティアナ

つーか、私たちの中で
勝てる人いるの?
ドラゴンの上位なんて
勝てるわけないわー。

族長フィッチ

ふむ……。

 
 
なんだかティアナさん、
投げやりになっちゃってるみたいだな。
悪態をついている感じ。

こういうティアナさんの姿、
見たくないな……。
 
 

族長フィッチ

どうする?
勝負をやめるか?

ソニア

まさかぁ!
私なら余裕で
勝っちゃうもん。

カレン

ソニアさん、
大丈夫ですか?

ソニア

カレン、
私ってすっごく
強いんだよぉ?

ソニア

ドラゴンロードだか
なんだか知らないけど、
所詮はドラゴン。
負けるわけないじゃん。

族長フィッチ

私が参ったと言わず
死を選んだとしたら
どうする?

 
 
 
 
 
 

ソニア

言わせるわよ。
なんとしてでも。
私を見くびらないでね?

 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 

その瞬間、僕は背筋が寒くなって
全身がぞわぞわと震えた。

こういう時のソニアさんは
氷のように冷たい雰囲気が
吹き出していて情け容赦も感じられない。



僕の予想だけど、
マトモにぶつかったとしたら
たぶんソニアさんが勝つと思う。

だけどそれはなんか違う気がする。
そして族長さんはきっとその結末を
望んでいない。



だから――っ!
 
 

トーヤ

あの、次に戦うのは
僕でいいですか?

ティアナ

えっ?

カレン

トーヤがっ!?

エルム

兄ちゃん……。

ルシード

トーヤ、
熱でもあるのか?

ミドル

頭でも打ったか?

ソニア

…………。

トーヤ

みんな酷いよ……。

トーヤ

えっと、異存は
ないみたいだね。

ルシード

そりゃまぁ……。

トーヤ

じゃ、次に戦うのは
僕で決まり。

トーヤ

というわけで、族長さん。
相談があるのですが?

族長フィッチ

なんだ?

トーヤ

僕は弱いので
ハンデをもらえませんか?

トーヤ

最初の一撃、
僕が繰り出すまで
手出しをしないというのは
ダメですか?

族長フィッチ

先制攻撃を認めろと?
そういうことか?

トーヤ

はい。

族長フィッチ

いいだろう。
そのハンデ、
認めてやろう。

トーヤ

ありがとうございます。

 
 
これで少しは勝機が見えたかも。



……というか、
族長さんは全て分かっていて
ハンデを認めてくれたんだろうな。

これから僕が何をしようとしているのか、
きっと理解している。

そして彼はそれを待ってくれている。
そんな気がする。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

第312幕 次に戦うのは誰?

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