族長さんは僕たちがひとりずつ戦って
『参った』と言わせたら
協力をしてくれるという。
でもドラゴンは
ドラゴンマスターに対して逆らえない。
これは古の契約によって定められている。
それなのにドラゴンマスターである
ティアナさんに対して
どうして族長さんは
そんな勝ち目のない勝負を
挑んでくるんだろう?
族長さんは僕たちがひとりずつ戦って
『参った』と言わせたら
協力をしてくれるという。
でもドラゴンは
ドラゴンマスターに対して逆らえない。
これは古の契約によって定められている。
それなのにドラゴンマスターである
ティアナさんに対して
どうして族長さんは
そんな勝ち目のない勝負を
挑んでくるんだろう?
やっぱりおかしい。
……もしかしたら
これは罠かも。
勝ち目ゼロの提案を
してくるわけがない。
あのっ、
ちょっと待っ――
いざ、勝負!
僕が待ったをかけようとした刹那、
ティアナさんはオーラのようなものを
全身から放ち始めた。
それはどんどん高まっていって
戦意を族長さんへ向けている。
提案は成立した。
フフフ……。
…………。
嫌な予感がする。
やっぱり何かあるんだ。
くそっ、もう少し僕の決断が早ければ!
竜気は高まったわ。
そのようだな。
だったら分かるわよね?
もはや私には
逆らえないってこと。
…………。
ドラゴンを操るには竜気というものが
関係しているらしい。
あの体から放たれている
オーラのようなものがそうかな?
さぁ、降参しなさい。
参ったと言いなさい。
…………。
ククク、断る。
っ!?
がぁああぁ!
きゃああぁっ!
族長さんは天にも響き渡る咆哮を上げた。
空気は刃物のような鋭さで振動し、
その衝撃波は周りにいた僕たちの
体の中へ直接ダメージを与えてくる。
もっとも、
僕たちは少し離れた位置にいるから
耐えられないほどじゃないけれど。
がふっ……。
ティアナさん!
う……ぅ……。
至近距離で咆哮を受けたティアナさんは
吹き飛ばされて体を壁に叩きつけられた。
体内への衝撃と外部からの衝撃。
二重のダメージがティアナさんを襲い、
口から激しく吐血している。
もう終わりか?
呆気ないな。
竜気を使わんと
ドラゴンとまともに
戦うことも出来ぬのか?
い……今のは
ちょっとゆ……だん……
しただけよ……。
がふっ!
まずい、思った以上に
ティアナさんのダメージは大きい。
早く手当をしないと!
でもっ、ティアナさんが降参しないと
僕たちは手を貸すことが出来ない。
もし手を貸したらルール違反。
ティアナさんの負けだ。
なめん……じゃ……
ないわよぉっ!
直後、ティアナさんの竜気が
数倍に膨れあがった。
立っているだけでも苦しいはずなのに
あれだけの戦意を高められるなんて。
まさに執念というか、
ドラゴンマスターとしての
プライドというか。
我を失って意識が上位の世界へと
入り込んでしまっているのかもしれない。
地面にひれ伏せっ!
命乞いをしろっ!
ドラゴンのクセに
ドラゴンのクセにッ!!
生意気よぉおおおぉっ!
うぐっ!
こ……れは……。
なんという強き竜気!?
信じられん……。
まさに天賦の才。
これは恐れ入った……。
さぁ、ひれ伏せッ!
ひれ伏せぇええぇッ!!!
これは私も本気を
出さねばならぬな。
殺してしまうやもしれんが
その時は許せよ。
次の瞬間、族長さんの体から
得体の知れない黒い光が溢れ始めた。
殺気と威圧感に満ちた禍々しい力。
まるで僕らの世界における
魔王の力のような。
空間全体が震えている……。
カレンっ!
ティアナさんに
回復魔法を!
僕がチャンスを作る!
で、でもそれだと
負けになっちゃう。
ティアナさんの意思を
無視するわけには……。
このままだと
ティアナさんが
死んじゃうよ!
死んじゃうんだよぉっ!
わ、分かった!
やむを得ないわね……。
ソニアさんッ、
結界魔法を
お願いします!
がってん承知ぃ!
ルシード、
エルムのことを頼む!
分かった!
兄ちゃん、
無理はしないで
くださいね。
うんっ!
僕はティアナさんに駆け寄ると
族長さんとの間に割って入る形で、
我を失っている彼女を抱きしめた。
彼女を庇う形。
これならもし攻撃の直撃を受けても
ティアナさんは助かるかもしれない。
もちろん、その時は
僕自身がどうなるか分からないけど。
……死ぬ……だろうな……。
あぁ、ティアナさん、
どうか我に返ってください!
次回へ続く!