地竜のテリトリーを進んでいた僕たち。
やがて遥か前方にその姿を見つけ、
接触を試みる。

上手く交渉が出来るといいんだけどな。
 
 

トーヤ

ティアナさん、
この場はお任せします。

ティアナ

えぇ。

 
 
得意気な顔で
自分の胸をドンと叩くティアナさん。

それから程なく僕たちは
その地竜と至近距離で対峙する。
ティアナさんがいるからか、
いきなり攻撃はしてこないみたい。
 
 

地竜

ドラゴンマスターの
ようだが、
この地に何の用だ?

ティアナ

あなたたちに協力を
お願いしたいんだけど。

地竜

協力?

ティアナ

これから帝都を
潰しに行くの。

ティアナ

あなたたちも
気付いているでしょ?
世界のバランスを
崩しているヤツが
あそこにいるってこと。

地竜

無論だ。
放置すれば近いうちに
世界は滅びるだろう。
それは理解している。

地竜

だが容易には攻め込めん。
ヤツらは対ドラゴン用の
武器や防具、
戦術を備えている。

ルシード

へぇ、帝都側はドラゴンが
攻めてくる可能性も
想定してるのか。

ソニア

用意周到というか
厄介な相手ね。

地竜

そういうことだ。
よって我らの犠牲も
少なくはなかろう。

ティアナ

だから一緒に戦おうって
言ってんの。

地竜

……我の一存では
決められぬ。
族長へ交渉を願いたい。

ティアナ

じゃ、その族長のところへ
案内して。

地竜

分かった。

 
 
僕たちは出会った地竜の案内で
テリトリーの奥へと進んでいった。
進むにつれ、ほかの地竜の姿も
多く見られるようになる。


近付いてくる地竜はいないけど
やはり気になるのか、
そばを通るとみんな
じっとこちらの様子を
うかがっているみたいだ。

果たして彼らはどんな風に
僕たちのことを見ているのだろう?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
やがて僕たちは地竜の族長の
家(ほら穴?)へ案内された。

そこには威厳と神々しさに満ちた
地竜がいて、
明らかにほかの地竜とは格が上の
雰囲気を漂わせている。
 
 

ティアナ

こんにちは。
私はドラゴンマスターの
ティアナよ。
薬草師でもあるけど。

トーヤ

僕はトーヤです。
えっと――

族長フィッチ

自己紹介も説明も
不要だ。
対面したことで
お前たちの名前も
目的も理解した。

ミドル

へぇ、それなら
俺の趣味も
分かったのか?

族長フィッチ

興味のないことは
分からんし、
知ろうとも思わん。

ミドル

へいへい、そーかい。
でもそれなら話は
早いわな。

族長フィッチ

単刀直入に言おう。
お前たちの申し出、断る。

トーヤ

っ!?

族長フィッチ

理由は簡単だ。
お前たちの心が
気に食わない。

ティアナ

このままだと世界が
滅んじゃうのよ?
それに賛同できない
ってことなの?

族長フィッチ

そうではない。
協力するのは
やぶさかでもないが
急に押しかけてきて
一方的に協力しろと
要求してくるのは
いささか乱暴ではないか?

族長フィッチ

そうした心が
気に食わんと
言っているのだ。

 
 
うーん、確かに族長さんの言う通りかも。


ちょっと失礼すぎたよね。
これは僕たちの落ち度だ。
本当に申し訳ない。

彼らにも都合だってあるだろうし、
少なくとも協力を求める相手に対しての
態度じゃない。
 
 

トーヤ

…………。

ティアナ

じゃ、どうすれば
いいの?

族長フィッチ

そうだな、
お前たちひとりずつ
私と戦って『参った』と
言わせたら
協力することとしよう。

族長フィッチ

気絶や戦意を喪失したら
その時点で負け。
次の者と交代だ。
お前たち全員が負けたら
速やかにこの地から
立ち去るがいい。

ティアナ

へぇ、いいの?
私がドラゴンマスターだと
分かってて言ってるの?

族長フィッチ

無論だ。
それくらいのハンデは
必要だろうからな。
なぁ、自惚れの小娘。

ティアナ

言うじゃない?
後悔させてやるから。

 
 
ニタニタと笑うティアナさん。
でもそれはそうだよね。

ドラゴンマスターである
ティアナさんにとっては
負ける要素がないもん。




そもそもドラゴンは
ドラゴンマスターに逆らえない。
古の契約によって
そういうことになっている。

サカナが水の中でしか
生きられないように、
僕たちが呼吸をしないと
死んでしまうように、
これは生まれ持って定められた
性質のようなもの。



族長さんはなぜ勝ち目のない勝負を
挑んできたんだろうな……。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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