僕たちはミドルさんの案内で
森の中を進んでいった。
しかもそれは街道とは反対の方向。
でも彼は付いてこいと言う。

いったいどこへ向かっているんだろう?
 
 

ルシード

ん……!
森を抜けたみたいだな。

トーヤ

今まで進んでいた
場所とは
景色が一変したね。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
不意に木々が途切れると
その先は渓谷地帯(山地)となっていた。

ゴツゴツとした岩肌が主体で
その間には狭くて流れの速い川が
流れている。


ただ、水深はあまりないみたいだから
舟は通れそうにない。
段差もたくさんあるしね。

僕たちはその川に沿って歩いていく。
 
 

ミドル

滑りやすいから
足下に気をつけろよ。

エルム

確かにコケの付いた石が
たくさんありますね。

トーヤ

これはウミナラズっていう
コケだと思う。
僕たちの世界と
植生が同じならね。

エルム

ウミナラズ?

トーヤ

渓谷地帯では
一般的に見られる品種。
手にとって匂いを
嗅いでごらん。

 
 
するとエルムは立ち止まり、
足下に転がっている
コケの生えた小石を手に取った。

それを鼻へと近づけていく。
 
 

エルム

っ!?
磯の香りがします。

トーヤ

山の中に生えるのに
磯のような香りがする。
だからウミナラズ。

エルム

そういうことですかぁ。

トーヤ

食べることも出来るよ。
特に乾燥させると
香りと味が増して
おいしいんだ。

カレン

血圧を下げる効果も
あるのよね。
だから食べ過ぎは
良くないけど。

ティアナ

ま、普通に食事で
採る程度の量なら
問題ないから
気にしなくても
いいでしょう。

ミドル

ふーん、
そういう姿を見ると
間違いなくお前たちは
薬草師って感じがするな。

カレン

私は薬草師ではなく
医師ですけどね。

ミドル

コケが生えてるのも
石(イシ)だしな。

ソニア

…………。

 
 
その場に流れる沈黙と微妙な空気。

静けさによって川のせせらぎや
鳥たちの声がハッキリと聞こえる。


なんだろう、この間は……。
 
 

ソニア

今日もいい天気ねぇ。

カレン

そうですねぇ。
陽が暖かくて
気持ちいいですね。

ティアナ

しかも川の近くで
涼しくて最高。

ミドル

露骨に無視すんなよ!
はいはい、
くだらないギャグ言って
悪かったよ!

トーヤ

ミドルさん、
面白かったですよ。

エルム

え、えぇ。

ルシード

気を落とすな。

ミドル

無理にフォローすんな。
かえって胸が痛いから。

 
 
どうやらミドルさんの
SAN値が下がったみたいだ……。

山地だけにSAN値が――ううん、
なんでもない!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
こうして川沿いを歩き始めて小一時間。
やがて僕たちは小さな滝の前へと
辿り着く。

滝つぼの付近では
水しぶきが霧状のように漂っていて
空気も冷えている。


その下の水中では
サカナがたくさん泳いでいるのが
透けて見えている。
 
 

ミドル

着いたぞ、ここだ。

カレン

へ?

ルシード

釣りでもするのか?

ティアナ

んなワケないでしょ。

エルム

移動に役立つ
何かがあるんですね?

ミドル

ご名答。ここには
ワープゲートがある。
それを使えば
地竜の集落のそばまで
一瞬で行ける。

トーヤ

そういうことでしたか。

 
 
ミドルさんは滝つぼの横にある
大きな岩に何かをしていた。

その直後、
それは低い音を立てて横にスライドし、
奥の岩肌に穴が現れる。
 
 

ミドル

誰か照明魔法を使って
先に入れ。
俺は最後に入って
出入口を閉める。

カレン

じゃ、私が
照明魔法を使います。

カレン

…………。

 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
カレンはスペルを詠唱し、
空中に手のひら大の光球を生み出した。
それを操りつつ、穴の中へ入っていく。


僕たちもそのあとに続き、
最後にミドルさんが入って
出入口を閉めた。

穴の中は湿気と岩の匂い、
そして冷たい空気に満ちている。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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