僕たちは利害が一致している
盗賊ギルドの協力を
取り付けることが出来た。

目指すは帝都ヨス。
そして皇帝や世界の滅亡を企む
グランの手下を倒すんだ。




ただ、僕たちは帝都へ行く前に
まずはその東にあるという
地竜の集落を目指す。

彼らの協力を得られればいいんだけど。



まぁ、ドラゴンマスターの
ティアナさんがいるから
大丈夫だとは思うけど。
 
 

トーヤ

さて、待ち合わせ場所は
ここでいいんだよね?

カレン

そのはずだけど……。

 
 
翌日、僕たちは首都を出発して、
帝都方面の街道を半日ほど進み、
そこから森へ入った所にある
炭焼き小屋の中にいた。

盗賊ギルドから派遣される案内役の人と
この場所で待ち合わせをしている。


ただ、それがどんな人なのかは
知らさせていないから
会ってみるまで分からない。




それにしても
本当にここで良いのだろうか?

周囲に人の気配がしないまま
数時間が経過しているけど……。
 
 

ルシード

役人や敵側の人間に
尾行されないようにとか
慎重になってるんだろ。
ま、気長に待とうぜ。

ソニア

もし見つかったとしたら
口封じに消しちゃえば
早いのに。

エルム

戯れはやめてください。
音信不通の者が出たら
警戒されてしまいますよ。

エルム

ソニアさんだってそれを
理解しているでしょう?

ソニア

さすがエルム。
でもほかに手段が
なかったら
躊躇なく消すけどね。

エルム

えぇ、その時は
仕方のないことです。

トーヤ

ふたりとも物騒だなぁ。

カレン

でもトーヤ、
この先はそれくらいの
意識でいないとダメよ。

トーヤ

っ!?

カレン

私たちは戦場へ
向かっているような
ものなんだから。

ティアナ

そうね。
戦闘は避けられない
でしょうしね。

 
 
そうだ、僕たちは観光をしに
帝都へ向かっているわけじゃないんだ。

むしろ僕たちの世界で
グランたちと戦っていた時の副都と
同じような意識でいないと
いけないんだ。
 
 

トーヤ

うん、そうだよね。
ゴメン、
少し気が緩んでた。

カレン

何かが起きる前に
気持ちが
切り替えられたのなら
それでいいのよ。

同感だな。
俺たちは
遊びにいくんじゃ
ねーんだからな。

トーヤ

っ!?

 
 
不意にどこからか声がした。
物音も気配も全く感じなかっただけに
その驚きは一気に最高潮。

心臓がうねりを上げて大きく脈動し、
僕は慌てて周囲を見回してみる。


するとドアの横には人影が……。
いつの間に入ってきたんだろう!?
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ミドル

まさかこんな形で
再会するとはな。
つくづく世間は狭い。
あるいは運命の導きか。

トーヤ

あなたはっ!?

ソニア

ベテラン門番さん。

 
 
そこに立っていたのは、
首都の門番をしていた兵士さんだった。

彼はニタニタと微笑みながら
こちらを見ている。
 
 

ミドル

俺はミドル。
盗賊ギルドのメンバーだ。
普段は兵士として
政府側に紛れ込み、
諜報活動をしている。

エルム

間者ということですか。

トーヤ

患者?

エルム

間者です。
スパイということですよ。

ティアナ

なるほど、確かに
間者も盗賊ギルドの
管轄だったわね。

ミドル

そういうことだ。
盗賊技能も一通り
マスターしている。

 
 
――うん、そういうことか。

それなら音もなく小屋の中に
入ってきていたのも納得できる。


しかも隙のない身のこなしや
門番をしている時に見せた洞察力、
色々と能力は高そうだ。
 
 

ソニア

ある程度の戦力に
なりそうね。

ミドル

ま、表立った戦闘は
期待すんなよ?
そっちは人並みだ。
俺は隠密行動に能力を
特化しているからな。

トーヤ

それでも僕よりは
マシですよ、きっと。

ミドル

確かにお前のような
ガキに比べればな。

ミドル

だが、
そういうヤツに限って
奥の手を持っているもんだ。
そうだろ?

トーヤ

さて、どうでしょう?

ミドル

食えねぇガキだ。

 
 
ニヤリと頬を緩めるミドルさん。
そして懐からタバコを出して
それに火をつけ、
吸い込んでから大きく煙を吐き出す。

小屋の中には
炭のスス臭さとタバコ臭さが
混じり合って少し気持ち悪い。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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