聞き込みに疲れた僕たちが町の広場で
小休憩していると、
ベガー(物乞い)に声をかけられた。

そしてルシードが小銭を渡したんだけど
実はその人は偽物のベガーだと
身体的な特徴から
ティアナさんが気付いたのだった。
 
 

トーヤ

すみません、
ティアナさん。
もっと早く見抜かなければ
ならないのに。

ティアナ

いいのよ。
それはトーヤが無垢で
心が優しいという
証拠だから。

ティアナ

それに小銭を
与えることに反対って
ワケじゃないのよ。

トーヤ

っ?

ティアナ

ニセのベガー、
つまり職業として
物乞いをしているなら
その人に
用事があるでしょ。

カレン

あ、もしかして
そういうことでしたか!

トーヤ

どういうこと?

カレン

トーヤ、
カリブさんからもらった
板を出して。

トーヤ

あ……うん。

 
 
僕は言われた通り、
カリブさんにもらった木の板を
荷物の中から取り出して
それをカレンに手渡した。

カレンはそれをニセベガーの前へ
突きつける。
 
 

カレン

あなた、商売として
物乞いをしてるのよね?
それならこれを見て
知っていることを
教えなさい。

…………。

カレン

職業としての物乞いは
シーフギルドの管轄。
その縄張りで
勝手に商売は
出来ないわよね?

カレン

それとも本物のベガーだと
まだ言い張るなら
ティアナさんに
診察してもらえば
分かることです。

……何者だ、あんたら?
役人じゃなさそうだが?

カレン

それは自分が商売として
物乞いしていると
認めるってことね?

まぁな。
今、話に出てきた
カリブさんって名前、
その木片も本物のようだ。
話くらいは聞いてやる。

ただ、この場はマズイ。
目立ちすぎる。
月が天高く昇る頃
町外れの墓地に来な。

くれぐれも
誰かに尾行されるなよ?
周囲には気を配れ。

 
 
ニセの物乞いは低い声でボソッと呟くと
足を引きずる演技をしたまま
その場からゆっくりと去っていった。

去り際に一瞬だけ目が合ったけど、
その瞳の奥には
冷たさと敵意みたいなものがあって
思わず僕は背筋が寒くなる。
 
 

ティアナ

ひとまずはこれで
有益な情報が
得られるかもね。

エルム

油断はできませんけどね。

ルシード

シーフギルドには
アサッシン(暗殺者)も
所属してるだろうからな。
用心しておこう。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
その後、僕たちは昨晩泊まった宿で
もう一泊する手続きをしてから
夕食を済ませた。

そしてベガーと約束した時間まで
宿で過ごし、
それから周りに気付かれないように
窓から外へ出て墓地へと向かう。
 
 

トーヤ

ここでいいんだよね?

カレン

たぶん。

エルム

誰もいませんね。

ルシード

警戒を怠るな。
いつ何が起きるか
分からないんだからな。

……そんなに
ピリピリしなくても。
そんなに気を張っていたら
ふと緩んだ瞬間に
お命頂戴
されちゃいますぜ?

トーヤ

っ!?

ククク……。

 
 
どこからか声がして周囲を見回した直後、
気付けば目の前に
あのニセベガーが佇んでいた。



いっ、いつの間にっ!?
気配すら感じなかった……。

やっぱりこの人は只者じゃない……。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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