僕たちは
シーフギルドが解散したという情報の
真意を確かめるべく、
ギルドメンバーらしき人に絞って
聞き込みをすることにした。
でもそう思いながら
いざ町を歩いていると
なかなか出会えないものだ。
普段はあまり会いたくない人たちだけど
今は早く出てきてくれないかなぁって
願ってしまう。
僕たちは
シーフギルドが解散したという情報の
真意を確かめるべく、
ギルドメンバーらしき人に絞って
聞き込みをすることにした。
でもそう思いながら
いざ町を歩いていると
なかなか出会えないものだ。
普段はあまり会いたくない人たちだけど
今は早く出てきてくれないかなぁって
願ってしまう。
くっそー。
なかなか近付いて
こないな。
ルシードが
そんな血走った目で
周囲の様子をうかがって
いるからじゃない?
警戒心バリバリって
感じだもんね。
もっとバカで
無防備なフリを
しなさいよ。
無茶言うなよ……。
結局、それから数時間ほど町の中を
歩いてみたものの、
それらしき人物と
接触することはなかった。
疲れた僕たちは町の広場にある
階段に腰掛けて小休憩をする。
そろそろ今夜の宿を
確保しないといけないね。
昨晩と同じところで
いいんじゃない?
それにしたって
宿へ行って
手続きをしないと。
連泊の予約を
しておけば
良かったのに。
こんな事態になるなんて
思ってなかったですから
無理ですよ。
それもそうね……。
その場にいた全員が一様に
深いため息をついた。
するとその直後のことだった。
もし……
どうかお恵みを……。
ん?
声のした方を見てみると、
そこにはベガー(物乞い)の姿があった。
あちこちが破れ、汚れた服を身に纏い、
肌は埃にまみれている。
また、足を怪我しているのか、
杖をつき、引きずっている。
わずかで構いません。
お恵みを。
…………。
……どうする?
ルシードったら、
分かってて聞いてるの?
一応な。
じゃ、そういうことで。
分かった。
ルシードはポケットに手を入れ、
パン1個が買えるくらいの硬貨を
取り出した。
そしてそれをベガーへ手渡す。
ありがとうございます。
ベガーは満面の笑みを浮かべ、
僕たちに向かって深々と頭を下げると
おぼつかない足取りで
その場から立ち去ろうとした。
でもその時、
ティアナさんがその行く手を遮るように
すばやく回り込んで立ち塞がる。
ベガーは目を丸くして
ティアナさんを見る。
待ちなさいよ。
あなた、見たところ
足が悪いようよね?
……え?
えぇ、そうですが……。
私が診察してあげる。
薬も処方するから
そこに座りなさい。
私は薬草師なの。
いえ、そこまで
していただかなくても。
遠慮しないで。
さあさあ!
ティアナさんはベガーを
無理矢理その場に座らせようとした。
それに対してベガーは
後ずさりしつつ身振り手振りで
それを拒否している。
おかしい。
確かにティアナさんはお節介な性格――
じゃなくて、
姉御肌で面倒見がいい性格だけど
今回はいつもと比べて強引すぎる。
何か意図があるのだろうか?
なんでそんなに嫌がるの?
それとも診察されたら
困ることでも
あるのかしらね?
例えば、その足が
実は怪我していない――
とかね。
っ!?
ベガーなのに
健康状態が
良さそうじゃない。
肌を汚して誤魔化しても
私には分かるわよ?
っ!
ティアナさんの指摘を聞いて
ようやく僕も気付いた。
確かに埃にまみれてはいるけれど、
よく見ると肌の張りやツヤは
健康そのもののように見える。
髪の毛だって爪だって
栄養不足状態が長く続けば
あんなに活き活きとしているのは変だ。
つまりこの人は本物のベガーでは
ないということ。
うあ……経験の差が出たな……。
さすがはティアナさん。
僕よりはるかに長く薬草師を
しているだけはある。
次回へ続く!