僕とソニアさんは
正規の手段で通用門を通ることになった。
そして中から地下を掘り進み、
ほかのみんなはその抜け道を通って
町に入るということになった。
誰かに見つかったら
大変なことになるから
慎重に進めないとな……。
僕とソニアさんは
正規の手段で通用門を通ることになった。
そして中から地下を掘り進み、
ほかのみんなはその抜け道を通って
町に入るということになった。
誰かに見つかったら
大変なことになるから
慎重に進めないとな……。
じゃ、心の準備は
いいですね?
モチのロンよっ♪
こうして僕とソニアさんは
町の通用門へ向かった。
当然、そこではほかの旅人や交易商人、
お役人っぽい人なども一様に
衛兵さんたちの審査を受け、
通行税を支払って中へ入っている。
止まれ。
町に入る目的はなんだ?
えっと、僕は旅の途中に
商売がてらに
立ち寄った次第です。
商売だと?
僕は薬草師をしています。
自分で調薬した薬を売ったり、
頼まれれば可能な範囲で
治療や診察もします。
私は助手でーす。
お前みたいな小僧が
薬草師だと?
お疑いなら
この場で調薬を
してみせましょうか?
その必要はない。
通行税を払って
さっさと通りな。
後ろがつかえてるんだ。
その時、
門に寄りかかっていた衛兵さんが
メンド臭そうに言い放った。
今も大きなアクビをして、
どう見ても真面目に仕事を
しているようには見えない。
ボウズ、
腑に落ちねぇみてぇな
顔をしてるな?
え、いや……。
あのな、こう見えて俺は
門番一筋15年の
ベテランだ。
ボウズが本物の
薬草師かどうかくらいは
分かる。
ただし!
そっちのねーちゃんが
本当に助手かどうかは
正直言って怪しいな。
一緒に旅をしてるってのは、
ま、本当だろうがな。
まー、通しても
問題ないだろ。
そういう関係なんだろ?
そういう関係って
どういう意味よ?
ソニアさんはムスッとしながら
衛兵さんを睨み付けた。
すると衛兵さんはニヤッとして
頭をかきながら軽く頭を下げる。
いやいや、失礼。
野暮なことを
言っちまったな。
世の中には
いろんな趣味のやつが
いるからな。
結構結構。
そう言うと、
ベテランだという衛兵さんは
ケタケタと笑ってから
タバコに火を付けて一服していた。
その様子を見ると、
ほかの若い衛兵さんたちは
僕たちに全く疑いの目を向けることなく
通行税を受け取った。
そしてすんなりと町の中へ通される。
怠けているように見えて
あの衛兵さんはきっと
みんなから一目置かれてるんだね。
だからこそ気持ち悪いな。
あの衛兵さん、
只者じゃないような
気がする……。
さ、行きましょ。
え、えぇ……。
胸の中にモヤモヤが残りつつも、
僕はソニアさんに手を引かれ、
通用門の前から町の中へ向かって
歩き出した。
おい、ボウズ!
突然、さっきの衛兵さんに
後ろから声をかけられた。
それにビックリした僕は
思わず体をビクッと震わせ、
恐る恐る振り向く。
すると衛兵さんはニタニタしながら
ゆっくりと歩み寄ってきた。
後学のために
教えておいてやるよ。
ボウズが本物の薬草師だと
分かった理由をな。
そのこと、
気になってんだろ?
あ……はい……。
服のあちこちに
薬らしきものの
シミがついてる。
布袋からはみ出して
見えているのは
俺も知ってる種類の
薬草だ。
っ!?
そもそもボウズから
薬の匂いが
漂ってきてるぜ?
ま、嗅覚が鈍いやつには
分からないレベルだがな。
一流の詐欺師なら
それくらいはやるが、
ボウズの目付きには
その類の欠片もねぇ。
分からないわよ?
ソ、ソニアさん……。
ま、もし本当に
俺の目を欺ける詐欺師
だったとしたら
お手上げだわな。
衛兵さんは咥えていたタバコを
大きくすってから足下に捨てると、
最後に入道雲のような煙を吐き出した。
そしてクククと喉の奥で小さく笑う。
そういうわけだ。
それで最終的に本物の
薬草師だと判断した。
――スッキリしたか?
はいっ。
……フッ、いい返事だ。
そうだ、
教えてくれたお礼に
僕からも。
僕は荷物袋の中を漁り、
目的の物を取り出して衛兵さんに渡した。
それは薬の入った小瓶で、
その効能は――
これは呼吸器の機能を
改善する薬です。
あまりタバコを
吸いすぎないように
気をつけてくださいね。
薬草師の僕としては
本当はタバコを
やめてほしいんですけど
様子を見る限り
無理でしょうからね。
はっはっは!
その通りだ。
タバコはやめられねぇ。
でもまぁ、
薬草師様のお言葉に
敬意を表して、
せいぜい注意だけは
しておくことにするよ。
それでは、失礼します。
僕はペコッとお辞儀をすると、
ソニアさんとともに町の中へ
歩を進めた。
なんか不思議な雰囲気の
衛兵さんだったなぁ。
次回へ続く!