ソニアさんは何らかの手段で
移動をしようとしているらしい。
話の流れから察すると、
何かに乗るか浮遊魔法のようなものを
使うみたいだけど。
そしてソニアさんが指差したのは、
ルシードの背負っている荷物だった。
ソニアさんは何らかの手段で
移動をしようとしているらしい。
話の流れから察すると、
何かに乗るか浮遊魔法のようなものを
使うみたいだけど。
そしてソニアさんが指差したのは、
ルシードの背負っている荷物だった。
もしかして……マット?
そこにあったのは
僕たちが野宿する時に使っている
マットだった。
数はひとつしかないから
順番に使っている。
もっとも、僕やルシードは使わず、
カレンたちに譲ってあげているけど。
そのマットを
私が念動魔法で操って
それに乗ろうってこと。
空飛ぶマットですね。
じゅうたんがあれば
良かったんだけどね。
でも問題があるぞ?
ふむ、何かなルシードくん?
ここに6人乗るには
狭すぎるぞ?
詰めても3人が限界よね。
ペアになって抱き合えば
なんとかなるっしょ?
抱き合うぅっ!?
だだだ、誰と誰がッ!?
それはご自由に。
しれっと言い放つソニアさん。
はぅぅ……、
また厄介なことになりそうな予感……。
みんなの反応はそれぞれで、
まずカレンは焦りまくっている。
顔は耳まで真っ赤になって
オタオタしている感じ。
それを見て苦笑しているのがエルム。
ティアナさんは
特に意に介していないようで
誰でも来いということだろうか。
一方、ルシードは当惑の色を見せている。
えっと僕は……。
やっぱりルシードかエルムと
ペアになった方がいいよね?
ほほぉ、それはそれで
一部の趣味の皆様には
おいしい展開ですなぁ。
トーヤっ!?
まさかお前っ、
そういう趣味が……!?
ルシードさん、
兄ちゃんがそんなこと、
意識しているわけが
ないじゃないですか。
他意なんてありませんよ。
考えすぎです。
っ!?
そ、そうだよなっ!?
は、ははは……。
なぜかルシードは声が裏返って
全身から汗も流している。
口元もヒクヒクと動いて
笑みとも焦りともとれない
複雑な表情をしている。
ルシード、どうしたのかな?
兄ちゃんはカレンさんと
ペアになるのが
いいでしょう。
えぇっ!?
あはは、そ、そうっ?
遺恨やらなんやら、
後々のことを考えると
それが一番平和です。
触らぬ神に祟りなしです。
……なんか今の言葉は
ひっかかるわね。
推薦してくれたのは
嬉しいけど。
カレンはエルムを睨み付けた。
するとエルムは途端にハッとして
視線を逸らしながら
さりげなく僕の後ろに避難する。
そういうわけで、
僕はル――
エルムは私と組もうねっ♪
えっ? で、でも……。
というわけで、
ルシードとティアナが
ペアね。
なんだとっ!?
別にいいじゃん
向かい合ってってことなら
少し抵抗あるけど、
バックハグくらいなら
問題ないわよ?
ただ、変な気を起こしたら
相応の罰は覚悟してね。
怖ぇーよ!
その笑みがメッチャ
怖ぇんだよっ!
瞳の奥に殺意の炎が
灯ってるよ!!
あっはははっ!
丘の向こう側まで響き渡るかのような
ソニアさんの笑い声。
ルシードたちを指差して
涙を滲ませながらお腹を抱えてる。
絶対に面白がってやってるよ……。
まったくこの人は……。
なーんちゃって!
うそうそっ!
抱きつく必要はないよ。
そんなことしなくてもいいの。
6人乗っても、大丈~夫!
えっ?
だってそれぞれが
マットの縁の方に
腰掛ければいいじゃん。
短辺――つまり進行方向と
後部側にそれぞれ1人ずつ、
長辺には2人ずつ、
足を外側へ
投げ出すようにすれば
乗れるでしょ?
あっ、なるほど。全員が
背中合わせになる形で
乗ればいいんですね。
確かにそれなら
マットの面積を
有効に活用できますね。
体全部が
マットに乗る必要は
ないわけですから。
それなら周囲にも
注意が向くしね。
確かに何かが接近してきても
その状態で乗るならすぐに気付ける。
っていうか、ソニアさんったらぁ!
……ソニアさん。
それを最初に言ってください。
絶対面白がって、
今まで黙ってましたよね?
てはは……。
そういうの、
今後はやめてください。
ごめん……。
僕の本気の怒りに、
ソニアさんは素直にペコッと頭を下げた。
まったく、こういう悪戯心だけは
なんとかしてほしいなぁ。
その後、僕たちは浮遊するマットに乗り、
移動を開始することになった。
ただこの状況に唯一、カレンだけは
残念そうな顔をしていたような気がした。
次回へ続く!