先を急ごうという意見に
ソニアさんは反対だということだった。

一応、エルムも中立ではあるけれど
反対寄りの中立のような感じだ。
ただ、その理由には頷ける点がある。

どうするべきか……。
 
 

ソニア

あ、勘違いしないでね?
急ぐこと自体には
反対じゃないから。

トーヤ

え?

ルシード

おいおい、
どういうことだよ?

ソニア

要するに歩くのには
反対だって言ってんの。

エルム

走れと言うことですか?

ソニア

エルムは走りたいの?
持久力に自信があるんだ?

エルム

い、いえ……
そういう意味では……。

カレン

あっ、そういうことか!

 
 
突然、カレンはポンと手を打った。

ソニアさんの言葉の意味に
ピンときたのかな?
僕は依然としてさっぱりだけど……。
 
 

ティアナ

私も分かった!
そうよね、別に歩く必要は
ないんだもんね。

トーヤ

どういうことです?

カレン

もうっ、トーヤったら
鈍いわねぇ。

ルシード

ま、トーヤに
天然な部分があるのは
否定しないけどな。

トーヤ

ルシードっ!

 
 
ルシードったらニタニタと笑ってる。

まったく、僕をからかってッ!
ルシードこそソニアさんの言葉の意味を
理解していないクセに。
 
 

カレン

つまり歩くのではなく
魔法で空を飛んで
移動するとか、
そういうことですよね?

ティアナ

私は野良ドラゴンでも
見つけて捕まえて、
背中に乗るのかと
思ったけど。

トーヤ

あ、なるほど……。

エルム

そういうことですか……。

ルシード

おおっ!
お前ら、頭がいいな。

ソニア

……ルシードって
意外に脳筋なのね。

ルシード

なっ、なんだとッ!?

トーヤ

まぁまぁ……。

 
 
いずれにしても、
僕たち男性陣は一様に感心していた。



そっか、徒歩以外の移動手段も
ないワケじゃなかったんだね。
すっかり選択肢から外れてた。

でもティアナさんの言う
『野良ドラゴン』って、
その発想は彼女だけだよね……。
 
 

ソニア

なにもバカ正直に
歩く必要はないのよ。
楽できる時は楽しなきゃ。

エルム

では、今後はいつも
そうやって
移動しましょう。

ソニア

それはダメ。
みんなの筋力が低下して
いざという時の戦いに
支障が出るから。

ソニア

特にトーヤとエルムね。
歩くのも鍛練の
ひとつなんだから。

トーヤ

うぐ……。

エルム

そ、それは……。

 
 
図星で何も言えなくなってしまう
僕とエルム。
互いに顔を見合わせて苦笑する。

それに対してルシードだけは心なしか
得意気な顔をしているような
気がするのは思い過ごしだろうか……。
 
 

トーヤ

で、どうすんです?
ソニアさんが浮遊魔法で
運んでくれるんですか?

ティアナ

それとも私の力で
野良ドラゴンを操って
運んでもらう?

ソニア

野良ドラゴンには
乗ってみたいけど、
それで町に近付くのは
問題ありそうよね。

カレン

町を襲撃すると誤解されて
衛兵さんに攻撃されたり
出入り禁止になったり
しそうですもんね。

ティアナ

んー、そっか。残念。

 
 
すごく落胆しているティアナさん。

いやいや、
ドラゴンに乗って町へ近付いて
問題ないと思っている方が
マズイでしょう!

ドラゴンの大きさや
種類にもよるだろうけど。
 
 

ソニア

乗るのには違いないけど
それを使うのよ。

 
 
 
 
ソニアさんは
ルシードの方を指差していた。

まさかルシードに担いでもらおうって、
さすがにそれはないよね……。
 
 

ルシード

俺かっ!?
いくらなんでも
全員を担ぐのは
無理だぞっ!?

ソニア

……やっぱり脳筋ね。

ルシード

なんだとぉっ!

ソニア

ルシードが背負ってる
それを使うの。

 
 
ソニアさんは呆れながら
ルシードの背負っている荷物を指差した。

そこにあるのは、なんと……。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

第288幕 その手があったか!

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