僕は女の子に投薬する
薬の調合を終えた。

一方、女の子はソニアさんや
手助けに入ってくれたエルムによって
清潔な状態になって
着替えも済んでいる状態だ。
 
 

トーヤ

さぁ、これを飲んで。

 
 
僕は吸飲みを女の子の口に添え、
調合した薬を少しずつ飲ませた。

苦くないように味も
甘いシロップ風に調整してあるから
いくらか飲みやすいはず。


あとは栄養のあるものを食べさせて
安静にしていればきっと良くなる。
 
 

…………。

トーヤ

寝ちゃった。
症状が
落ち着いたのかな?

 
 
投薬を終えて程なく
女の子はスースーと静かな寝息を立てて
眠ったようだった。

咳も収まったし、
顔色もすごく良くなっている。
 
 

トーヤ

ふたりとも、この場は
お任せしていいですか?

ソニア

お任せって言われても
私たち医療に関して
何もできないわよ?

トーヤ

女の子の様子を
見ていてください。
少しでも違和感を覚えたら
どちらかが僕を
呼びに来てくれれば。

トーヤ

僕はカレンたちの
手助けに入ります。

ソニア

そういうことか。
分かった、任された。

エルム

お任せを!
カレンさんたちは
1階の居住スペースに
いらっしゃいます。

トーヤ

ん、ありがと。

 
 
僕は女の子をソニアさんたちに任せ、
1階へ向かった。

そしてフロアを見て回り、
カレンたちがいる部屋を見つけて
そこへ入る。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

トーヤ

そっちはどう?

カレン

母親の治療は終わったわ。
容態は落ち着いて、
今はルシードさんが
見てくれてる。

ティアナ

父親も外科治療が終わって
調薬をしているところ。

トーヤ

容態はどうなの?

カレン

危険な状態だけど
なんとかなりそう。
もともとタフな
体だったらしくて
持ちこたえたみたい。

トーヤ

昔、冒険者でも
やっていたような
体つきだよね。

 
 
よく見ると筋肉に多少の衰えはあるけど
依然として剣闘士にも
引けを取らないくらいに
隆々としていて立派だし、
古傷なんかもあちこちにある。

でもだからこそ怪我をした時に
大丈夫だと油断して傷口を放置して
ここまで悪化されちゃったのかもなぁ。
 
 

トーヤ

女の子も
快方に向かってるよ。
容態が落ち着いて
静かに眠ってる。

カレン

それは良かった。

トーヤ

今、ソニアさんとエルムに
任せてるけど、
これなら僕は女の子の方へ
戻っても大丈夫だね?

カレン

……ふーん、
やけにあの女の子に対して
優しいのね?

 
 
ジト目で僕を睨んでくるカレン。

もしかして妬いてるとかっ!?
そ、そんなんじゃないのに!
 
 

トーヤ

そ、そういうわけじゃ……。

カレン

ふふっ、なんちゃって。
うん、見ててあげて。

トーヤ

もう、こんな時に
冗談はやめてよぉ。

トーヤ

ところでさ、
何日かはこの宿に泊まって
様子を見た方がいいよね?

カレン

そうね、このまま放って
旅立つわけにも
いかないしね。

ティアナ

しばらく容態が
安定するまで
滞在しましょう。

ティアナ

世界は心配だけど
薬草師として、
患者さんを前に
見て見ぬ振りは
出来ないから。

トーヤ

ですねっ!

 
 
目の前の患者さんを助けられずに
世界が救えるもんか。
僕はそう思う。

それにきっとまだ世界の崩壊まで
時間的な猶予はあるだろうし。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

pagetop