女の子は咳き込んで
うずくまってしまった。

即座にカレンは女の子に駆け寄り、
様子を観察しながら
診察魔法で容態を看る。
 
 

カレン

っ!?

カレン

ルシードさん、
この子をベッドに
運んでもらえますか?

カレン

2階が宿みたいなので
そこへお願いします。

ルシード

あ、あぁ。分かった。

 
 
カレンの深刻そうな表情と声に
ルシードは戸惑いつつも頷いた。

そして女の子を
お嬢様抱っこで持ち上げる。


一方、僕やティアナさんは
カレンの反応を見て
容態の深刻さを瞬時に悟った。
 
 

トーヤ

エルム、お湯を沸かして。
食堂だから道具は
あるはずだから。

エルム

は、はい!

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
僕の指示を受けるとエルムは
慌てて厨房の方へ走っていった。
 
 

トーヤ

細菌による感染症――
だよね?

カレン

うん。

ティアナ

どちらかの親から
感染したんでしょうね。

ソニア

大丈夫……よね……?

 
 
心配そうに見守っているソニアさん。

そっか、この場では彼女だけが
状況を把握していないわけだもんね。
 
 

カレン

この子は
まだ初期だから
適切な治療を受ければ
心配はないだろうけど。

トーヤ

僕たちも服薬して
感染しない処置をしてから
診察しよう。

トーヤ

そのためにも女の子の
ご両親の病名を
ハッキリさせないとね。

ティアナ

ま、状況を考えると
直接接触による感染の
可能性が高いから
最悪の事態には
ならないと思うけどね。

 
 
僕らが恐れているのは
空気感染による病気。
もしそうなると村全体で
治療が必要になる。


でも今のところ、その心配は少ないかな。

罹患の時期を考えると
もし空気感染なら症状が出ている人が
もっといてもいいはずだから。
 
 

ティアナ

たぶん、父親は
傷口から細菌が
入り込んだんでしょうね。

トーヤ

外科治療と投薬が
必要ですね。

ティアナ

間に合えばいいけど。

カレン

…………。

 
 
これに関しては診てみないと
何とも言えない。
女の子の話から推測すると、
ギリギリって感じだし。

最大限に力は尽くすけど
手遅れってことも覚悟しないといけない。
 
 

ティアナ

母親は父親を
看病している時に
直接接触で感染したのか。

カレン

そうでしょうね。
いずれにしても診察魔法で
ハッキリさせましょう。

トーヤ

僕は女の子に投薬するよ。
ご両親については
カレンとティアナさんに
お任せします。

カレン

うんっ!

ティアナ

分かった。

トーヤ

ルシード、行こう!

ルシード

おうっ!

トーヤ

ソニアさんも僕たちと
一緒に来てください。

ソニア

手伝えることなら
なんでもするわ!

 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
僕は女の子を抱えたルシード、
そしてソニアさんとともに
2階にある宿の空室へ移動した。

ルシードたちがその部屋のベッドに
女の子を寝かせている間に
僕は荷物の中から
いくつかの薬を取り出す。



まずは体力を回復させる薬。
それから細菌を殺す薬。
抗体を作るための薬。
内臓を保護する薬と
毒素を中和させる薬――。



そうした様々な薬がケンカしないように
組み合わせていく。
それと患者さんが子どもだから
投薬量には細心の注意を払わないと。
 
 

ルシード

女の子を寝かせたぞ。

トーヤ

じゃ、ルシードは
カレンたちの手助けに
行ってあげて。

トーヤ

ソニアさんは
女の子の服を脱がせて
きれいな濡れタオルで
全身を清潔にしてあげて。
そのあと着替えを探して
着せてあげてほしい。

 
 
僕は薬を選別しつつ言い放った。

するとルシードとソニアさんは
返事をするとすぐに
部屋を飛び出していった。

その間にも僕は
薬の選定と調合を進めていく。



――待っててね。すぐに薬を作るから。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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