ソニアさんは貴族院の地下にあるという
隔世の門について呟いた。

それこそが
この世界を危機に陥れている元凶であり
このまま放置をすれば
それと繋がった全ての世界が滅ぶという。


女王様から聞いている消滅結界呪法や
魔法玉と似ている気がするんだけど
何か関係があるのかな?
 
 

ソニア

隔世の門は
世界と世界を繋ぐ
出入口のようなもの。

ソニア

そして
繋がっている以上、
それらの世界は
運命共同体となる。

ソニア

ヒゲのオッサンさ、
私を召喚するために
隔世の門を作っちゃった
みたいなんだよね。

トーヤ

どうやって?

ソニア

この世界における
太古の魔法技術を
応用したとか。
詳細は知らない。

タック

聞いたことがある。
数千、数万の
年月よりも前――

タック

神々がまだこの世界で
暮らしていた時代に
今とは比較にならないほど
高度な技術や魔法が
発達していたという。

 
 
その話なら僕もお父様から
聞いたことがある。

というか、
薬学書の中の記述にもたまに出てくるし、
現代の技術では説明の付かない
薬の製法などについては
その時代から
伝わっているものだとされている。
 
 

デリン

眉唾じゃなかったのか、
その話?

クレア

一応、神話には
それらしい一節が
あるわね。

ビセット

その話なら
私も聞いたことが
ありますねぇ。

アポロ

俺とユリアも
それなら知ってるぞ。

ユリア

魔法の師匠が
何度か話してくれたわね。

カレン

でも信じがたい
話よね……。

タック

オイラだって
そう思っていたさ。
今の瞬間までな。

クレア

私は100%
信じるわけには
いかないけど。

 
 
みんなそれぞれ意見はあるだろうなぁ。
その話、
僕もあまり信じられない気はするけど
完全に否定も出来ないんだよね。

薬学の知識や技術に関しては
僕らが知らない何かを基にしている
ものがあるというのは確かだし。
 
 

ソニア

どうでもいいじゃん。
本当か嘘かなんて。
大事なのはその先。
隔世の門を完成させた
オッサンたちは
気付いちゃったみたい。

ソニア

それぞれの世界の存在が
意外に儚く脆いという
真実に。

タック

どういうことだ?

ソニア

ちょっとバランスを
崩してやれば
容易に崩壊する。
そういうことよ。

トーヤ

調薬する時に使う
天秤みたいなものですか?
片方に過度に
重いものを載せると
ひっくり返るみたいな。

ソニア

そういうこと。
各世界には属性があって
その力に影響を与えれば
世界は崩壊する。

ソニア

それが隔世の門を通じて
繋がっている世界に
波及していって、
全部おしまい。

アレス

そんな……。

 
 
ソニアさん、
まるで他人事みたいな
態度と言い方だなぁ。

僕たちの世界だけじゃなくて、
ソニアさんの生まれ育った世界だって
滅びちゃうかもしれないのに。
 
 

ソニア

ヒゲのオッサンの一味、
私を召喚してから
隔世の門や
その向こうの世界を
調べているうちに
それを知ったみたいね。

ソニア

ヒゲのオッサン、
各世界に手下を派遣して
今も色々と計画が
進んでるんじゃない?

タック

なぜ分かる?

ソニア

勘っ♪
っていうか、
キミたちは心当たりが
何もないの?

タック

いや、オイラたちは
薄々感づいている。
だから調査しに来た。

 
 
タックさんの言葉を聞くと、
ソニアさんは一瞬、
目を大きく見開いて息を呑んだ。

そのあと、興味深げな顔をして
タックさんに迫る。
 
 

ソニア

へぇ、そういうこと、
私に話しちゃっていいの?

タック

オイラたちの掴んでいる
情報と
お前の話はほぼ一致する。
嘘とは思えない。

タック

だから詳細を
知っているなら
教えてくれないか?
世界を救うためにも。

タック

今は少しでも
詳細な情報が欲しい。
手遅れになる前に。

ソニア

どうしよっかな?
そんなに真剣に頼まれると
教えたくなくなるよね。

タック

ふざけている場合か!

 
 
僕たちの焦りをよそに、
ケタケタと笑うソニアさん。
全然危機感がない。

困ったなぁ……。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

pagetop