地上に戻った僕たちは、
貴族院の関係各所を
探索していたアレスくんたちと合流した。
どうやら彼らも何かを発見したみたい。
地上に戻った僕たちは、
貴族院の関係各所を
探索していたアレスくんたちと合流した。
どうやら彼らも何かを発見したみたい。
まずは僕たちの方から
報告するね。
僕はグランの屋敷の地下での出来事や
ソニアさんを発見したことを話した。
ソニアさんは相変わらずの調子で
自己紹介をして、
やっぱりアレスくんたちも
度肝を抜かれていたみたいだったけど。
――とりあえず、
僕たちの方の報告は
こんな感じかな。
じゃ、次は僕たちの
探索の結果を報告するね。
それはオイラが話す。
いいよな、アレス？
あ、うん。
じゃ、お願いするよ。
まずいくつもの隠し部屋に
コツコツ溜め込んでたと
思われる金銀や宝石類、
魔術の儀式で使う稀少品、
そういうのがあった。
あとは王都侵攻計画の
書類やら物騒な魔術の
古文書やら。
それらの処遇は
ミューリエと相談してから
ってことになるだろうな。
そうですね。
宝石などを
くすねてないだろうな？
ンなことするか。
する必要性も動機も
ないっての。
まー、そんな感じだ。
詳細については
王都へ戻ってから
ミューリエ同席の会議で
報告するつもりだ。
なるほど、貴族院の方の探索は
そんな感じだったのか。
モンスターとの戦闘がなかったのなら
僕はそっちの調査の方が良かったなぁ。
あくまでも結果論だけどね。
ねぇ、タックだっけ？
聞きたいことが
あるんだけど？
ん？ なんだ？
貴族院の地下って
調査した？
ヒゲのオッサンの屋敷に
あったのと同じような
ダンジョンが
あったと思うんだけど？
規模はオッサンの
屋敷のと比べて数倍は
大きいはずなんだけど。
っ!?
地下ダンジョン？
タックさんは首を捻っていた。
その反応を見る限り、
まだ見つけていないのかな？
それともソニアさんの勘違いとか
単なる妄想とか、冗談とか、
そういうことなのかな？
そこには牢獄や拷問施設、
実験施設などがあって
奴隷が大量に強制労働を
させられてたらしいけど？
不老不死の薬も
そこで作られたんだって。
『原料』になった魔族も
そこにいた奴隷が
大半だったらしいし。
なんでお前が
そんなことを
知ってるんだ？
あ、私がオッサンの意に
沿わないからって、
始末しに来た魔族がいてさ。
そいつに話を聴いたのよ。
名前はポックルとか
言ってたっけ。
ポックル？
貴族院の相談役だ。
グランのブレーンの
ひとりだな。
魔術の知識と能力だけなら
エミット以上だと聞く。
エミット!?
その名を聞くと僕は
未だに反射的に恐怖で震えてしまう。
鳥肌も立ってしまったし。
エミットはノーサスの四天王の筆頭で
僕がアレスくんと初めて出会った時に
襲ってきた相手だ。
その時、アレスくんたちによって倒され、
さらにスアラの禁呪によって
魂を吸収され、結果として今は
肉体も魂も消滅してしまっているけれど。
実力的にはグランやダイス、
スアラなんかの方が上だと思う。
でも精神にすり込まれた恐怖としては
僕にとっては彼女の方が大きい。
ソニア、貴様
ポックルに襲撃されて
よく生き残れたな？
大して強くなかったよ？
狡猾ではあったけど。
で、身をもって実力差を
見せつけてやったら
命乞いをしてきたんだ。
ま、私の大事なお肌に
傷を付けたヤツを
絶対に許すわけが
ないけどねー♪
死刑確定だよねー♪
楽しげに話すソニアさん。
でもだからこそ話の内容とのギャップが
強く感じられて、
僕の背筋は寒くなる。
表面的には明るくて快活だけど、
その本質には非情さというか、
興味本位で虫を殺す子どものような
無邪気さというか、
そういう計り知れないものを感じる。
まるで頭のネジが何本か
外れちゃっているみたいな……。
お仕置きをする前にさ、
詳細を聞き出したんだよ。
自白させる魔法を
使ってね。
それを聞いて
ヒゲのオッサンとは
考え方が根本的に
合わないと確信したかな。
それで殺っちゃおうと
本格的に
抵抗しようとしたら
封じ込められちゃった。
…………。
その場にいた全員の表情が曇った。
特にデリンさんやクレアさん、
タックさんなんかは
警戒の色が一段と強まっている。
次回へ続く！
