氷の中に封印されていた女の子は
ソニアさんという名前らしかった。

気さくな感じで、僕たちに対して
敵意がないのはいいんだけど
それはそれで問題になりそうな
気配が……。
 
 

ソニア

で、あなたの名前は?

カレン

カレンよ!

ソニア

よし、覚えた!
で、そっちの少年は?

エルム

エルムです。
よろしくお願い
いたします。

ソニア

へぇ、エルムは
礼儀正しいのね。
こっちへいらっしゃい。
ご褒美に
頭ナデナデしてあげる。

エルム

遠慮します。

ソニア

つれないなぁ。
ま、いいや。
じゃ、そっちのカップル。
ふたりの名前は?

デリン

あ゛っ!?

サララ

そ、そんな
カップルだなんて……。

 
 
デリンさんは額に青筋が浮かべ
猛禽類のような眼差しでソニアさんを
睨み付けていた。

それに対してサララは満面の笑みで
嬉しさが爆発している。


反応が対照的だなぁ……。
 
 

デリン

俺たちは
主従の関係に過ぎん!
コイツは俺の使い魔だ!
それ以上でも以下でもない!

ソニア

またまたぁ♪
ホントは気があるんでしょ?
ムキになってるところが
あーやしぃー♪

デリン

……殺すっ!

 
 
噛みしめた奥歯と殺意に満ちた瞳。
デリンさんは剣の束に手をかけ、
今にも斬りかからんばかりの空気だった。



――まずい、この感じは本気だ!

僕は慌ててデリンさんの正面から
抱きついてそれを止める。
 
 

トーヤ

デ、デリンさん!
落ち着いてっ!

デリン

トーヤ、どけっ!
そいつ殺せないだろうッ!!

トーヤ

殺しちゃダメですよっ!

デリン

そいつは魔女だ!
災いの元だ!

トーヤ

アレスくんや女王様に
叱られても
いいんですかッ?

デリン

っ!?

デリン

……う……ぐ……。

 
 
僕の言葉を聞いたデリンさんは
少しだけ冷静になってくれたのか、
既の所で踏み留まった。

ただ、その表情は
苦虫を噛み潰したようで、
腸も煮えくり返っているような
感じが続いている。
 
 

トーヤ

え、えっと、ソニアさん。
この人はデリンさんと
言います。そして――

サララ

サララですっ!

ソニア

ツンデレのデリンと
無垢なサララね。
さてさて、お待たせっ!
そっちの紳士!

ロンメル

我のことか?

ソニア

名前は?

ロンメル

カエルぴょこぴょこ
みぴょこぴょこ。
あわせてぴょこぴょこ
むぴょこぴょこ――だ。

トーヤ

ロ、ロンメル……。

 
 
なぜかロンメルは無茶苦茶なことを
ソニアさんに吹き込んだ。
しかも真面目な顔をしていて
本当なのか冗談なのかの判断がつかない。


マトモに相手するのを諦めたのかな?
それとも何か考えがあって
やっているのかな?

あとで確認しておこう……。
 
 

ロンメル

ソニアよ、
我は長い名前だから
忘れんように
復唱してみてくれ。

ソニア

却下。
舌を噛みそうだから嫌。

ソニア

あだ名にしましょう。
そうねぇ、カエルとか
ゲロゲーロでどう?

ソニア

そうだ、あんた見た目が
医者っぽいから
ドクターゲロゲーロ
なんてどう?

ロンメル

我はヴァンパイアだ。
医者ならそこにいる
カレンがそうだ。
トーヤも薬草師だから
広義では医者だな。

 
 
それを聞いたソニアさんは目を丸くし、
瞳をキラキラさせながら僕とカレンを
交互に見やる。
 
 

ソニア

すごいじゃん、トーヤ。
それにカレン。

カレン

こっち見るな!

ソニア

嫌われちったっ♪

デリン

反省している様子は
全然ないな……。

ソニア

とりあえず、ゲロちゃん。
よろしくね。

ロンメル

好きに呼べ。
というか、最終的に
あだ名はゲロちゃんに
落ち着いたのだな?

ソニア

せやでー☆

トーヤ

で、では
探索を再開しましょう。
ソニアさんも一緒に
来てくれますね?

ソニア

もちろん。
じゃ、さっさと行こっ♪

 
 
こうして探索にソニアさんが加わった。




その後、僕たちは地下7階へ戻り、
奥の通路やそちらから続く
別の地下8階のフロアなどの探索をする。

そして結果的にあちらには何もなくて、
今回の探索の成果としては
ソニアさんを見つけたという
ことだけだった……。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

第265幕 軽いノリで行こう

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