氷の中に封印されていた女の子は
ソニアさんという名前らしかった。
気さくな感じで、僕たちに対して
敵意がないのはいいんだけど
それはそれで問題になりそうな
気配が……。
氷の中に封印されていた女の子は
ソニアさんという名前らしかった。
気さくな感じで、僕たちに対して
敵意がないのはいいんだけど
それはそれで問題になりそうな
気配が……。
で、あなたの名前は?
カレンよ!
よし、覚えた!
で、そっちの少年は?
エルムです。
よろしくお願い
いたします。
へぇ、エルムは
礼儀正しいのね。
こっちへいらっしゃい。
ご褒美に
頭ナデナデしてあげる。
遠慮します。
つれないなぁ。
ま、いいや。
じゃ、そっちのカップル。
ふたりの名前は?
あ゛っ!?
そ、そんな
カップルだなんて……。
デリンさんは額に青筋が浮かべ
猛禽類のような眼差しでソニアさんを
睨み付けていた。
それに対してサララは満面の笑みで
嬉しさが爆発している。
反応が対照的だなぁ……。
俺たちは
主従の関係に過ぎん!
コイツは俺の使い魔だ!
それ以上でも以下でもない!
またまたぁ♪
ホントは気があるんでしょ?
ムキになってるところが
あーやしぃー♪
……殺すっ!
噛みしめた奥歯と殺意に満ちた瞳。
デリンさんは剣の束に手をかけ、
今にも斬りかからんばかりの空気だった。
――まずい、この感じは本気だ!
僕は慌ててデリンさんの正面から
抱きついてそれを止める。
デ、デリンさん!
落ち着いてっ!
トーヤ、どけっ!
そいつ殺せないだろうッ!!
殺しちゃダメですよっ!
そいつは魔女だ!
災いの元だ!
アレスくんや女王様に
叱られても
いいんですかッ?
っ!?
……う……ぐ……。
僕の言葉を聞いたデリンさんは
少しだけ冷静になってくれたのか、
既の所で踏み留まった。
ただ、その表情は
苦虫を噛み潰したようで、
腸も煮えくり返っているような
感じが続いている。
え、えっと、ソニアさん。
この人はデリンさんと
言います。そして――
サララですっ!
ツンデレのデリンと
無垢なサララね。
さてさて、お待たせっ!
そっちの紳士!
我のことか?
名前は?
カエルぴょこぴょこ
みぴょこぴょこ。
あわせてぴょこぴょこ
むぴょこぴょこ――だ。
ロ、ロンメル……。
なぜかロンメルは無茶苦茶なことを
ソニアさんに吹き込んだ。
しかも真面目な顔をしていて
本当なのか冗談なのかの判断がつかない。
マトモに相手するのを諦めたのかな?
それとも何か考えがあって
やっているのかな?
あとで確認しておこう……。
ソニアよ、
我は長い名前だから
忘れんように
復唱してみてくれ。
却下。
舌を噛みそうだから嫌。
あだ名にしましょう。
そうねぇ、カエルとか
ゲロゲーロでどう?
そうだ、あんた見た目が
医者っぽいから
ドクターゲロゲーロ
なんてどう?
我はヴァンパイアだ。
医者ならそこにいる
カレンがそうだ。
トーヤも薬草師だから
広義では医者だな。
それを聞いたソニアさんは目を丸くし、
瞳をキラキラさせながら僕とカレンを
交互に見やる。
すごいじゃん、トーヤ。
それにカレン。
こっち見るな!
嫌われちったっ♪
反省している様子は
全然ないな……。
とりあえず、ゲロちゃん。
よろしくね。
好きに呼べ。
というか、最終的に
あだ名はゲロちゃんに
落ち着いたのだな?
せやでー☆
で、では
探索を再開しましょう。
ソニアさんも一緒に
来てくれますね?
もちろん。
じゃ、さっさと行こっ♪
こうして探索にソニアさんが加わった。
その後、僕たちは地下7階へ戻り、
奥の通路やそちらから続く
別の地下8階のフロアなどの探索をする。
そして結果的にあちらには何もなくて、
今回の探索の成果としては
ソニアさんを見つけたという
ことだけだった……。
次回へ続く!