地下8階で発見したのは、
氷結封印魔法で封じ込められていた
女の子だった。


その氷に僕が何気なく触れた瞬間、
大きなヒビが入って封印が解け始める。

氷は昇華しているかのように
どんどん気体となって散っていく。
 
 
 

 
 
 

トーヤ

わっ! わわっ!

謎の女の子

…………。

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
氷がなくなっていき、
支えを失った彼女はバランスを崩して
こちらへ倒れ込んでくる。

それを僕は反射的に受け止めた。



今まで氷の中にいたとは
思えないくらいに体が温かい。
服も全く濡れていなくて乾燥している。

そして伝わってくる小さな呼吸と心音。
きちんと生体反応を示している。
 
 

謎の女の子

ん……あ……。

トーヤ

っ!? 意識を
取り戻したみたい。

謎の女の子

私は今まで何を……。

謎の女の子

っ? キミは誰?

トーヤ

僕はトーヤ。
話せば長くなるのですが、
ここを探索していたら
氷付けになっている
あなたを見つけて。

謎の女の子

ふむふむ……。

トーヤ

それで氷に触れたら
その氷が消えて
君が倒れかかってきたので
反射的に受け止めた
というわけです。

謎の女の子

へぇ……。

トーヤ

詳細については後ほど
時間を採ってゆっくり
お話ししますよ。

謎の女の子

りょーかーい!

トーヤ

…………。

 
 
真面目に捉えてくれているのかな?

明るくてハキハキしていてパワフルで、
根は悪くなさそうな人ではあるけど。


ともかく圧倒されてしまって
戸惑うのは確かだ。
 
 

謎の女の子

あ……そっか……。
なんとなーく
思い出してきたかも。

謎の女の子

私、ヒゲのおっさんに
この世界に召喚されて、
言うことを聞かずに
抵抗したら、変な魔法で
凍らされたんだった。

トーヤ

そうでしたか……。

謎の女の子

だってあのおっさん、
邪悪の塊だったんだもん。
言うことなんか
聞けないっての。

謎の女の子

でもキミは心が純粋ね。
邪な気配がゼロだもん。
安心できる相手かも。

トーヤ

分かるんですか?

謎の女の子

まぁね。
本能的にそういうことが
分かる能力があるみたい。

 
 
やっぱりこの人には
何か特別な力があるようだ。

いずれにしても
話が出来る相手で良かった。
もし有無を言わさず戦闘になったら
嫌だったし。
 
 

謎の女の子

うん、決めた。
私、しばらくあなたたちに
お世話になることにした。

謎の女の子

あ、もちろんタダって
わけじゃないわよ?
私に出来ることなら
なるべく聞いてあげるし。

ソニア

私はソニア。
よろしくね、トーヤ。

 
 
 
 
 

 
 
 

 
 
 
 
 

トーヤ

っ?

 
 
不意に頬に伝わる柔らかな感触。
揺れた髪が軽く顔をなぞり、
なんだか女の子のいい匂いがする。




も、もしかして僕はキスされた!?

それを意識した途端、
僕の心拍数は一気に跳ね上がり、
顔も熱くなってくる。


一方、すぐ近くでは
ピリピリとした空気と
地獄の業火のような怒りを
吹き上がらせているカレンが……。

チラリと視線を向けると、
目は三角、頬はピクピク、
全身は怒りに満ちて小刻みに震えていた。

強く握られた両拳が
いつこちらに飛んできてもおかしくない。
死の恐怖さえを感じるほどだ。
 
 

カレン

ななななななっ!

カレン

何してんのよっ!
トーヤは私の
彼氏なんだからねっ!

ソニア

はぁっ? この程度、
単なる挨拶じゃない。
どんだけ独占欲が強いの?
ヤンデレってヤツ?

ソニア

まさに嫉妬の鬼ね。
トーヤ、気をつけてね?
不意にナイフで背中から
グサッて
されないようにね?

カレン

トーヤも鼻の下を
伸ばしてんじゃないのっ!

トーヤ

ご、ごめん……。

 
 
即座にカレンは駆け寄ってきて
強引に僕とソニアさんの間に入って
僕たちを引きはがした。

そして敵意に満ちた目でソニアさんを
睨み付けている。

でもソニアさんは涼しい顔をしていて
全く意に介していない感じだ。



なんだかパーティ内が
ゴタゴタしそうな予感がするなぁ……。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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