僕たちは地下7階にあった
隠し階段を下り、
地下8階の中の探索を始めた。

このフロアにはエネミーの姿がなく、
複雑に入り組んでいるわけでもない。
ただひたすらに通路が続いているだけ。

そして突き当たりには部屋があることが
地図魔法によって判明している。


いかにも何か重大な秘密が
隠されている感じだ。
やっぱりこちらが
正解のルートだったみたい。
 
 

デリン

トーヤ、この先は特に
気を引き締めて行くぞ?
このフロアは
特別な何かを感じる。

トーヤ

はいっ!

デリン

ほかの連中も
すぐに対処できる
心構えだけはしておけ。

カレン

承知です。

エルム

分かりました。

サララ

はいですっ!

ロンメル

うむ。

 
 
僕たちの間に流れる空気が
一段と強く張り詰めた。

電撃を受けた時のような
ピリピリとした刺激と
痛みのようなものを肌に感じる。

足もなんとなく重い気がする。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
やがて僕たちは通路の突き当たりにある
部屋へと到達した。

そこへ入ると部屋の中には何も物がなく、
ガランとしていて寂しい感じだった。






――ただし、中央部を除いては。

その床には何かの魔方陣が描かれていて
中央部には氷漬けにされた
女の子の姿がある。

見た目の年齢は
僕よりも少し上くらいかな?
 
 
 
 
 

謎の女の子

…………。

トーヤ

なん……だ……
これ……?

デリン

氷結封印魔法だな。
魔法の氷の力によって
対象の時間さえも凍らせ
封印してしまうという
魔法だ。

デリン

主に術者が自分よりも
強い敵対者に対して
行使する魔法だ。
引き分けに
持ち込むためにな。

デリン

この魔法に関しては
術者と対象の実力差は
無視される。
魔王とスライム程度の
実力差があったとしても
関係ない。

トーヤ

とっておきの奥の手
ってわけですね。

デリン

実際には
魔法を行使する前に
手を打たれて失敗する
可能性も高いがな。

エルム

でもこの魔法に関する
知識がなければ
有効ですよね?

デリン

そうだな。
つまりそういうことだ。
おそらくエルムの
想像している通りで
間違いないだろうな。

 
 
エルムの表情が途端に曇った。

ううん、エルムだけじゃない。
カレンもサララも同じように深刻そうな
顔になる。
デリンさんやロンメルはもちろんだけど。



もしかして何も気付いていないのって
僕だけなのかな?
 
 

トーヤ

エルム、どういうこと?

エルム

つまりコイツこそ、
グランが異世界から
召喚したヤツだって
ことですよ。

トーヤ

えぇっ!?

ロンメル

うむ、封印されている
にもかかわらず
コイツからは
強大な力を感じる。

サララ

ですです。

カレン

私、鳥肌が立って
しかも吐きそう。

トーヤ

カレン、大丈夫?
すっきりする薬を
用意しようか?

カレン

ありがと。
でもこれくらいなら
耐えられる。
どうしても無理になったら
その時はお願いするね。

トーヤ

うん。

 
 
それにしても、僕は何も感じない。

なにより見た感じ、
そんな恐ろしい存在のようには
見えないんだけどなぁ。
 
 

ロンメル

手に余ったのか、
あるいは別の何かの
理由があったのか、
召喚して間もない時期に
氷漬けの封印をされた
のだろうな。

カレン

それで今に至るという
わけね……。

カレン

もし異世界の者なら
封印魔法の知識なんて
あるはずないですから
ほぼ確実に封印に
成功しますよね。

デリン

どうする?
一度王都へ戻って
ほかの者たちと
処遇を相談するか?

トーヤ

うーん……。

 
 
僕は考え込みながら彼女に近付き、
何気なくその氷に触れた。


すると次の瞬間、
氷が眩く輝いて大きなヒビが入る。

その時点でようやく僕にも
彼女から吹き出してくる
猛烈な魔力を感じ、目の当たりにする。
 
 

トーヤ

えっ? えぇっ!?
もしかして触れちゃ
いけなかったのっ?

デリン

そうではないっ!
俺にもワケが分からん!

デリン

なんだこれは!?
氷結封印魔法が
こんなに簡単に
破れるはずがないのだがっ?

 
 
デリンさんをはじめ、
みんなも大きく動揺している。
どうすればいいのか判断がつかない。


まさに青天の霹靂!

これから僕たちは
どうなってしまうんだろう?
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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