デリンやロンメル、カレンの活躍により
広い部屋の中にいたモンスターたちは
あっという間に殲滅された。

彼らの前に立って無事だった者は皆無。
待っているのは死のみ。

仲間にいると心強いけど、
もし敵に回っていたらと思うと
恐ろしいなぁ。




……あ、でもロンメルとは戦ったことが
あったんだっけ。

確かにあの時は僕も死を覚悟したもんな。
 
 

デリン

ふむ、トーヤの
予想通りだったな。

トーヤ

何か見つけたんですか?

デリン

あぁ。地図を見てみろ。

 
 
デリンさんに言われた通り、
僕は地図へと視線を向けた。

するとさっきまで
モンスターの集団がいた地点に
さらなる地下へと続く
隠し階段が表示されている。
 
 

トーヤ

そっか、この階段、
無数のモンスターの表示が
邪魔していたせいで
今まで
見えなかったんですね。

デリン

そういうことだ。
侵入者が地図魔法を
使うことも想定して
いたのであろうな。

デリン

実際の隠し階段も
モンスターの存在によって
確認しづらくなっていた
わけだしな。

ロンメル

では、この隠し階段を
下りてみるか。

 
 
 

 
 
 
 
 
ロンメルは探知魔法を使って隠し階段の
正確な位置を割り出すと、
その位置を調べた。

すると床の石が
鈍い音を立ててスライドし、
地下へと続く階段が現れる。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
そこへゆっくりと進むと、
中の空気は今までのフロアと比べて
淀んでいてカビ臭さが強かった。

踏んだ場所も
軽く砂埃が舞うところから察するに
結構長い時間
誰も立ち入っていないんだろうな。
 
 

ロンメル

はてさてこの先、
鬼が出るか仏が出るか。

デリン

いずれにしても
何かがあるのは
間違いないだろうな。

トーヤ

カレン、
手を繋ごっか?

カレン

えぇっ!?

カレン

……うん。

 
 
僕は右手でカレンの左手を握った。

柔らかくて温かくて心地良い感触。
カレンの顔を見ると、
頬を赤くしながら嬉しそうにしている。

やっぱりカレンは可愛いな。
 
 

エルム

あの、兄ちゃん。
僕も手を繋いで
いいですか?

トーヤ

いいよ。
じゃ、空いている左手ね。

エルム

はいっ!

 
 
僕はエルムの右手を左手で握った。

小さくて温かくて、
強く握ると壊れてしまいそうな儚さ。
守ってあげたくなるような愛しさが
こみ上げてくるなぁ。
 
 

サララ

みんなずるいですよぉ。
それなら私は
ご主人様と。

デリン

断る。
もし不意に敵が
襲ってきたら
対処が遅れるだろうが。

サララ

はうぅ……。

サララ

じゃ、仕方ないので
トーヤくんの
服の背中の部分を
掴むことにします。

 
 
サララは僕の背中側に回り、
服を掴んでくる。

これで正面以外は
囲まれてしまう形に
なったわけだけど……。


その様子をチラリと見たデリンさんは
思わずニヤッと口元を緩める。
 
 

デリン

大人気だな、トーヤ。
吟遊詩人か役者にでも
転職したらどうだ?

トーヤ

そういう人気とは
違うような気が
するんですけど……。

トーヤ

そもそも僕は
薬草師以外の職に就く
つもりはありませんよ。

デリン

ま、そうだな。
吟遊詩人も役者も
似合わんもんな。

 
 
そう言うとデリンさんはお腹を抱え、
必死に笑いを噛み殺していた。

ひどいなぁ、デリンさん。
自分で言っておいて……。
 
 

トーヤ

デリンさんに
からかわれたって
アレスくんに
泣きつこうかな。

トーヤ

アレスくん、
デリンさんのことを
どう思うかな?
落胆するかもな。

デリン

ちょ、ちょっと待て!
トーヤ、ずるいぞ!
アレスのことを
引き合いに出すなんて!

 
 
デリンさん、焦ってる。
アレスくんのこととなると
さすがのデリンさんも弱いんだよね。

ま、僕もひとのことは言えないけどさ。
 
 

トーヤ

冗談ですよ。
単に僕をからかった
仕返しです。

トーヤ

僕の大好きな
デリンさんが
困るようなこと、
本当にするわけないじゃ
ないですか。

デリン

……っ!?

デリン

そ、そうか……。

ロンメル

お前たち全員、
揃って仲がいいな。
魔族らしくないぞ?

デリン

うるさい!
ヴァンパイアのクセに
生意気だぞ!

ロンメル

それもこれも全て
勇者の影響か。
アレス、ますます
興味深い男よ。

ロンメル

色々な意味でな……。

トーヤ

…………。

 
 
つい最近もロンメルはアレスくんのこと、
言及していたよね。
危険だとか暴走したら世界が滅ぶとか。



そういえばロンメルは
数百年生きているから
歴代の勇者様たちを知っているのかもね。

いつも世界の危機に
直面していたわけじゃないから、
その中で目立った活躍をした勇者様は
限られているだろうけど。


それをふまえた上で
アレスくんから特別な何かを
感じ取っているのかもなぁ……。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

第262幕 ツンデレなデリンさん

facebook twitter
pagetop