僕は地図を眺めながら考えていた。
違和感の正体を探るために。

きっとこの階には何か秘密がある。
 
 

カレン

どうしたの、トーヤ。
難しい顔をして
考え込んじゃって。

サララ

早く進みましょう、
トーヤくん。

トーヤ

あ、うん。
もう少しだけ待って。
何か掴めそうなんだ。

エルム

あ、はい……。

 
 
どうしてこんな構造なのか?

この構造ならこちらの通路から
奥の通路へ進むのは容易だ。




――いや、むしろこの構造なら
その行動を取るのが自然だ。

わざわざ危険を冒して広い部屋の中で
長居なんかしない。
だってその間に敵の攻撃を受けて
やられてしまう危険性が高いから。

誰だってそう考える。



…………。
 
 
 

トーヤ

っ!?

 
 
誰だってそう考える!

そっか、みんながそう結論づけるような
構造だってことなんだ!
 
 

トーヤ

つまりその逆が
正解ってことかッ!

 
 
この地下迷宮を設計した者にとって、
侵入者にこの広い部屋に長居されるのは
困るってことなんじゃないか!?

だから部屋を通過しやすくしているんだ。



むしろトラップが仕掛けられているのは
この奥の通路かその下の階。
あるいはそちらを進むのは
ハズレのルート。

だとしたらこの広い部屋には、
何か重大な秘密が隠されている。
そうに違いないッ!!!
 
 

トーヤ

みんな、
聞いてほしいことが
あるんだけど。

 
 
僕は自分の考えをみんなに伝えた。

異論が出るかもしれないということを
承知の上で。
 
 

トーヤ

――ということなんだ。

デリン

ふむ、なるほどな。
そう考えると、
確かにエネミーが
不自然に集まっている
地点が怪しく見えるな。

カレン

ありえますね。
何かを隠しているのかも。

ロンメル

赤い点がたくさん
重なっているせいで
その場所にある何かが
分かりにくいしな。

サララ

さすがトーヤくん!

デリン

確かめてみる価値は
ありそうだ。

カレン

幸い、
今の私たちの戦力なら
エネミーを
殲滅させられる。
やってみましょう。

ロンメル

何もないならないで、
敵を一掃したあとに
奥の通路へ
進めばいいだけだからな。

エルム

戦うなら
挟撃を防ぐために
壁を背にして戦う方が
いいかもしれません。

ロンメル

前衛は我とデリン、
カレンが良かろう。

トーヤ

僕は後衛で回復と
フォーチュンによる
遠隔攻撃を担当するよ。

エルム

では、僕は兄ちゃんの
補助ということで。

サララ

私は真ん中で
攻撃魔法を試します。
下手な鉄砲も
数を撃てば
当たりますので!

デリン

よし、それで行こう。

 
 
こうして僕たちの方針は決まった。

その後、
何回かの小さな戦闘を繰り返して
その都度エネミーを排除しながら
広い部屋へ向かって通路を進んでいった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
やがて僕たちは広い部屋へと到達する。

確かにそこには様々なエネミーが
彷徨いているけど、
まるで僕たちに
気付いていないかのように
ほとんど近付いてこない。


近付いてきたとしても単発で、
瞬時にデリンさんかロンメルが
倒してしまう。
 
 

デリン

やはりな。
モンスターや自動人形は
積極的にこちらには
攻めてこない。

トーヤ

元々いる位置から
ほとんど動きませんね。

ロンメル

ククク、この階の秘密に
気付いていなければ、
これ幸いと奥の通路へ
さっさと移動
しているだろうな。

デリン

では、さっさと
敵を一掃するか。

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
デリンさんは剣を抜くと、
モンスターたちの集団に
向かっていって斬りかかった。

続いてロンメルも
闇属性の魔法を唱え始める。
 
 

ロンメル

我が闇の炎に焼かれ、
灰となるがいい。

 
 
 

 
 
黒い炎がモンスターたちを焼き尽くし、
あちこちから断末魔の声が上がった。

辺りには焦げ臭ささと
黄泉の臭いが充満し
直撃や致命傷を
辛うじて避けられた個体も
恐怖と怯えの色に染まる。

さらにそこへ追い打ちをかけるように
カレンが紅蓮の炎の魔法を炸裂させる。
 
 

カレン

やぁああああぁっ!

 
 
 

 
 
 
 
 
カレンの攻撃により、
すでに瀕死の重傷となっていた個体は
トドメを刺された。

どうやら僕のフォーチュンや
サララの攻撃魔法の出番はなさそうだ。

もちろん、エルムの補助も。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

第261幕 虎穴に入らずんば 虎児を得ず

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