僕たちはデリンさんの地図魔法に従って
地下迷宮内を進んでいった。

怪しい場所は一つひとつ確認していって
漏れがないようにしていく。
見落としがあったらいけないからね。


そしてひとつのフロアを探索し終え、
特に目立ったものがないので下の階へ。
それを繰り返していき、
ついに僕たちは地下7階へと到達した。
 
 

ロンメル

ふむ、この階の構造は
比較的単純だな。

カレン

道は複雑に
入り組んでますけど
分かれ道はあまり
ないですもんね。

エルム

実質的には
ほぼ一本道みたいな
ものですね。

サララ

探索が楽ですねぇ。

トーヤ

でもこの階は赤い点――
つまりエネミーが
異様に多いよ。

デリン

一本道ということは
どうしても戦闘は
避けられんか……。
しかも連戦になる。

カレン

だからこうした
構造なのかも
しれないわね。

エルム

場合によっては
挟み撃ちに遭うことも
考えられます。

ロンメル

案ずることもあるまい。
不死である我にとって
連戦や長期戦は
得意とするところ。

ロンメル

しかも狭い通路だ。
少数の我らでも
多数の敵を各個撃破
することが出来る。

トーヤ

確かに数的な不利は
少ないかもね。

 
 
こうした場所では
上下左右から襲われる心配がないから
正面と背後だけ注意すればいい。

つまり個と個の
ぶつかり合いになるわけで、
敵が大量にいても
数の少ない僕たちが
大きな不利になる可能性は
あまりないということだ。


逆に言えば敵の戦闘力が高ければ
危険だとも言えるわけだけど。




ま、不死で長期戦や連戦に強いロンメル、
魔王の元・四天王で実力者のデリンさん、
このふたりよりも強い敵は
そうそういないだろうから
大丈夫だとは思う。
 
 

トーヤ

ただ、
ここにある広い部屋を
通過する時は
注意が必要ですね。

 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
僕は地図上に示されている部屋を
指差した。

このフロアには
闘技場10個分くらいの規模の
異様に広い部屋がひとつあって、
そこではエネミーがウロウロしている。


しかも部屋の中の場所によっては
エネミーが集団になって
固まっている地点もある。
 
 

デリン

その部屋では長居せず
さっさと奥の通路へ
抜けてしまえばいい。

サララ

ですですっ!
広い部屋に出たあとは
こちらの通路と
この階の奥へ続く通路の
最短距離を進めば
いいんですよぉ。

カレン

敵に囲まれる前に
奥の通路へ出ちゃえば
いいのよね。

トーヤ

…………。

 
 
みんなの言う通りだ。
でもだからこそ僕はなんか腑に落ちない。

だってこの階の構造が
合理的じゃないんだもん……。




侵入者の進行を阻害するなら、
今いる通路・広い部屋・
奥へと続く通路の配置がおかしい。


これだけのエネミーがいて
その数を有効に活用するとしたら、
広い部屋を中心として
こちらの通路と奥へ続く通路の位置は
最大限に離しておいた方が最適だもん。


つまり通路と通路は
長方形をしている広い部屋の
対角の位置に設置するのが合理的だ。


そうした配置なら
侵入者は広い部屋の通過に時間がかかる。
その間に挟み撃ちにしたり
集団で襲いかからせたり出来る。



でも現実には通路と通路が
比較的近い位置に設置されていて
部屋を通過するのは比較的容易だ。

つまりこの位置関係では
広い部屋と大量のエネミーを
活かしきれていない。


僕だったらこんな構造のフロアを
設計したりしない。
 
 

トーヤ

これには何かある。

 
 
僕はじっくりと地図を眺めて考え込んだ。


設計者はなぜこの階を
こんな構造にしたのだろうか、と。

その真意は何なのだろうか、と……。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

第260幕 モンスターハウス

facebook twitter
pagetop