ロンメルの使った探知魔法に
反応があった。
どうやら通路の途中に飾られている
風景画に何かが隠されているらしい。

その該当の場所が光っている。
 
 

 
 
 

トーヤ

ロンメル、慎重にね。
トラップが仕掛けられて
いるかもしれないから。

ロンメル

ほぅ、トーヤ。
勘がいいな。
トラップが
仕掛けられているぞ。

トーヤ

えぇっ!?

ロンメル

アラームのトラップだ。
安心しろ。
解除方法は心得ている。

 
 
アラームっていうと、
一種の警報装置だよね。

大音量が鳴り響いて
周りに侵入者や不審者の存在を知らせる
という仕掛けだ。


中にはモンスターや自動人形、
ゴーレムのようなガーディアンが
襲ってくることもあるパターンも
あるとか……。
 
 

ロンメル

もっとも、
作動してもすでに敵は
誰もおらんのだ。
わざと
引っかかってみるか?

エルム

バカですか?
無用なトラブルを
起こすなんて。
音が鳴るだけで済むとは
限らないんですよ?

ロンメル

ならば我が責任を持つ。
それなら構わんか?

カレン

結局、みんなで
尻ぬぐいをすることに
なるんだから
やめなさいよ。

サララ

ですです……。

エルム

蜂の巣を突いて喜ぶような
ものですよ。
厄介なことになると
分かっているのに。

エルム

そんなことをするの、
バカかマゾか悪趣味な
やつだけです。

ロンメル

うぬ……。

エルム

多数決で、
トラップ解除ということで
決まりですね。

 
 
トラップを作動させることに
賛成なのはロンメルだけ。
ま、当たり前だろうけど……。


そして反対はエルム、カレン、サララ。

まだ態度を表明していないのは
僕とデリンさん。


ロンメルは圧倒的に少数派だ。
これにはさすがのロンメルも
折れざるを得ないかな。

でもその時、
デリンさんがクククと笑いながら
前に出る。
 
 

デリン

まぁまぁ。
面白そうではないか。
自動人形か何かが
襲ってきたとしても
どうせザコ。

デリン

ストレス解消に
破壊するのも一興だ。
のちのちあらためて
処分する手間も
省けるしな。

ロンメル

分かっているではないか。
さすがはデリン。

サララ

ほぇあ……。
ロンメルさんには
そんな深い考えがっ!

トーヤ

いや、ロンメルは
そこまで考えては
いなかったと思うけど。

サララ

それなら私も
賛成します。

エルム

なっ!?

ロンメル

これで賛成が
多数派になったな。

エルム

うぐ……。

 
 
デリンさんの発言がきっかけで
情勢は一変した。
サララが反対から賛成に回ったことで
流れは一気に逆方向へと向かう。

今度はエルムが苦境に立たされている。
 
 

カレン

トーヤは賛成なの?
反対なの?

トーヤ

えっ?

エルム

そうですっ!
兄ちゃんが賛成すれば
賛成と反対が
同数になりますっ!

デリン

そうだな。
鍵はトーヤが握っている
ということになるな。

サララ

トーヤくん、
賛成ですよねっ?

トーヤ

僕は反対かな。
わざわざ危険なことを
する必要はないし。

エルム

へへーん。
これで同数だぞ!

ロンメル

うぬぅ。

カレン

いえ、反対が多数よ。

カレン

だってロンメルは
トーヤの使い魔
なんでしょ?
トーヤが命令すれば
ロンメルは反対に
回らざるを得ないもん。

ロンメル

っ!?

エルム

勝負ありましたね。

 
 
勝ち誇るエルムと
追い詰められて焦っているロンメル。

確かにカレンの言う通りだけど、
今回に関しては僕の考えは違うんだよね。
 
 

トーヤ

あのね、
この件については
命令で従わせるのは
違うような気がするんだ。

エルム

兄ちゃん……。

ロンメル

トーヤ……。

トーヤ

だから公平に
コイントスで決めようよ。

トーヤ

もしトラップを
作動させることになって
何かがあったらロンメルや
デリン、サララが
責任を持って対処する。
それでどう?

ロンメル

承知した。

デリン

分かった。

サララ

はいですっ!

カレン

仕方ないわね。

エルム

兄ちゃんが
そう言うなら……。

トーヤ

じゃ、決まり!

 
 
 

 
 
 
 
 
僕はポケットの中から
コインを1枚取り出し、
それを空へ向かって指で弾いた。

コインは回転しながら
上方向の軌跡を描き、
運動エネルギーと重力が
等しくなった点で
今度は下方向へと動きを変えて
落下を始める。


そして程よいところで
僕はコインを右手の甲で受けて
すかさずそれを左手で押さえる。
 
 

トーヤ

賛成派と反対派を
代表して、
ロンメルとエルムが
選んで。

ロンメル

表だ。

エルム

僕は裏です。

 
 
ふたりの選択を確認した僕は
ゆっくりと左手を挙げていった。

その場にいた全員が固唾を呑み、
僕の手へ視線を注ぐ。
緊張で呼吸音と心臓の鼓動が
大きく聞こえるような錯覚さえする。

結果は――
 
 

トーヤ

表だ。

ロンメル

くははははっ!
我の勝利だ!

エルム

ぐ……。

カレン

仕方ないわね。
公平に決まったんじゃ。

ロンメル

勝負は時の運。
エルムよ、
気を落とすな。

サララ

ですです。
きっとそのうち
いいことがありますよ、
エルムくん。

エルム

はい……。

 
 
こうしてロンメルが主導し、
トラップを発動させることになった。

僕やカレン、エルムは
その場から大きく離れた場所へ移動して
事態を見守る。
 
 

ロンメル

では、絵を壁から
引きはがすぞ。

 
 
ロンメルは風景画の左右両側を掴み、
それを一気に引きはがした。
 
 

いやーん! だめーん!
さらけ出さないでー!
だめだめー!
恥ずかしいー!

 
 
その場には若い女性らしき声の
アラームが鳴り響いた。

それがずっと繰り返し再生されている。
 
 

トーヤ

…………。

 
 
その場にいた全員が唖然として
ボーッと立ち尽くしていた。

何が起きたのか理解できていない。



な、何、このトラップ……。
っていうか、
こんなボイスを仕掛ける意味って……。
 
 

カレン

そういえばお父様、
こういうくだらない冗談、
好きだったのよね……。

デリン

……ロンメル、
さっさと仕掛けを
破壊しろ。不愉快だ。

ロンメル

……うむ。

サララ

でも戦闘がなくて
良かったですねぇ。

 
 
その後、ロンメルは速やかに
アラームの元となっている仕掛けを
破壊した。

今回の出来事については
ロンメルも少しは反省したみたいだった。



ま、確かにサララの言う通り
戦闘にならなかったのは
良かったかな……。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

第258幕 トラップの対処法

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