グランは消滅結界呪法
というものを使って
世界そのものを消滅させようとしていた。

今も彼の腹心たちによって
その計画は進められている最中らしい。



それを防ぐには
異世界間同士を繋いでいる
魔法玉を破壊しなければならない。

まずは異世界間同士を繋ぐ
ゲートの手がかりを見つけるため、
僕たちはグランの屋敷
を調査することになった。


メンバーは僕とカレン、
デリンさん、サララ、
エルム、ロンメル。

そして調査の予定日になり、
僕たちはデリンさんの転移魔法で副都に
やってきたのだった。
 
 

カレン

だいぶ復興が
進んでるんですね。

デリン

まぁな。今、副都は
女王様の代理として
ノーサスが統治している。

ロンメル

さすがは元・魔王。
実務能力は
目を見張るものがある。

サララ

いずれはノーサス様が
副都を治めることに
なるんですかねぇ?

デリン

女王様はおそらく
そのつもりなのだろう。
相変わらず甘い御方だ。

デリン

ノーサスの謀反が
あるかもしれない
というのに。

ロンメル

ありえるな。
副都は王都から
離れている。

ロンメル

つまりどうしても
目の届きにくい面が
否めないからな。

トーヤ

でも今、ノーサスさんは
女王様の使い魔に
なってるんですよね?

 
 
使い魔である以上、
ご主人様である女王様の命令は
絶対であり
逆らうことは出来ない状態にある。

謀反なんて起こせるはずがない。


でもそんな僕の心情を察したかのように
デリンさんはクスッと笑ったあと、
非情な瞳で僕を見つめる。
 
 

デリン

だから逆らえないか?
ノーサス自身は
そうであっても
やり方はいくらでもある。

トーヤ

えっ?

エルム

例えば、院政のような
ものとかですね。
間接的に統治したり
謀反を起こすことは
可能なわけですから。

トーヤ

そっか。
使い魔の契約は
本人同士だけに
有効なものだもんね。

 
 
なるほど、そういうやり方があったのか。

もし反抗的な何かが合った時は
命令してやめさせることが出来るけど、
どうしてもタイムラグが生じる。

その間に片が付いてしまうことだって
あり得るもんね。
 
 

サララ

大丈夫です。
その時は私がノーサス様を
説得します。

トーヤ

でも僕は心配ないと
思うんですけどね。
ノーサスさんの
女王様に対する忠誠心は
本物だと思いますから。

トーヤ

ノーサスさんが魔王の力を
復活させたのだって
女王様が不在になって
その穴を
埋めようとしたのが
きっかけですし。

トーヤ

結果的に魔王の力を
制御しきれなくて、
あんな結果に
なっちゃったけど。

デリン

ま、何かがあれば
女王様が手を打つと
思うがな。

ロンメル

それでも
どうしようもない時は
勇者がいるだろう。

ロンメル

人間は弱い。
だが、瞬間的な力は
魔王をも凌駕する。
それは今までの歴史が
証明している。

トーヤ

そうかもね。

 
 
アレスくんを始め、
かつて女王様を倒した
伝説の勇者・アレク様。

ほかの歴代の勇者様も
常に魔王を打ち破ってきた。
例外はない。


もしかしたらこの力のバランスは
この世界を創造した神様によって
成されたのかも。
 
 

ロンメル

ただ、現在の勇者様は
歴代の勇者と比べても
飛び抜けて強い力を
有しているがな。
一歩間違えば危うい。

ロンメル

ヤツが暴走すると
世界が滅ぶぞ。
消滅結界呪法など
可愛いものだとさえ
感じるほどに恐ろしい。

カレン

えっ?

デリン

確かにアレスの力は強い。
だが、さすがに
買い被りすぎ
なのではないか?

トーヤ

アレスくんは
誰よりも優しいから
世界を滅ぼすなんて
ありえないよ。

ロンメル

……だと、いいがな。

 
 
それっきりロンメルは黙ってしまった。
ロンメルはどうしてそんなにも
アレスくんを警戒するんだろう?

そもそもアレスくんが
世界を滅ぼそうとするなんて
絶対にあり得ない。
勇者様なんだよ?





でも――。

ロンメルの言葉がやけに
心に引っかかって落ち着かないのは
なぜだろう?

その言葉が正しいと
本能が感じているのだろうか?
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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