僕はギーマ老師たちとともに
ティアナさんの家の地下にある
秘密の調薬室にやってきていた。

そしてカレンの体を元に戻す薬の調薬の
準備をしている。


さすがギーマ老師の直弟子である
ティアナさんの調薬室だ。
高度な調薬道具や施設が揃っている。

手入れも行き届いているし、
さすがだなぁ。




ちなみにアレスくんたちは
カレンを元に戻す薬の材料で
足りないものを
集めに行ってくれている。

ただ、怪我の程度が重い
ミリーさんやエルムは治療をして
病室で安静にして持っているけどね。


幸い、ふたりとも治療を重ねれば
全快する状態だ。
ミリーさんもリハビリさえすれば
変わらず剣を扱えるようになるはずだし。
 
 

ライカ

トーヤさん、
状況はどうですか?

トーヤ

えとえと、ギーマ老師に
指示されていた道具は
一通り揃ったかなぁ。

ライカ

へぇ、
いい道具ばかりですね。

トーヤ

あ、ライカさんも
やっぱりそう思う?

ライカ

えぇ。
それにシンディ先生の
調薬室と雰囲気が似てます。

トーヤ

ふたりとも
ギーマ老師の直弟子だから
調薬の姿勢とかセンスとか
似ているのかもね。

ライカ

ですね。

トーヤ

ところでライカさんの方の
準備はどう?

ライカ

はい、現時点で揃えられる
薬の材料は持ってきました。

トーヤ

ということは、
あとはタックさんたちが
足りない材料を
持ってきてくれるのを
待つだけか……。

ライカ

今から取りに
向かいますか?
ご一緒しますよ?

ギーマ

やめておけ。
逸る気持ちも分かるが
仲間を信じて
じっくり待つのも必要だ。

トーヤ

ギーマ老師……。

 
 
気が付くと、
部屋にはギーマ老師とエーデル、
それにカレンがやってきていた。

ティータイムは終わったのかな?
 
 

ギーマ

時間があるなら
エリクサーを
調薬してくれ。

トーヤ

っ!?

ギーマ

調薬できるんだろ?
レオンの直弟子だもんな?
あいつが調薬するのが
得意な薬だったからな。

トーヤ

…………。

ギーマ

それを使って俺の回復を
早めさせてもらうからよ。

ギーマ

むしろそれくらい
調薬できないと
カレンを元に戻す薬を
調薬するなんて
できっこないからな。

ライカ

エリクサーですか!?
トーヤさん、
エリクサーの調薬が
出来るんですかっ?

トーヤ

えと……まぁ……。

 
 
エリクサーは悪用されると困るから
調薬できることを
みんなには秘密にしてたんだけどなぁ。

まさかギーマ老師がばらすとは……。
 
 

エーデル

うそ……。
トーヤ、エリクサーが
作れたのっ?
私も初めて
知ったんだけど?

トーヤ

…………。

エーデル

なるほど、黙ってたわけね。
目玉が飛び出るくらいに
高値で取引される
稀少な薬だし。

ギーマ

ここにいるのは
仲間だからいいじゃねぇか。
ばらしたってよぉ。

ギーマ

それにトーヤ、
お前ほどの腕なら
調薬できない薬が
あるって方がおかしい。

トーヤ

え……。

ギーマ

俺が認めてやってるんだ。
喜べ。自信を持て。

トーヤ

は、はい……。

ギーマ

今後はトーヤの調薬の腕を
悪用しようとするヤツらが
出てくるだろう。
俺に対して
そうだったように。

ギーマ

ライカ、カレン。
その時はトーヤの力に
なってやれ。

ライカ

もちろんですよ!

カレン?

はいっ!

ギーマ

ちなみにお前たちも
薬草師や医師として
レベルは高いぜ。

ギーマ

その力でひとりでも多く
患者を助けるんだ。

ギーマ

ま、その前にまずは
カレンの体を
元に戻さないと
いけないだろうけどな。

トーヤ

そうですね。

ギーマ

ふーん。

 
 
なぜかギーマ老師は満足げな顔をして
僕を見ていた。

そんなに見つめられると照れくさい。
 
 

ギーマ

いい顔するじゃねーか。
もっと緊張しているのかと
思ったが、
意外に落ち着いているな。

ギーマ

それは調薬に関して
自信があるからか?

トーヤ

どうなんでしょう?
僕は薬草師として
出来ることを最大限に
淡々とこなすだけです。

トーヤ

適度な緊張は必要ですが
緊張しすぎても
調薬には良くないですし。

ギーマ

それでいい。
それにしてもトーヤ、
薬草師として成長したな。

ギーマ

以前のお前はもっと
おどおどしていたが
今はそれがない。

ギーマ

旅の中で色々な経験を
積んだんだな。

ギーマ

そういう意味では
グランのヤツらに
感謝しないとな。

エーデル

私にも感謝してね。

トーヤ

もちろんだよ!
エーデルには
カレンのことで
すごくお世話になったし。
ありがとう。

エーデル

……ふざけたつもりで
言ったんだけどな。
だから真面目に
感謝されると照れるわね。

トーヤ

あははは。

 
 
こうしてその場にいた
僕たち全員が笑った。

こんなにも心の底から笑ったのは、
そして副都に笑い声が響いたのは
いつ以来だろう?

でも副都がグランから解放された今後は
誰でも何度でも笑えるようになると思う。



ううん、そういう世の中にしなくっちゃ。

僕の力なんてちっぽけだけど
そのちっぽけな力でも
みんなが笑える助けになれたら嬉しいな。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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