結果的に出来ない事ばかり。出来る事が一つ増えたら出来なくなる事が三つ以上増えているのではないか?そんな気がしていた。

 そんな自分に自信なんて持てる訳が無い。自分は駄目人間だ、出来ない奴だ。そう思うのに時間は必要なかった。

 そんな自分ごときに一生懸命指導してくれている先輩が居る。
 それが申し訳なくて、恥ずかしかった。
 自分のせいで先輩に要らない苦労をさせる事になっている……そんな気がしていた。

 そんな中で勤務する日々。勤務中は先輩に申し訳無い気持ちと罪悪感で一杯になり、終業後自宅に帰ったら疲れて眠る。そうして変な時間に起きる。

 そうして心労が重なった結果だろうか。

 気付いたら布団に入っても眠れなくなって、一時間も寝ずに出勤なんて普通だった。
 そうして更に疲れた結果だろうか。食欲が日に日に無くなっていった。
 食事を摂ろうとすると吐くのでは無いか?という恐怖感に支配された。

 少しずつ少しずつ……翌朝が来るのが怖くなっていった。
 夕飯の時間が来る夕方も……恐ろしく思うようになっていった。

 それでも朝が来るといつも思う事は決まっている。

スカイ

仕事に行くんだから食べなきゃ


 誰が言っている訳でもない。だけどそんな義務感だけが残っていた。
 そうして選んだ朝食は……カロリーメイトゼリーのみ。

 そうして身支度を整えて思った事。それは……。

スカイ

行かなきゃ。仕事だ


 ただ……それだけだった。
 既に精神的には危機的な状況だった。それなのに……見ない振りをしたのは自分だった。

???

何の為に自分はこの仕事をしているのか?

???

この仕事は自分に合っているのか?

???

周囲の人間達は本当に自分に合っていたのか……?


 そんな疑問は無かった。

スカイ

ご入所者様は皆素晴らしい人達だ

スカイ

職員さんも良い人ばかりだ


 でもそれは本当に合っていたのか……?

スカイ

だって彼等は彼女等は……こんな自分ごときにもちゃんと“居場所”を与えてくれるんだから


 もしかしたらそう思っていたのかも知れない。
 当時の自分に見えていたのは『そこに居る人一人一人』では無く、『自分にこの環境を与えてくれている人達』だったのではないか?……今ではそんな疑問も湧いてくる。

 当時はそんな事もわからない位自分の事で精一杯で、目の前の事しか見えなくて……ずっと壊れたブレーキの車に乗っていたのだろう。

???

仕事だから、やらなきゃ

???

自分が選んだ仕事なんだから

???

自分が好きな事を仕事にしているんだから


 自分の中の誰かが……そう言っていた気がした。

 そう思いながら仕事に行くようになって……何日が経ったのか。

 ついに限界(その時)が来たのである。

1-2 壊れたブレーキ。行く末は……二

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