その日は遅番で昼休憩に入ったのは十五時。休憩終了は十六時だった。

 休憩が終わって少し。ユニットの居室のカーテンを閉め、掃除をする。
 それから夕飯が来る前か、来た後だっただろうか。

 それは突然起こった。

スカイ

ハァハァハァハァ……


 突然の激しい動機。息苦しい程に高なる鼓動と荒い呼吸の繰り返し。
 どうしようも無く突っ伏した事は覚えている。
 流石に様子がおかしいと気付いた先輩職員さんが休むよう言ってくれた事。それは確かな記憶の筈だ。
 それから移動した職員休憩室で上役の職員さんと話しながら泣きじゃくっていたのも覚えている。吐き出せなかった自分の想い、苦痛を吐き出し……理由のわからない涙が出て来た。

スカイ

何で自分は泣いているんだろう?


 そんな事を思ったのは人生で初だったかも知れない。

 そこに自分の様子の変化を見ていた優しいご入居者様がご家族様の訪問があったというのに心配そうな表情でやって来て、泣いているのを誤魔化して笑った。
 ご家族様よりも優先してくれた事、心配を掛けた事、嘘の笑顔を浮かべて返した事……全て申し訳無いと思い罪悪感を覚えた。それも定かな記憶の筈だ。

 ただその時の自分はよっぽど余裕が無かったのか……記憶が曖昧になっている。

 話を聞いてくれていた職員さんに言われた内容は少しだけ印象に残っている。

上役職員

人間なんだから、泣きたい時はあるよ。理由も無く泣きたくなる時は誰にでもある

上役職員

あなたは今傷付いているのに……その気持ちを蔑ろにした。自分で自分を認めなかった。認められたいと思っていた自分を受け容れなかった

 しかし思い出せるのはそれだけだ。予想していなかった状況によっぽど苦しんでいたらしい。

 その後過呼吸のせいで自律神経が影響を受けたのか、手足が痺れて動かせなくなって……休んで落ち着かせた……筈だ。
 その後調子を崩したというのに記録を書こうとして、先輩にやっておくから重要な事のみメモに残すだけで良いと言われた気もしたのだが……あるご入居者様の様子の変化を伝えておきたくて結局何だかんだ書いて帰宅した……ような気もする。
 今考えるととんでもない話である。その状況さえ普通だと受け止めた自分は……矢張りどうかしていたのか……?

 次の出勤がそれから何日後だったか……記憶が定かでは無い、のだが。
 指導担当の先輩に

先輩職員

調子が悪い時は頼るように。その為に付きの職員が居る


 ……そんな事を言われたかメモ書きで伝えられたかした気がする。
 それからやっと頼るようになった記憶があるのだが……それも長くはなかったかも知れない。

 その次に覚えている記憶は調子を崩した事により、シフトを組む上役から連休を貰った。
 しかし連休明けに出勤しようとすると過呼吸を起こし、手足の痺れも覚え……結局休む連絡を入れた。

 暫く勤務に入らなかった自分が思った事……それは。

???

他の職員さんに迷惑を掛ける。申し訳無い……


 ……ではなく。

スカイ

自分なんて居なくても……職場は回っている。寧ろ居ない事で他の職員さん達は楽に動けているだろう。
ただ心配を掛けたご入居者様に対してだけは……申し訳無いな

 そんな内容だった。

 そうして又自分で自分を傷つけたんだ。

 会社に行けなくなって数日経ったある日、好い加減自分でも不味いと思っていたその頃。

 ……面談の呼び出しがあったのだった。

1-3 壊れたブレーキ。行く末は……三

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