薬の調薬をすると僕の寿命の大半が失われ
しかも僕もカレンもあと100年くらいしか
生きられないという。
だけど僕の心は決まっている!
ギーマ老師にしては愚問を
問いかけてくるじゃないか。
つまり僕がどんな返答をするのか、
分かっていて言ったに違いない。
薬の調薬をすると僕の寿命の大半が失われ
しかも僕もカレンもあと100年くらいしか
生きられないという。
だけど僕の心は決まっている!
ギーマ老師にしては愚問を
問いかけてくるじゃないか。
つまり僕がどんな返答をするのか、
分かっていて言ったに違いない。
そんなことですか。
まさかギーマ老師は
それを提示して
僕が首を横に振るなんて
思ってませんよね?
まぁな。
あとで恨まれないよう
念のための
確認ってことだ。
やっぱりそうでしたか。
やっぱりだと?
生意気なヤツめ。
ギーマ老師こそ
僕をバカにしすぎないで
ください。
っ!?
カレンのためなら
その程度の僕の寿命、
安いもんです!
僕の気持ちと覚悟を
なめてるんですか?
…………。
フッ、そりゃ悪かった。
んじゃ、カレンの心に
入っちゃって良いのね?
心の準備はいい?
はいっ!
ん、それならトーヤ。
行くからね?
エーデルは僕の肩に手を置いた。
そして念じ始めてから程なく、
彼女の体はピンク色の光に包まれていく。
でも彼女自身は
明瞭に見えたままなのが不思議だ。
その光は僕の視界の全体に広がっていき、
やがて浮遊感とともに
全身の肌が温かさを感じるようになる。
まるで南国の空を
飛んでいるみたいな……。
もうすぐカレンの人格と
接触するはずよ。
ここはすでにカレンの
心の中なんですか?
えぇ。つまり心に負担が
かかり始めている。
さすがにまだ
猶予はあるだろうけど
壊れる時は一瞬だから
覚えておいてね。
…………。
…………。
…………。
その直後、
僕たちの眼前にカレンの姿が現れた。
僕のよく知っているカレン、
副都で僕たちを襲ってきたカレン、
そしてモンスターのカレン。
3人のカレンが目の前にいる。
ただ、自由に動けているのは
モンスターのカレンだけで、
副都で僕たちを襲ってきたカレンは
半透明になっていて
今にも消えてしまいそうだ。
元々のカレンは
姿こそハッキリしているけど
光の中から生えた茨のようなものに
手足が縛られていて身動きが取れていない。
カレン!
トーヤ?
なんであんたが
ここに……?
トー……ヤ……っ。
僕が呼びかけると、
3人のカレンが僕の方を振り向いた。
みんな意識はあるようだ。
僕はエーデルから離れ、
そこへ近付いていく。
そして僕はついに本来のカレンと
再会を果たした。
思わず胸に迫るものがあって、
体も熱くなってくる。
やっと再会できた。
カレン……。
バカ……遅すぎ……。
でもまた会えて嬉しい。
私、こんなことに
なっちゃったでしょ?
だからまた会えるとは
思ってなかったから。
元のカレンは大粒の涙を流していた。
激しくしゃくりあげて、
いつもの強気な態度は成りを潜めている。
彼女は身動きが取れないから
僕が指で涙を拭ってあげる。
そして次にその隣にいる敵対カレンに
視線を向けた。
こっちのカレンとは
会ったばかりだよね。
キミに刺されて
死にかけたよ。
ふんっ! 下民が
気安く話しかけないで。
ご、ごめんね……。
敵対していたカレンは未だに僕を
良くは思っていないようだった。
ただ、どうして彼女は
こんなにも存在が
希薄になってしまっているのだろう?
どうしてキミは
存在が希薄なの?
そいつのせいよ!
っ?
敵対していたカレンは
恨みがましくモンスターのカレンを
睨み付けながら指差した。
一方、モンスターのカレンは
困惑した表情を見せる。
モンスターのカレン?
えぇ。そいつが
主人格を奪ったせいで
それまで主人格だった私は
存在を食われたの。
私にそんなことを
言われても
知らないんだけど。
私だって何が何やら……。
ふんっ!
じゃ、元のカレンも
敵対していたカレンや
モンスターのカレンに
存在を食われたとか?
いいえ、私は随分前から
人格を封印されていたから
存在自体は
影響を受けてないの。
その代わり、
こうして自力では
身動きが取れない状態
だけどね……。
なるほど、
敵対していたカレンは
モンスター化した時に
主人格だったことで
食われてしまったわけか。
そういうこと!
自業自得よ!
本来の主人格である
私の代わりに
アンタが食われたおかげで
私は致命的なダメージを
免れちゃったっ♪
うるさいっ!
や、やめなさいよ、
本人同士で
ケンカなんて……。
言い争いをする
カレンと敵対していたカレン。
それをモンスターのカレンが
アタフタしながら見ている。
次回へ続く!