つまり私は彼女の心へ
入り込むことができる。

対象が男性じゃなくても
大丈夫なんですか？

もちろん可能よ。
女性の心に入っても
何のメリットもないから
普段は入らないだけ。

というわけだ。
エーデルの能力を利用して
カレンの元の人格を
引き起こす。

その状態になれば
俺の薬で体を
元に戻せば解決だ。

そういうこと
だったんですかぁ。

タイミングは今しかない。
時間が経てば経つほど
細胞の代謝は進む。

モンスターとして
完全に細胞が定着して
しまったら手遅れだ。

そうですね。

エーデル、
どうかカレンのこと、
お願いします。
心を元に戻してください。

は？　何を言ってるの？
私は心の中に入る能力を
持っているだけ。
心を元に戻すなんて
できるわけないじゃん。

えっ？

それをするのは、
キミ自身だよ。

僕がっ!?

私は私自身のほかに
ひとりくらいなら
一緒に連れて誰かの心へ
入ることができる。

彼女の心を
動かすことができるのは
きっとキミだけ。
だからキミが適任でしょ？

僕がカレンの心の中へ？

ただし、あまり時間は
かけられないからね？

え？

サキュバスである
私と違って
キミは彼女の心の中で
明らかな異物。
心に大きな負担がかかる。

負担がかかり続ければ
心が崩壊しかねない。
それは覚えておいて。
私は責任取らないからね。

元に戻すどころか
抜け殻のように
なってしまう可能性が
あるということですか。

まー、そういうこと。
肉体だけが生きてる
人形みたいなものね。

…………。

どうなったとしても
僕が全ての責任を取ります。

いい覚悟だ。
おっと、
言い忘れてたことが
もうひとつあった。

俺の薬、調薬する
原料のひとつとして、
調薬者の寿命が必要だ。

寿命がっ？

必要なのは数百年。
つまりトーヤは
あと100年くらいしか
生きられないことになる。

カレン自身も
長くて100年。
数百年の寿命を対価に
2人とも100年しか
生きられないってことだ。