その場に重苦しい空気が漂う中、
前に出る人物が現れた。

――アレスくんだ。
 
 

アレス

僕はトーヤくんに
賛成だよ。
殺すだけが解決法だと
決めつけるのは早いよ。

アレス

あのモンスター、
元々はカレンさんなんだ。
カレンさんとトーヤくんの
心の絆を僕は信じたい。

トーヤ

アレスくん……。

シーラ

ですね。
アレスには動物たちと
心を通わせられる力が
あります。

シーラ

トーヤ様とカレン様に
似たようなことが起きても
不思議じゃありませんよ。

クロード

私もトーヤとカレン様を
信じたいです。

トーヤ

クロード!

 
 
アレスくんやシーラさんに続いて
クロードが僕に賛同してくれた。

クロードは僕に微笑みかけてくれる。
 
 

クロード

理由は分かりませんが、
ふたりには不思議な絆を
感じるんです。
だから試してみる価値は
あると思います。

ライカ

タックさん、
私からもお願いします。

トーヤ

ライカさん……。

ライカ

カレンさんの
トーヤさんに対する
想いは誰よりも強いです。
奇跡は起きますよ。

エルム

僕も兄ちゃんに賛成です。

ロンメル

我もな。
使い魔としては
反対できまい。

タック

お前ら……。

 
 
タックさんは目を瞑り、考え込んだ。

数秒の間。
そのあとタックさんは
僕の意思を確認するように見つめてくる。
 
 

タック

危険だと判断したら
計画を中止させる。
カレンも殺す。
それでいいか?

トーヤ

いいえ。

タック

なんだとっ?

トーヤ

僕の命が尽きるまで
見守ってください。
そのあとはお任せします。

タック

トーヤ……。

トーヤ

カレンは素直じゃないから
抵抗すると思うんですよね。
だから最期まで
見守っててもらわないと。

ユリア

カレンちゃんなら
ありえるわねっ♪

タック

……分かった。
そういうことなら
お前がどんなに
攻撃されても止めない。

トーヤ

アレスくん、
僕がピンチになっても
力を使って
カレンを止めないでね?

アレス

トーヤくん……。

トーヤ

アレスくんだって
シーラさんとの間に
誰かに入ってこられるのは
嫌でしょう?

アレス

ッ!?

アレス

トーヤくんも
言うようになったね。
うん、分かった。
約束する。

トーヤ

ありがとう。

 
 
こうして僕は体を自由にしてもらい、
タックさんやライカさんたちに
回復魔法や防御魔法、
身体強化の魔法をかけてもらった。

これなら例え攻撃されても
しばらくは耐えられるはずだ。


あとは僕の体力が続いている間に、
モンスターとなったカレンへ
想いが届くかどうか。
 
 

トーヤ

いくぞ!

 
 
僕は丸腰のままカレンに向かって
歩き始めた。
武器なんか持っていたら、
警戒されてしまうから。

例え使う気がなかったとしても
無意識のうちに戦意が現れてしまうかも
しれないからね。

モンスターは本能的に
そういう感覚が鋭いだろうし。
 
 

カレン?

っ!?

トーヤ

大丈夫だよ、カレン。
僕は敵じゃないよ。

 
 
僕は笑みを浮かべ、
何もかもを受け入れる気持ちで
両手を広げて歩み寄っていく。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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