突然、カレンが苦しみだした。
そして彼女の体は変化を始める。
全身の大きさは何倍にも膨れあがり、
皮膚から獣のような毛が生えてくる。
さらには鋭い牙と爪、
目は戦意に満ちて赤く輝いている。
突然、カレンが苦しみだした。
そして彼女の体は変化を始める。
全身の大きさは何倍にも膨れあがり、
皮膚から獣のような毛が生えてくる。
さらには鋭い牙と爪、
目は戦意に満ちて赤く輝いている。
……ォ……オオオォ……。
これは……
モンスター化……っ!?
かつて何度も似たような光景を見ている。
今まで普通の人だったのに
急にモンスターへと変化して
僕たちを襲ってきた。
それがカレンの体にも
起きたってことなの!?
っ!
僕はようやく理解した。
グラン侯爵が死ぬ間際に見せた行動と
薄笑いの意味を。
指を鳴らしたのは、
カレンをモンスター化させる
合図のようなものだったんだ!
あの薄笑いは
カレンがモンスターとなった時に
僕が絶望する様を想像してのことか……。
くそぉっ!
ビセット、
トーヤを押さえておけ!
行動させるな!
は、はいっ!
っ!?
僕は瞬時にビセットさんから
羽交い締めにされてしまった。
その力は強大で、
僕にはどうすることもできない。
僕が当惑していると、
タックさんは悲しげにこちらを見る。
悪いな、トーヤ。
お前はこのあと、
暴走しかねないからな。
拘束させてもらった。
え……。
ど、どういう意味ですか?
何を考えているんですか?
直感的に
分かってるだろ?
ああなっちまったら
どうするかくらい。
ま……さか……。
どうにもならねぇ。
だったらせめて
苦しまないように――
ダメですよっ、
そんなのっ!
まだ助けられる方法が
きっとあるはずです。
タックさんはカレンを殺す気なんだ。
場の空気を考えても
それはやむを得ないって感じになってる。
このまま押し切られたらダメだ。
最後まで抵抗して方針を覆さないと
僕は絶対に後悔する。
トーヤ、
助けられる方法が
あるなら
オイラに教えてくれ。
えっ……。
オイラは無力で無知な
賢者だ。
レインに続いてカレンまで
死なせることになっちまう。
肝心な時にいつも
仲間を救うことが
出来ねぇ。
クソみたいな賢者だ!
タック……。
…………。
タックさんは
苦虫を噛み潰したような顔をして
地面を蹴り上げた。
タックさん自身も苦しいんだ。
僕に提案があります。
モンスターとなった
カレンの心を
僕が開いてみせます。
何っ!?
敵意がないことが分かれば
カレンだって
攻撃してこなくなりますよ。
バカなことを言うな!
無理……なんじゃない?
だから僕に防御魔法を
かけてください。
そうすれば
最小限のダメージで
カレンに近寄れるはずです。
でもダメージを
受けることには
変わりないんだぜ?
覚悟の上だよ、アポロ。
うーん……。
…………。
その場に重苦しい空気が漂う中、
一歩前に出る人物が現れる。
それは――
次回へ続く!