ついに僕たちは
4体に分裂したグラン侯爵の全てを
倒すことができた。
あとはカレンの精神を元に戻すだけだ。
だけど……。
ついに僕たちは
4体に分裂したグラン侯爵の全てを
倒すことができた。
あとはカレンの精神を元に戻すだけだ。
だけど……。
…………。
僕にはグラン侯爵の最後の行動の意味が
分からなかった。
しかも息を引き取る直前、
一瞬だけどニヤリと怪しく微笑んだような。
どうしてもそれが心に引っかかる。
やったね、トーヤくん!
アレスくん……。
うん!
シーラさんに肩を借りながら
歩み寄ってきたアレスくん。
アレスくんもシーラさんも顔に疲労の色が
ハッキリと現れていて、
怪我や埃にまみれている。
でもふたりも僕のことを同じように
見ているんだろうな。
あぁあああぁっ!
その時、カレンの苦痛に満ちた悲鳴が
不意に響いた。
カレンは剣を床に落とし、
四つん這いになって
全身を激しく震わせている。
僕は慌ててそこへ歩み寄っていく。
あっ、トーヤさん!
トーヤ!
どうしたのっ?
何があったの?
それが……
カレン様は突然、
苦しみだしまして。
私たちも戸惑っている
ところなんです。
そんな……。
それから程なく、
動ける全員がカレンの周りに
集まってきて彼女の様子を見守っていた。
僕はとりあえず容態を確認しようと
カレンに歩み寄ろうとする。
でもそれをタックさんに止められてしまう。
その顔は真っ青で、
愕然としているような……。
トーヤ、近付くな。
近付いちゃいけねぇ。
ど、どうしてですか?
みんなも
カレンから離れろ!
重傷者の周りには
結界を張って守れ!
え……。
タック、
どういうことなの?
悪いな、アレス。
もう少し無理を
させちまうかもしれねぇ。
シーラ、アレスの回復を
急いでくれ。
は、はい……。
それは構いませんが……。
タック殿、
説明をしていただかないと
分かりませんよ。
この場にいる何人かは
見覚えがないか?
カレンの苦しみ方を。
っ!? まさかっ!
……なるほど。
最悪の事態かもね。
タックさんの言葉を聞いて
何かを察したのか
クロードは大きな声を上げた。
彼の表情も真っ青になっている。
クレアさんも顔を曇らせている。
カレンの身に何が起きているの?
説明してくださいよ、
賢者様。
もうすぐ分かる。
見れば一目瞭然だろう。
僕たちはタックさんの指示通り、
カレンと一定の距離を置いた。
そして重傷のエルムやミリーさん、
アポロの周りには防御結界が張られた。
その周りをユリアさんやビセットさん、
ロンメルたちが守っている。
お……おぉおおおぉ……。
その時、カレンの体が変化を始めた。
全身が何倍にも大きく肥大していき、
皮膚には獣のような毛が生えていく。
ま、まさか……これは……。
次回へ続く!