思いがけず
ロンメルとヴァンパイアハンターの
お姉さんが僕たちの味方に加わり、
少しは勝てる確率が上がった。


ただ、勝つための
大きな鍵を握っているのは
僕自身であることには変わりない。

そしてそれぞれが全力で戦わないと
その前段階にすら辿り着けない。
 
 

アレス

行くよ、みんな!

タック

おうっ!

 
 
僕たちはそれぞれ戦いを開始した。

やっぱりみんな苦戦はしているけど
よく戦ってくれている。
なにより心がひとつになって
100%以上の力が発揮されているみたいだ。
 
 

トーヤ

僕も準備をしなきゃ!

 
 
 

 
 
 
僕は注射器を体に刺して血を採った。
間を置かずに採っているせいか、
少し頭がフラフラする。


でもそんなことは言っていられない。

とりあえずグラン侯爵を倒して、
カレンの人格を取り戻すまでは
死ぬわけにはいかない。

……でも逆に言えば、
その目的さえ達せれば僕は。
 
 

アレス

…………。

シーラ

…………。

 
 
アレスくんはシーラさんと共に
力の行使を始めた。
ターゲットはクレアさんがひとりで
相手をしている一体のようだ。

確かに四体の中では唯一、
ひとりで戦っている相手だもんね。


そうなると、僕が攻撃を仕掛けるのも
その一体ということになりそうだ。

僕は採血をした注射器を握りしめ、
その時を待つ。
 
 

トーヤ

ん? 待てよ?
僕の血液に触れただけで
ダメージを与えられるなら
フォーチュンで遠隔攻撃が
できるんじゃ?

トーヤ

それなら待つだけじゃなく
積極的に戦いに加わることが
出来る。ただ……。

 
 
問題は僕の血液が足りるかどうか。

現時点でもフラフラなのに、
あまり採りすぎたら僕自身の命が……。
 
 

トーヤ

っ!?

グラン

クッ……。

 
 
そんなふうに色々と考えているうちに
アレスくんの力が発動し、
クレアさんが相手をしている
一体の動きが鈍った。




よし、チャンスだ!

僕は周囲を警戒しつつ、
その一体へ向かって突進する。
タックさんの結界から出て真っ直ぐに!
 
 

トーヤ

食らえぇええぇっ!

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
僕は注射器をグラン侯爵の一体に刺した。

すると先ほど倒した一体と同じように
すぐに悶え苦しみながら絶命する。

ただ、その断末魔の叫びは
みんなの注目を浴びることにもなり、
隙を衝いてカレンがこちらに向かってくる。
 
 

カレン

っ!

ユリア

私に任せて。

 
 
 

 
 
 
 
手の空いたクレアさんが僕の前に立ち、
カレンの攻撃を弾き飛ばした。

さらに追撃してきた
クロードとライカさんもそこに加わって、
カレンの攻撃から守ってくれる。
 
 

クレア

トーヤ、行きなさい!

クロード

トーヤの背中は
守ってみせますから。

ライカ

ご安心を。

トーヤ

ありがとう、3人とも!

 
 
僕は新しい注射器で血液を採取し、
周囲を見回して次のターゲットを探る。

どうやらアレスくんたちは
次に力を行使する対象を
アポロたちの戦っている一体に定めたようだ。

ただ、さすがにアレスくんとシーラさんも
力の使いすぎで苦しそうに見える。

そうだよね、
こんなに連続で力を使い続けたら当然だ。
どうか無理はしないで、アレスくん……。
 
 

トーヤ

よし、次に備え――。

トーヤ

うぐっ……。

 
 
突然、目まいがして足がふらついた。
ただ、奥歯を噛みしめて
すぐに意識を強く持ち、なんとか踏ん張る。

くそ……
僕はまだ倒れるわけにはいかないのに。
ただ、限界が近いのは確かかも。
 
 

アポロ

断罪の光!

グラン

神聖魔法だとっ!?

 
 
 
 

 
 
 
 

 
 
 
 
 

グラン

ぎゃおぉあああ!

 
 
 

 
 
 
 
 
アポロの神聖魔法が
グラン侯爵にヒットした。

魔族が神聖魔法を使うなんて
誰も思わないから
不意を衝けるし効果も絶大だ。



ユリアさんはアポロに寄り添って
彼の回復と周囲からの攻撃に備えている。
すでにアレスくんの力も
発動しているみたい。
 
 
 

トーヤ

うぉおおおおぉーっ!

 
 
僕は力を振り絞って駆け出した。

息苦しくて目の前が霞んで
足も鉛のように重いけど、
根性でそれを吹き飛ばす。
 
 

トーヤ

食らえッ!

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
神聖魔法を食らって
大ダメージを受けている
グラン侯爵の一体に注射器を突き刺した。

――これで二体目も片付いた!
 
 

トーヤ

次……は……。
うくっ……。

 
 
まずい……足が動かない……。

目の前が真っ白になってきて
聴覚まで鈍ってきたみたいだ。



もう踏ん張れない……。

でも床に倒れ込んだかと思ったその時、
僕は誰かに受け止められていた。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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