ユリアさんは状態異常回復薬を飲むことで
自身が本物だと証明をした。

一方、エルムはそれにより
別の疑問が生じたという。
どういうことなんだろう?
 
 

トーヤ

エルム、別の疑問って?

エルム

誰が結界を消したのか
ということです。

エルム

副都側の誰かが
ミスをやらかしたという
ことはないですよね?

アポロ

今は気にしなくても
いーんじゃねーか?
オイラたちにとっては
好都合なわけだし。

アポロ

その援護をありがたく
享受させてもらおうぜ。

タック

…………。

アレス

何か知ってそうな顔だね、
タック?

タック

さぁてな?

 
 
きっとタックさんは何か知っている。
そういう顔と話しぶりだ。

でもそれならそれで安心かもしれない。
むしろ誰も何も心当たりがない方が
スッキリしなくて気持ち悪いから。


タックさんのことだから
何か手を打っていたんだろうな……。
 
 

アポロ

いずれにしても
これで俺たちも魔法が
使えるようになったと
ハッキリしたわけだ。
全力で戦えるぜ。

トーヤ

でも無理はしないでね。

アポロ

善処する。

アレス

よし先へ進もう。

タック

おそらく敵の親玉は
玉座の間にいるだろう。
まずはそこを目指すぞ。

 
 
僕たちは再び城の奥へと進み始めた。
もはや敵の戦力はかなり低下しているのか
立ち塞がる自動人形やアンデッドも
少なくなり始めている。

ほかの場所も同じような状況なのかは
分からないけど。



そしてタックさんの先導で
進んでいた僕たちは
とうとう玉座の間へと到達する。

そこで待ち受けていたのは2つの影――
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

グラン

ようこそ、副都へ。
待っていたぞ、勇者よ。
私がグランだ。
ここまで辿り着いたことは
褒めてやろう。

カレン

よくもまぁザコどもが
雁首を揃えてノコノコと
やってきたものね。

 
 
 

トーヤ

カ……レン……。

 
 
目の前にいたのは間違いなくカレンだった。
偽物の可能性も捨てきれないけど、
僕には彼女が本物だって本能的に分かる。


――もちろん根拠はない。
でもあの雰囲気や仕草、言葉遣い、呼吸、
何もかもがカレンそのものだ。

例え人格が別だったとしても
カレン本人の持つ生理的な特徴までは
変えられないはずだから。




懐かしさと嬉しさで胸が熱くなってくる。
体が震える。
自然と涙が滲んでくる。
 
 

トーヤ

カレン!
カレェエエェーンッ!

 
 
僕は無意識のうちに叫んでいた。

そして次の瞬間、
僕はカレンに向かって駆け出していた。


でもその直後、
背中から誰かに羽交い締めにされて
それは叶わない。





振り向いてみると
僕を止めたのはアポロだった。
 
 

アポロ

バカヤロー!
落ち着け、トーヤ!!

トーヤ

えっ?

 
 
 
 
 

 
 

 
 

 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
それから一拍の間が空いて
玉座の間に爆裂音が響いた。

その衝撃波と熱風が僕の額を撫でていく。



カレンはニタニタと微笑んでいた。

その手からは炎の魔法が放たれ、
大理石の床にそれが炸裂して
穴があいている。

もしアポロが止めてくれなかったら
魔法は僕に直撃していただろう。
 
 

カレン

近寄らないで。
下民が汚らわしい。

トーヤ

カレン……。

 
 
彼女が僕の知っているカレンの人格なら
僕に対して絶対に言わないセリフだ。





でもそれならなおさら
正気を取り戻させてあげないといけない。

そして周りにいるみんなを
癒してくれるような
優しくて温かくて屈託のない笑顔を
取り戻すんだッ!
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

第222幕 笑顔を取り戻すんだッ!

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