結界が消えたことにより、
疑念が生まれた。

それを解消するため、
エルムはみんなに声をかけて
事情を説明する。

まさかユリアさんが
偽物だとは思えないけど
確認しておいた方がお互い安心だもんね。
 
 

エルム

――というわけです。

アポロ

なるほどな。
俺、結界のことを忘れて
無意識に魔法を
使ってたぜ。

トーヤ

結果オーライ
だったけどね。

アポロ

だな。
魔族の神様は俺たちを
見捨てなかったって
ことにしておくか。

エルム

そういうわけですので
ユリアさんには薬を飲んで
いただきたいのです。

ユリア

えー? 嫌よ!
だってすごく
苦いんでしょ?

エルム

疑いを晴らすためにも
お願いします。

ユリア

私は無実よ! 本物よぉッ!

トーヤ

えぇ、そうだとは
思いますが、
念のために……。

エルム

万が一にも
後ろから攻撃されるような
ことがあると
困りますからね。

アポロ

んじゃ、
俺が本物のユリアかどうか
確かめてやろうか?

トーヤ

どうやって?

 
 
するとユリアさんは
瞬時に殺意の炎を燃え上がらせて
アポロを睨み付けた。

その迫力と威圧感は
そばにいる僕ですら恐怖を感じるほどだ。
 
 

ユリア

……アポロ、
指一本でも私に触れたら
殺すわよ? マジで!

アポロ

まだ何も
言ってねぇじゃんか!

ユリア

何を言おうと
してるのかぐらい
分かるわよ!
それを口にしても殺す!

アポロ

……ボ、ボク、
ユリアさんは
本物だと思いま~す。
この凶暴さが
本物の証拠で~す!

 
 
アポロはヘラヘラと薄笑いを浮かべながら
アレスくんの後ろに隠れた。

それを見てアレスくんは
やれやれと息をつく。
 
 

トーヤ

さっぱり意味が
分からないんですけど?

ユリア

トーヤくぅん、
世の中には
聞いちゃいけないことも
たくさんあるのよ?

トーヤ

こ、怖い……。

タック

おそらく裸にして
ホクロとかアザとか
そういうのを
確認しようってんだろ。

ユリア

タックさん!
言わないでくださいよ!

 
 
そっか、ふたりは幼馴染だから
子どものころ一緒にお風呂に入るとかで
そういうの知ってても不思議じゃないか。

だって僕も――
 
 

シーラ

敵地の真ん中で
そんなことをするなんて
ありえません。

ユリア

敵地じゃなくても
ありえないわよぉ!

シーラ

あっ……
そうですよね……。
すみません……。

ユリア

もぅ、タックさん!
無効化魔法を
使えないんですかぁ?

タック

使えるが、
あれは魔法力を食う。
出来れば温存したい。

ユリア

トーヤくん、
魔法力の回復薬は?

トーヤ

持ってますけど、
それだと回復薬を
大量に消費することに
なると思います。

トーヤ

今後のことを考えたら
状態異常回復薬を使う方が
好ましい選択肢
なんですよ。

ユリア

うううううぅ……。

 
 
ユリアさんは
まだ不満そうな顔をしている。

でも毒や麻痺などの状態異常は
個別に回復する薬をたくさん持っているし
これから何が起きるか分からないから
魔法力を回復させられる薬は
残しておきたい。


だって魔法力は攻撃や防御、回復など
色々な分野の魔法を使うための
エネルギー源になるからね。
 
 

ユリア

あーあ、最悪。
もう分かったわよぉ。
飲めばいいんでしょ!

エルム

ご理解いただき
感謝します。

アポロ

意外に思ったほど
苦くないかも
しれないしな。

トーヤ

残念ながらそれは
ないんだよね……。

 
 
僕は薬をユリアさんに手渡した。

そしてそれを一気に
飲み干したユリアさんは
僕の予想した通り
あまりの苦さで悶絶したのだった。



……ま、体に悪いものじゃないから
そこは安心してもらっていいんだけどね。
 
 

ユリア

これで疑いは
晴れたわよね?

アポロ

っっ……そうだな♪

ユリア

何、笑ってんのよ?
殺すわよ?

アポロ

わ、笑ってねぇよ!

エルム

でもこれでまた別の疑問が
生じましたよね。

トーヤ

えっ?

 
 
ユリアさんが本物だと確認できたことは
なによりだったけど、
エルムにはまだ何か
気になることがあるらしい。

別の疑問ってなんなんだろうな?
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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