レインさんはいつもと少し様子の違う
魔法剣を発動させていた。
色も形も違うけど、
威力や効果が異なるのだろうか?
まぁ、普通に考えればそうだよね……。
だとすれば、どんなものなんだろう?
レインさんはいつもと少し様子の違う
魔法剣を発動させていた。
色も形も違うけど、
威力や効果が異なるのだろうか?
まぁ、普通に考えればそうだよね……。
だとすれば、どんなものなんだろう?
が……ぁ……。
レインさんは血液の混じった咳をした。
しかも足がふらついて倒れそうになるが、
それを必死に堪える。
鬼神の如き形相。
その威圧感はスアラに匹敵するかも。
レイン! お前はッ!!!
何してんだよぉっ!
…………。
不意にタックさんが悲痛な声をあげた。
するとレインさんは
わずかにニヤリとしながら
タックさんに視線を向ける。
ただ、それもほんの一瞬のことで、
すぐに魔法へと意識を戻す。
……バカ野郎っ!
いくらお前ほどの
魔法の使い手でも、
人間には
変わりねぇんだぞっ!
禁呪を使ったら
助かるわけねぇ!
百も承知だろう!
えっ?
禁呪?
あぁ、そうだ。
あれは魔法剣の上位。
神滅剣だ……。
神さえも斬り殺し
滅すると
言われている禁呪だ。
そんな……。
やっぱり僕の感じた嫌な予感は
当たっていた。
薬をレインさんに渡しちゃ
いけなかったんだ。
人間が禁呪を使ったら灰になる。
それはレインさんだって例外じゃない。
つまり死ぬってことだ。
いくら僕でも
死んだ人間を生き返らせる薬は作れない。
いや、僕どころか
そんなものは誰にも作れない。
やっぱり最初から
死ぬ気だったか……。
えっ?
レインの目は
死を覚悟した
目だったからな。
アポロは分かってたのっ?
だったらなんで
言ってくれなかったの?
ねぇっ、なんでッ!?
なんでっ! ねぇっ!!
僕は居ても立ってもいられなくなり、
アポロの体を掴んで激しく揺すった。
言ったらお前が
そういう反応を
するからだよ。
っ!?
レインの覚悟を
無駄にしたくなかった。
許せ……。
う……うぅ……。
アポロは僕から顔を逸らして俯き、
それっきり黙ってしまった。
僕は涙や鼻水があふれてきて止まらない。
レインさん!
勝って生きるために
戦うって
言いましたよねっ!
嘘だったんですかっ?
答えてくださいッ!!
レインさんの反応はない。
ただひたすらに
魔法を練り上げ続けている。
レインさん……。
アレスくんは力を行使している最中で
身動きがとれないから、
ただ涙を流して堪えている。
シーラさんも同じだ。
駆け寄りたくてもそれはできない。
もしそれをしたら
スアラの動きを封じ続けることが
できなくなってしまうから。
レインさんが命を賭けて作ったチャンスを
無駄にしてしまうことになるから。
これで二度目です。
ビセットさん?
レイン殿は以前にも
命を落とす覚悟で
私たちを守ったことが
あったのですよ。
その時は色々あって
助かりましたが。
仲間に対する想いは
誰よりも強い。
そういう方です。
その直後、レインさんは一歩一歩
足で感触を確かめるように
地面を踏みしめて
スアラに近寄っていった。
まるで
もはや目が見えていないかのようだ。
や、やめろ!
来るなぁっ!
…………。
スアラの声は怯えに満ちていた。
彼女も神滅剣の威力に気付いているらしい。
一撃を食らえば例え今の状態でも
滅せられてしまうと分かっているのだろう。
そ、そうだっ!
取引をしよう!
世界の半分をくれてやる。
カネでもなんでも
望むものを差しだそう。
だから助け――
今の私がほしいのは
ただひとつ。
あなたの命よ!
ぎゃぁああああぁーっ!
振り下ろした神滅剣は
スアラを頭頂から縦方向へ
一刀両断にした。
さらに続けざまに横方向にも攻撃を加え、
体を細かく切り刻んでいく。
ただ、その肉片は飛び散ることなく
神滅剣の光に吸い込まれ、
消滅していくのだった。
こうしてスアラが
この世界から消滅した直後、
レインさんの手から神滅剣も消えた。
彼女自身はうつ伏せに倒れ込む。
次回へ続く!