圧倒的なスアラの戦闘力。
レインさんですら全く歯が立たない。
このピンチを乗り越えるには
どうすればいいんだろう?


アレスくんはシーラさんとともに
スアラの動きを止めようと
能力の発動を試みている。

そちらに意識を集中させている今は
判断を仰ぐのは無理か……。



僕が考え込んでいると、
仰向けに倒れ込んでいたレインさんが
上半身を起き上がらせて声をかけてくる。
 
 

レイン

トーヤ、魔法力や
身体能力を向上させる
薬を持ってない?

トーヤ

あることはありますけど
効果が切れた後に
副作用で全身への激痛を
伴いますよ?

レイン

それは構わないわ。
で、薬の効果の
持続時間は?

トーヤ

えっと……
おそらくは5分くらい
でしょうか?

レイン

5分……か……。

 
 
そう言うと、レインさんは『ふむぅ』と、
小さく息をついてから
やや俯き加減で考え込んだ。

でもそれは数秒のことで、
すぐに顔を上げて近くにいるアポロを
呼び寄せる。
 
 

アポロ

何か用か?
っていうかお前、
大丈夫なのかよ?

レイン

アポロ、神聖魔法を
使ってもらえる?

アポロ

な、なんだよ
藪から棒に?

レイン

時間がないの!
イエスなの? ノーなの?
どっち?

アポロ

まぁ、この状況じゃ
やぶさかでも
ねーけどな。

レイン

オッケ!
それなら一か八かの
賭けをしてみましょう。

アポロ

どうする気だ?

レイン

おそらくアポロの
神聖魔法でも
スアラを倒すのは不可能。
せいぜい弱らせるのが
関の山でしょうね。

レイン

でも弱らせた状態なら
私の奥の手で
トドメを刺せるかも。

トーヤ

ホントですかっ?

レイン

えぇ。ただし、
チャンスは一度きりよ。

レイン

幸いなことに、
アレスの力が発動したら
ヤツの動きは止まる。
その瞬間なら
外すこともない。

 
 
確かにその通りだ。
アレスくんの力が発動している以上、
回避することも反撃することもできない。

あの力には何人も抗うことはできない。
 
 

アポロ

アレスの力が通用する
保証はあるのか?

レイン

そこは信じるしかないわ。
でも私はアレスのことを
信じてる。

トーヤ

僕もアレスくんの力を
信じています!

アポロ

俺も信じては
いるけどよ……。

レイン

じゃ、決まり!
アレスの力が発動したら
アポロは神聖魔法で
スアラを攻撃して。

アポロ

わ、分かった……。

レイン

トーヤ、まずは
魔法力の回復薬を。
それから
強化薬をもらえる?

トーヤ

…………。

 
 
……なんか嫌な予感がしてならない。

本心では渡したくない。
渡しちゃいけないような気がする。


その原因が何かは分からないし、
根拠もないけど。
 
 

レイン

トーヤ、
千載一遇のチャンスを
逃すつもりなのっ?

トーヤ

……レインさん、
死ぬ気じゃないですよね?

レイン

当ったり前でしょ?
勝って生きるために
戦うの!

アポロ

…………。

トーヤ

分かりました。

 
 
僕はレインさんに言われた通りの薬を
手渡した。

するとそれを受け取ったレインさんは
まず魔法力を回復させ、
あとはアレスくんの力が発動する瞬間まで
待機する。


一方、アポロも
いつでも神聖魔法が使えるように、
スペルを唱えて準備を完了させた。
 
 

アレス

…………。

 
 
 

 
 
 

スアラ

ぐ……あ……っ!?
なんだこれは?
体が動かない……。
ぬぉおおおぉ……。

アレス

今だよ、みんな!

 
 
アレスくんの叫び声とともに
ミリーさんたちは防御姿勢を解き、
一斉に攻撃へと転じようとした。


でもその時、レインさんが言い放つ!
 
 

レイン

みんなッ、
スアラから離れて!

 
 
その声にミリーさんたちは反射的に反応。
動きを翻して
瞬時にスアラから距離を取る。


直後、レインさんは肉体強化の薬を飲み、
スペルを唱え始めた。

同時にアポロが神聖魔法を発動させる!
 
 
 
 
 

アポロ

断罪の光!

 
 
 
 
 

スアラ

なッ!?

スアラ

ぎゃぅあぁおおおぉっ!

 
 
アポロの神聖魔法がヒットした。
スアラは苦痛に満ちた声をあげている。

ここまでは順調だ。
あとはレインさんが
奥の手を発動させるだけ。

僕は希望に満ちた視線を彼女へ向ける。
 
 

レイン

はぁあああぁ……。

 
 
 

 
 
 
レインさんは魔法剣を発動させていた。

ただ、いつもと違うのはその光の色。
鮮血のような明るい赤色で、
さらに刀身の大きさも長さも倍以上ある。


今も念じてその刀身の輝きを
練り続けている。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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