こ、これは・・・一体どうなっているのだろう?
 エクレール家の一族が住むフェニキア王国の王宮・・・通称”背徳の宮殿”では今、エリオット・アルテミスは手厚い歓迎を受けていた。
 久しぶりに見る本物の美しい壮年男性。しかもその紫がかった銀色の短髪のあまり見かけない存在で、一様に女性メイド達は、彼のご機嫌を取ろうと必死で笑顔になり甲斐甲斐しく付き従っている。
 

ナツキ

このサファイアの宝石もものすごくお似合いです!

メイド2

エリオット様は、ブラック系もブルー系も似合う素敵な男性なのですね

メイド1

それに繊細な指ですね。細くて、繊細そうで、手作業とか器用そうですね

メイド3

これは・・・最近流行の・・・

 彼の紫水晶の瞳は、今は狂気の光を宿したピエロの仮面のように彼女達が見えている。”笑顔”という”狂気”を宿したピエロの仮面。それはおどける道化師たちのつかの間の夢みたいな時間だ。
 まだ、今だにあの麝香が身体に残っている。まるで”鉛”のように身体に重くのしかかる。
 

エリオット・アルテミス

やはり・・・この宮殿の人は変な人達だな。まるで、御主人が好むペットに仕立てあげてしまうように俺のことを”どこからどうみてもイケメンおっさん”にしようとしている・・・

 やがて、身体を少しふらつかせる彼に、使用人は甲斐甲斐しく世話を焼こうとしている。
 聞こえはいいが、裏を返せば、この城からは出ていかせないという意思表示だ。彼を逃がそうとはけして思わない。
 何だか鬱陶しくなってきた彼は、とうとうその使用人に怒りを露わにする。

エリオット・アルテミス

俺に構わないでくれ。鬱陶しい

 そこに、結婚を前提に付き合って欲しいとプロポーズしてきた彼女・・・ファノン・エクレールが現れる。
 傲慢そうに腕を組み、上から目線で、彼に”何が欲しい”のか聞きだそうとする。見下した緑色の瞳がそこにあった。

ファノン・エクレール

いかがですか。ここのメイド達はあなたの世話をしたがっているいい人ばかりよ?欲しいものがあるなら何でも仰ってくださいね

エリオット・アルテミス

何で、ここまでの歓迎を君たちは、俺にする?

ファノン・エクレール

一目惚れに理由なんてないわよ

エリオット・アルテミス

そうかな?

ファノン・エクレール

??

 腕を組み、自分を見下すこの女性に、彼はこう指摘した。

エリオット・アルテミス

あの時のプロポーズは、明らかに嘘だ。君は俺のことを好きだなんて思っていないのだろう?君の瞳は明らかにそういう目で見ているよ

エリオット・アルテミス

とにかく、ここからは消えるから・・・

 だが、意識がはっきりしていないせいか、思うように身体が動かせない。彼がふらつく。それを優しく背後から抱くファノン・エクレール。

ファノン・エクレール

身体の調子が悪い様子ね。今日も、そして、明日も、体調が戻るまでいていいのですよ・・・?

エリオット・アルテミス

やめてくれ・・・

 彼が喘ぎながらか細く抗議の声を上げる。紫水晶の瞳がだんだん虚ろな輝きを宿していく。
 意識もだんだん遠くなり・・・、そしてファノン・エクレールが囁いた。冷酷な声の響きにして、嘲笑うように。
 だが、耳元で聴かされた台詞は、こうだった。

ファノン・エクレール

もう無駄よ。だって・・・あなたは私の手の内に支配されているのだから

エリオット・アルテミス

な、何?

 彼の耳元で囁いたから当然、誰も気付いていない様子だった。
 だが・・・ここでエリオットは、その意識を手放して、深い闇へと落としていく。彼が倒れた。うつ伏せに、赤い絨毯の上で。
 それを見届けたファノンは、控えるメイドに命令を出した。

ファノン・エクレール

この男を私の寝室に寝かせておいて頂戴。何を茫然としているの?さっさとやりなさい

メイド2

は、はい!ファノン様・・・!!

ファノン・エクレール

他のメイド達もやることがあるのでしょう?さっさと持ち場に戻りなさい

メイド1

も、申し訳ありません!

 そして、彼女は振り向くこともなく、さっさと他の部屋に、自分の仕事場に戻っていった。
 控えていたメイド達は、そこで一様に彼女の噂をする。

ナツキ

やっぱり、恐ろしい方。ファノン様って

メイド3

この方、エリオット様もいずれ、ファノン様の奴隷にされてしまうのかしら・・・?

ナツキ

そうとしか考えられない・・・。だってファノン様は男の人なんて、快楽と名声のための生き物って考え方だから

メイド1

この世界の男性って、可哀相よね


 この異世界・ヘスティアは、実は男女平等ではない。女性の方が断然有利な、女性上位の世界である。高い役職に就けるのも女性。他の王国でも女王の国がほとんど。そして、この王国・フェニキア王国に至っては、昔から血がつながる女王家・エクレール家は完全女系の一族で知られている。
 しかも、エクレール家は男子が誕生すると、必ず三歳になるかならないかで里子に出されてしまうのだ。
 この世界で唯一、女性と同じ立場と考えられている一族は、エリオットの一族・・・アルテミス家である。
 それは、彼らが”女神の皇子”と呼ばれる特別な血を引く男性だからである。
 だが、ファノンはそれすらも関係ないと思っている。男なんて、女のあそこに己の種を植えつける雄でしかないと思っているのだ。
 そして、性の快楽を貪るのも女性の特権と思っているのだ。その為の男という考え方だった。

 そうして、彼が意識を手放して、数時間経った時、彼はようやく意識を取り戻す。
 目を閉じてベッドに横になっているところに・・・あの麝香がまた香ってきた。

エリオット・アルテミス

また・・・麝香の香りがする・・・


 そこに・・・

ファノン・エクレール

肌は文句なしね・・・。白くて艶のある肌、無駄な毛もない、綺麗な身体ね。合格かしら・・・?

 冷酷な見下した声が彼の耳に聴こえる。ふと、瞳を開けた瞬間、彼の目の前には、薄着になったあのファノン・エクレールがいた・・・!!

エリオット・アルテミス

ファノン・エクレール・・・!?どうして、ここに!?

ファノン・エクレール

まるで吸いつくみたいに艶があり、とても感じやすそうね・・・

 まるで自分を弄ぶように、目の前の女性は、おもむろに彼の胸に舌を這わせる。

エリオット・アルテミス

うっ!!

ファノン・エクレール

凄いでしょう?この香炉に焚いているお香の効力?・・・わざと私が催淫剤も混ぜているのだけど。思った通り、この香りを嗅いだ男は皆、雄に堕ちるのね。ほら・・・もうあそこは大きくなっているし

エリオット・アルテミス

や・・・やめろ

ファノン・エクレール

ふふっ。やめて欲しくないクセに

エリオット・アルテミス

あうっ・・・

 ファノン・エクレールが自らの口に、彼を咥える。そして貪るようにうっとりするように彼の分身に舌を絡め、己の唾液を刷り込む。
 その度、エリオットは切なげな喘ぎ声を上げ、無理矢理彼女の奉仕を受けている。まるで、自分が強姦されている気分だ。
 麝香の香りで彼の理性が壊れていく。その喘ぎ声はだんだんとセクシャルな響きになり、苦痛みたいな”快楽”が彼を満たしていく。
 そして・・・余りの快楽に耐えられなくなり、彼は己の愛を無意識のうちに、その女性の口に注いでしまった。

エリオット・アルテミス

ううっ・・・で、出る!!

 ファノンの口に注いだ彼は、既に意識がはっきりしていない。だが、無理矢理、抜かれた感触だけが脳に刻みこまれている。
 ファノンはその愛液を近くのティッシュペーパーで拭きとると、まるで侮辱するように言葉を吐いた。

ファノン・エクレール

ほら・・・こんなにいっぱい出して・・・雄の本能ね。これ。でも、まだ出したいんでしょう?でも、今度は私を満足させてくれないとねえ・・・

ファノン・エクレール

私がさっさと挿れてあげるから、たっぷり味わいなさいな。私の花びらを、ね

エリオット・アルテミス

ううっ!!

 彼が思わず呻く。まるで強姦のようなセックスを強要されるエリオットは、彼女に無理矢理、銀髪を掴まれ、自分の乳首を口に含ませる。
 薄い暗闇の部屋、その乳首も薄紅色で感度はいい。理性が壊れてきている彼は、半ば投げやりに乱暴に乳首を噛み、舌先で遊ぶ。
 いつの間にか手首は縄で拘束されており、縄が締め付ける感覚が、媚薬ですっかり敏感になってしまった自分の肌に食い込むのが、痛みとなって脳に刻まれる。
 その間も彼女は強引に彼を更なる拷問にかける。積極的に腰を使い、強姦のようなセックスが白熱していく。
 エリオットからすれば、本当に強姦だ。まさか自分が女に犯されるなんて・・・。軋む縄が痛みを連れてくる。腰からはそれとは逆の”快楽”がなだれこんでくる。
 彼の意識が、理性が壊れていくのを彼は感じる。そんな拷問みたいな強姦は、夜が明けるまで続いた・・・。
 一晩中、散々、己の愛を搾り取られ、手首には無残な縄の痕が残り、彼は意識を失うように、ベッドで休んでいる。
 これは、強姦を通り越して、もはや凌辱だった。
 
 だが、本当の地獄はこれからということに、彼はまだ知らない・・・。
 これから、毎日、毎晩のごとく、無理矢理、女の凌辱を受ける運命を、彼は知らない。

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