目の前には魔界の歴史上で
最強かもしれない存在となったスアラが
佇んでいた。
しかも周りには
モンスターの群れがいることも
忘れちゃいけない。
目の前には魔界の歴史上で
最強かもしれない存在となったスアラが
佇んでいた。
しかも周りには
モンスターの群れがいることも
忘れちゃいけない。
さぁ、かかってきなさい。
勇者とその仲間たちよ。
魔王でもないあんたが
そういうセリフを吐くなんて
一億年早いのよ!
まったくです。
あなたはラスボスどころか
その前座の中ボスに
過ぎないのですから。
ひ弱で脆くて
下等な人間の分際で
言ってくれる……。
だが、そんな言葉も
今の私には
負け惜しみに聞こえて
優越感すら覚える。
なかなか心地よいぞ!
あーっはっは!
……マゾだな、アイツ。
ボソッと呟くアポロ。
するとそれが聞こえていたのか、
スアラはピクリと眉を動かして
不機嫌そうに彼を睨み付ける。
今、私のことを
マゾと言った者よ。
貴様だけは
地獄の苦しみを与えつつ
殺してやる。
そして私がサドだと
思い知りながら死ね。
チッ……。
あいにく俺には
そういう趣味は
ねぇんだよ、クソが。
んなことより勇者様、
これからどうするよ?
指示をしてくれ!
モンスターの相手は
ユリアさんと
ミリーに任せます。
ほかの全員はそれぞれの
長所を活かして
スアラと戦おう!
おーっ!
僕たちは即座に戦闘態勢に入った。
きっとアレスくんとシーラさんは
力を使って
スアラの足止めをするのだろう。
そしてほかのみんなが
全力でスアラに攻撃を仕掛ける。
そうなると回復担当は
僕だけということになる。
だからフォーチュンで攻撃しつつも
今回は回復をメインにやっていかないと。
回復させるタイミングが遅れたら
その人は命を落としかねない。
はぁあああぁ!
レインさんは得意技の魔法剣で
スアラに斬りかかった。
その強大な攻撃力の前では
魔王であっても
ただでは済まないと言われている。
…………。
なっ!?
なんとスアラは魔法剣による斬撃を
悠々と素手で受け止めた!
その顔には不敵な笑みが浮かび、
余裕すら感じられる。
常識では考えられない事態に、
さすがのレインさんにも
焦りと驚きの色が浮かんでいる。
そして次の瞬間――っ!
がふっ!
レインさんっ!
間髪を入れずに
カウンターを繰り出したスアラ。
避ける間もなくそれをマトモ食らい、
レインさんが吹っ飛んだ。
僕は慌てて駆け寄り、
彼女が地面に叩きつけられる直前に
その体の下に回り込んで受け止める。
もちろん、
それで衝撃の全てを
消せたわけじゃないけど、
クッション代わりにはなったはず。
痛ぅ……。
ぁ……っ……。
レ、レインさんっ!?
レインさんは白目をむきつつ全身が痙攣し
口から血の混じった泡を吹いている。
しかもあちこちの骨が
粉々に砕けているみたいだ。
あの一撃でここまでのダメージが……。
即死しなかっただけ
運が良かったと思わないといけないのかも。
みんな、気をつけて!
攻撃を食らわないように
戦ってください!
僕はそう叫びつつ、
用意しておいた即効性の回復薬を
レインさんに投与した。
すると幸いにもレインさんは
すぐに回復をして意識を取り戻す。
怪我も一気に治っていく。
一方、僕の声を聞いたみんなは
いつも以上に慎重に戦いを続けている。
防御を主体にして間合いを見極めながら
一瞬の隙を衝いて攻撃を繰り出すといった
感じだろうか。
ただ、たまに攻撃がヒットしても
やはりスアラにはかすり傷ひとつ
付けることはできていない。
助かったわ、トーヤ。
でも私としたことが
不覚だわ。
しかも全く歯が
立たずにこのザマなんて。
戦えますか?
当然よ。
トーヤの回復薬の
おかげでね。
でも……正直言って
勝てる気がしないわ。
そんな……。
いつも強気なレインさんが
こんなにも弱気になるなんて意外だ。
しかも少し震えているような……。
それだけスアラは強いということか。
次回へ続く!