カレンは最初からグラン侯爵に
操られていたんだ。

でも彼女は実の娘なんだよね?
それを道具のように扱うなんて許せない。
はらわたが煮えくり返ってくる!
 
 

ラグナ

ただ、カレンお嬢様は
純粋すぎた。
お前のようなゴミに
心を傾けるなど言語道断。

ラグナ

王都の空気が
良くなかったのでしょう。

トーヤ

王都の悪口を言うな!
それは女王様を
否定することにもなるぞ!

ラグナ

女王?
あんなヤツを王だと
認めた覚えはない。

トーヤ

くっ……。

 
 
身分制度を未だに引きずっているクセに、
その頂点にいる女王様を
蔑ろにするなんて。

結局は自分たちにとって
都合のいいコトだけを認めて
立ち回っているだけじゃないか!
 
 

ラグナ

王都で感化されたお嬢様の
本来の人格など
もはや邪魔でしかない。

ラグナ

ただ、高貴な血統ゆえに
潜在的な力は大きい。
そこで本来の人格を消し
操り人形とすることにした。

トーヤ

なんだとっ?
それはカレン自身を
殺すのと一緒じゃないか!

ラグナ

そうかもな。
だが、そうは言っても
すでにお嬢様の心は
処置が済んでいる。

トーヤ

なっ……。

 
 
それを聞いた瞬間、
僕は頭の中が真っ白になった。



処置が済んでいる……っ!?



全身から血の気が引いて鳥肌が立った。
体は勝手に震えてくる。

う……呼吸が苦しい……。
 
 

ラグナ

だがな、なかなかどうして
お嬢様の心は屈強でな。
完全に消し切れていない。

トーヤ

え……。

 
 
僕は途切れかかった意識が
辛うじて繋がった。



そうか、
つまりカレンの心は
まだ死んでいないんだ。

そうだよね、カレンがそんな簡単に
誰かに屈するはずがない。

まだ間に合うんだ!
 
 

ラグナ

だからこそ、お前の死を
目の当たりにさせて
トドメを刺そうというのだ。

トーヤ

その話を聞いたら
なおさら僕はここで
死ぬわけにはいかない!
カレンを救ってみせる!

ラグナ

黙れ、ゴミが。

アポロ

ゴミはテメェじゃねーか!

トーヤ

アポロ……。

 
 
その時、アポロが前に出た。

その表情は怒りに満ちている。
ユリアさんが攻撃された時と同じくらいに。
 
 

アポロ

トーヤとカレンの心を
ズタズタにしやがって。
絶対に許さねー!

ラグナ

お前は見たところ
魔術師だろう?
どうやって私を倒す?
副都でお前らの魔法は
封じられているのだぞ?

ラグナ

ちなみに我々は
自由に魔法が使える。

アポロ

どこまでも汚ねぇ
野郎どもだ。
この下水以下だな。

ラグナ

なんとでも言え。
勝てばよいのだ。

ユリア

ここは私が中心に
戦うしかないわね。
アポロはサポートを。
トーヤくんたちは回復を。

アポロ

おうっ!

エルム

はいっ。

 
 
ユリアさんは剣を抜き、ラグナと対峙した。
ただ、舟の上だからバランスを取るのに
苦労しているみたい。

いつも通りの実力を出すのは難しいかも。



それに対して相手は
水の都とも呼ばれている
副都で生活しているラグナだ。
舟の上での戦いにだって慣れているはず。

敵を褒めるわけじゃないけど、
少なくともユリアさんより
分があるだろうな。

しかも相手は魔法が使えるわけだし……。


――いや、だからこそ、
その穴を埋められるくらいに
ユリアさんのサポートを
僕たちがしなければならないんだ。
 
 

トーヤ

そうだ、よく考えるんだ!

 
 
魔法が使えない状況で
こちらに有利なことといえば、
ユリアさんとアポロの連携が
バッチリだっていうことくらいか?





――ううん、まだある。

僕がフォーチュンを使って
遠隔攻撃が出来るということ。

そして薬を扱えるということ。
 
 

トーヤ

薬だって
使い道はいくつかある。
それを組み合わせれば――

 
 
僕は必死に頭を回転させた。

どうすればこの状況を好転させられるか。
別に倒さなくてもいい。
ここを乗り切ることが出来るなら
それでいいんだ。
 
 

トーヤ

――っ!

トーヤ

よしっ、
いけるかもしれない!

 
 
僕は戦略をひらめいた。
試してみる価値は充分にある。

僕のことをゴミだと呼んで
油断しているなら
成功する可能性だって低くない。
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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