副都は戦艦からの砲撃と
ブラックさんの攻撃によって
破壊が進んでいた。
市民の多くは大混乱で、
一目散に町の外へ脱出していく。
僕たちはその流れと逆行しているから
ぶつからないよう注意しないといけない。
ただ、桟橋には
彼らが乗り捨てたと思われる
小舟がたくさんあるから
それを拝借して隠し水路へ向かう
僕たちにとっては都合がいいけどね。
副都は戦艦からの砲撃と
ブラックさんの攻撃によって
破壊が進んでいた。
市民の多くは大混乱で、
一目散に町の外へ脱出していく。
僕たちはその流れと逆行しているから
ぶつからないよう注意しないといけない。
ただ、桟橋には
彼らが乗り捨てたと思われる
小舟がたくさんあるから
それを拝借して隠し水路へ向かう
僕たちにとっては都合がいいけどね。
さーて、
どの舟をいただくか?
あまり大きなものだと
もし隠し水路が狭い場合、
動きにくいですよ。
大きい方が
安定性はあるけどね。
四人乗りで
丈夫そうなのにしよう。
ここから乗るの?
向かってくる舟と
ぶつかっちゃうわよ?
だな。
少し遠回りをしてでも
メイン水路を避けた方が
いいかもな。
じゃ、あっちの桟橋で
舟を借りよう。
僕たちは西門の付近を避け、
路地へ入っていった。
そしてメインの水路から離れた桟橋で
ちょうどよい大きさの舟を拝借して
それに乗る。
操船はアポロがやってくれている。
ユリア、まだこのまま
真っ直ぐでいいのか?
うん、そのまま。
ユリアさんはクレアさんから
渡された(と、思しき)地図を見ながら
アポロに指示を送った。
僕とエルムは周囲を警戒しつつ
障害物とぶつからないよう注意を向ける。
瓦礫が上から落ちてくる可能性もあるから
左右だけでなく上にも気をつけないとね。
それと水路に落ちたものに
乗り上げてしまう可能性もあるから
水の中も併せて見ておかないと。
アポロ、もうすぐ
下水道と繋がる水路が
左に見えてくるはずよ。
ん、そうなのか?
やがて僕たちの乗った舟は
やや狭い水路に差しかかった。
前方の地上には公園があって、
それを囲うように
水路が張り巡らされている。
そしてその公園の土台の部分には
鉄格子で塞がれた
下水道の出入口があった。
ここから先は地下の区間に入るようだ。
高さは僕たちの座高を超えているから
無理な姿勢はしなくて済みそう。
ただ、幅は舟の縁に
ぶつかりそうなくらいにギリギリだ。
おっ、あるある。
でも鉄格子で
塞がれてるぞ?
あれって外せるのか?
大丈夫。
ちょっと操作をすれば
外せるらしいわ。
地図に外し方が
書いてある。
程なく僕たちは
下水道と繋がる水路の前に到着し、
そこへ舟を横付けした。
そしてユリアさんの指示で
僕は鉄格子の横にある突起を操作し、
それを外す。
――確かに意外なくらい簡単に外せた。
それを僕は
舟の邪魔にならない位置へ沈める。
よし、突入するぜ。
左右に注意してね。
ゆっくりでいいから。
おうっ!
アポロは慎重に操舟をして下水道へ
入っていった。
徐々に太陽の光が届かなくなって
辺りは闇に包まれていく。
また、下水道というだけあって
空気は淀んでいるし少し臭う。
もっとも、水路と繋がっていて
常に汚水は排出されているから
思ったほどじゃないけどね……。
アポロ、止まって。
灯りをつけるから。
たいまつか?
ううん、違うよ。
魔法石の魔法力で光る
ランタンだよ。
今、装置の中に魔法石を
セットするから。
メンドいから
たいまつでいいのに。
それはダメだよ。
下水道には可燃性のガスが
充満していることも
あるから。
そうなのかっ?
僕の住んでいた町は
鉱山の中にあるのですが
密閉された空間って
ガスが溜まりやすいです。
しかも下水道は
可燃性ガスの発生源が
あるからね。
発生源?
僕たちの排泄物だよ。
それが分解されて
ガスが発生するんだ。
知らなかった……。
アポロ、
危うくポップコーンに
なるところだったわねぇ。
うるせ……。
ユリアだって
知らなかったクセに。
わ、私、知ってたもん!
うそつけ!
嘘だっていう
証拠はあるの?
ぐ……。
アポロは何も言えなくなってしまった。
やっぱりユリアさんの方がアポロよりも
何枚も上手だよね。
ちなみに僕もユリアさんはガスのことを
知らなかったと思うなぁ。
だって僕の話を
興味深げな顔で聞いてたもん。
次回へ続く!